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エリート戦闘員

序章、それは全ての終わりの始まり。

また夢を見た。

時々みる、見覚えのある場所の夢。

木々の生い茂る森の小高い丘の草原。

遮る物のない空。

美しい景色。


そこに俺は立っていた。



「ねぇ、君はなんで迷ってるの?」


いつも通りの綺麗な声。

夢でだけ出会える女の子。


俺が迷ってる?なぜ?

どうしてそう思うんだ?


「ずっと何かを探しているから。

自分にできる何かを」


あぁ……そうだな……

俺は確かに迷ってる。

何も出来ない自分が少し悔しいんだ。


「君にはなんでもできるよ。

だって君は……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目が覚めた。


不思議な夢だ。

ずっと靄がかかっているのに頭に残る。


あの子はいったい何を伝えたいんだろうか?……



…………



組織に入って2ヶ月が経つ。


あの後何度か敵の襲撃に遭い、その度オッサン達は戦っていた。


暫くして遂に国連が全世界に真実を公表した。


これ以上隠し通せない状態だったのだろう。


俺達が組織に入って2週間程経った頃だ。



そのあとの世界は一変した。


信じるもの信じないものそれぞれいたが、少しずつ、少しずつ歯車は狂い、社会は完全に崩壊した。


暴徒化する人、嘆く人、命を絶つ者さえいた。


組織は各支部で国民を保護し、なんとか人間の生活を保っている状況だ。


俺と勇気は保護された国民を誘導、指示、保護区内での規律を保つ仕事を任されている。


数千、数万の人々を数百人でなんとかまとめている状態で。



しかし、復興の目処は一向に立たず、被害は拡大していく一方だった。




今日もまた新しく保護された人を保護区内の仮設住居に誘導している。



「なぁ、勇気」


「ん、なんだ?」


誘導の仕事をこなしながら勇気に声をかける。

勇気は眠そうな顔でこちらへ振り向いた。


「俺たちこれでいいのかな?

もっと出来ることがあるんじゃないか?」


ずっと感じている。

俺たちに出来ることは本当にこれだけなのだろうか?

もっと何かできるんじゃないのか?と。


「今はどうしようもないだろ……

やれることを全力でやる以外ないさ」


勇気はため息を一つ吐き出しながら答えた。


こんなことを勇気に何度も話している。

勇気も毎度毎度飽きずに聞いてくれてくれている。


「……そうだな」


日常が失われて、皆疲弊していた。

その場しのぎの仮設住居に追いやられ、不安を募らせるばかり。

このまま逃げ続けて道は拓けるのだろうか?


そんなことばかり考えていた。


「おい!ふざけんな!」


俺たちの話を遮る様に怒鳴り声が割り込んでくる。


「おい、真人後ろなんか騒いでないか?」


勇気が異変に気づく。

俺たちに続いて歩いていた避難民の列の後ろで声がしていた。


「どけぇ!」


列の中央で男の怒号が飛んだ。


明らかにおかしい。

突然起きた緊急事態に列の後ろへ急ぐ。


「す、すいません!

で、でもここは私達が並んでいた場所で……」


そこには子供を2人抱きつれた女性と大柄な強面の男がいた。


列の並びで言い争っているようだ。


「うるっせぇ!

こっちは住む場所無くなって困ってんだ!

俺を先にしろ!」


何とも理不尽な物言いだな……

ここには家を失くした人しか居ない。

自分だけではないと言うのに。



「はいはい、どーしたんですか?

ちゃんと皆さん案内しますから、そんなに怒鳴らないで」


勇気が咄嗟に仲裁にはいった。


「うっせぇな!

早く俺の家を寄越せよ!」


男は完全に頭に血が上っているようだ。

こうなると人はそうそう収まらない。


めんどくさい……


ため息を吐きながら仲裁の手助けにいく。


「おい、あんた」


「あぁ?なんだよ」


「ルールは守れ。

ここにいる人は皆家を失くして避難してきたんだ。

あんたと変わらない」


冷徹な言葉を男に浴びせる。

感情を込めず、淡々と言葉を投げかける。



これで収まれば早くて済むんだが……


「そんなの知るか!

俺の家を寄越せって言ってんだよ!

早くしろ!」


男は俺に対し怒りをぶつけてくる。


こういうタイプの人間は本当に苦手だ。

まるで……


「警告は1回だ。

自分の位置に戻れ。

あんたがそうしているあいだにもそれなりに処理は終わっていた。

あんたが1番早く案内してもらうには静かにしておくことだ」


まるで昔の自分の心を見ているかの様だ……

自分勝手、他人を無視。

まぁ、ここまではしていなかったけど。


「なんだ?脅しかよ?

やんのか!おらぁ!」


男は警告に腹をたて殴りかかってきた。

すかさず腰に付けていた拳銃を取り出し、男の額に銃口を向ける。


「警告は1回だって言っただろ。

分かったら下がれ」


基本的に力で人を制することは組織としてはあまり好まれてはいない。

できる限りは要望を聞いて暮らしやすいよう心がけている。


こういうタイプの人間以外には。


「お、おい真人やりすぎ……

皆が怯えるだろ……」


勇気から指摘を受ける。


この手の人間はこうでもしないと食い下がることはない。


今回はさすがやりすぎたとは自分でも思っているが……

恐怖政治は反発を産んでしまう……


「あ、ありがとうございます!

ありがとうございます!」

俺が頬を掻きながら反省の色を出し、拳銃を腰にしまうと

被害者の女性が何度も頭を下げてきた。


「いえいえ、大丈夫でしたか?」


「はい!

本当にありがとうございます!」


保護区内ではこんなことが高い頻度で起きている。

その中で働いていたせいか、人を制する方法、

指示の仕方の知識を蓄えてきていた。


こんな仕事に慣れてしまうことには不本意だったが……



「怖いね〜真人君は

でも、的確な指示と行動だと俺は思うぜ?」


問題解決後、少し落ちた気分にフォローを入れるかのように話かけられる。


「ブライアン、ありがとう」


声をかけてくれたのは組織の戦闘員のブライアン。

彼は黒人系アメリカ人で身長190程の大柄な男だ。

その見た目とは裏腹に気さく性格で、俺と勇気が組織入ってスグに仲良くなった。


組織のあれこれを丁寧に教えてくれる、今では兄貴的存在だ。


「いやいや、本当に思ったんだよ

真人も勇気もしっかりしてると思うぜ?」


「サンキュ、所でブライアンはこんな所で何してんだ?

戦闘員はこっちの担当じゃないだろ?」


ブライアンの目が泳ぎ始めた。


「あー……まぁなんだ、訓練に疲れる時だって時にはあるもんだ!」


つまるところのサボり。

ブライアンは戦闘部隊の部隊長をしている身にも関わらず、時々訓練を抜け出しては俺たちの所に遊びにくる。


後で団長(オッサン)にこっぴどく怒られるだろうな……


「そんな事より真人!勇気!

仕事が一段落したら遊ばないか?」


「お!いいね!

なにするよ!」


ブライアンの提案に俺の否定よりも先に勇気が答える。

勇気もブライアンも遊ぶことが大好きだ。


二人は宝石の様に目を輝かせ、こちらを見つめてくる。

そんな少年の様な視線にため息しか出てこない。


「分かったよ……少しなら付き合うよ」


「さすが真人だ!

団長なんかより話が分かるな!」


そんなブライアンの楽しげな声にまたため息が漏れる。


でも、こんな二人に振り回されるのも悪くはない。

そう、感じて微笑んでいる俺がいる。


これが俺の今の日常なんだと感じて。


「よし、じゃあいつものやるか!」


俺は2人に脇を抱えられ引きずられるように組織基地へと戻っていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「んで?なにするんだ?」


基地に戻った俺たちはブライアンの部屋でテレビと向かいあっていた。


「いつものゲームだよ!いつもの!」


ブライアンの言ういつものゲームとは、以前勇気が携帯でやっていた戦略シュミレーションゲームの家庭用移植版のことだ。


勇気もブライアンもこのゲームにハマりこんでいて、誘われる度に対戦相手として付き合わされている。


「さぁ今度こそブライアンに勝つぜー!」


勇気は世界ランキングにも乗るほどの実力者であったが、ブライアンにはほとんど勝ったことがない。

やはりそこは本職と言うことだろう。


「俺はこれでもエリート戦闘員だぜ?

日本語も半年で完璧にしたし、元は軍事指揮をしてたんだ、素人に負けはしないさ!」


ブライアンは自信満々にそう告げる。

そう言えるほどの実力があった。


再三言うが勇気は決して頭は悪くない。

むしろいい方だろう。

だが、ブライアン相手には分が悪い。


「さぁ、ゲームスタートだ!」


この戦略シュミレーションは第二次世界大戦頃の戦争をイメージに作られている。

パッと見はFPS……一人称視点のシューティングで、あらかじめ決めてある戦略に後からその場に応じた作戦を指示しながら相手を全滅させるゲームだ。


「勇気!なかなかに腕はあげてるな!」


「なめんなよ!これでも世界ランキングに載ったプレイヤーだぜ!」


バトルはなかなかに白熱しているようだ。

ブライアンの優勢で戦いは進んでいるが、勇気も必死に食らいついている。


正直、俺が要らないと思うのは俺だけだろうか?

ここまで白熱出来るなら二人で良くないか?


「勇気!終わりだ!」


「なんの!これしき!」


欠伸を一つつく頃には戦いは終盤に差し掛かっていた。


このゲームはCPUにどれだけ効率のいい指示を出せるかで勝負が決まる。

この試合勝ったのは……



ブライアンの様だ。


「よっしゃー!まだまだだな!」


「くっそー!」


勇気はいつも通り落ち込んでいる。

毎回毎回よくここまで落ち込めるものだ……

相手は本職の軍人なのに……


「よし!じゃあ今度の相手は真人だな!」


ブライアンが意気揚々と俺に勝負を仕掛ける。

こうなったら俺が対戦するまで引き下がらないだろう……


ここまできたらやるしかないか……


コントローラーを手に取りブライアンと並んでモニターに向かい合う。


「手加減は無しだからな!真人!」


ブライアンから釘を刺される。

逃げ場は無いようだ……


「ゲームスタート!」


俺はこのゲームが苦手だ……

まず一つに試合がそれなりに長いこと。

余程差のある対戦じゃない限りすぐに決着がつくことはない。


そして二つ目に……


「ま、真人!タイムだ!」


「ねーよそんなの」


「ぐわぁぁ!!」


俺が負けるまでこの二人はゲームを続けるからだ。

そのくせ手加減をすると怒る。


毎回時間が無くなるまで付き合わされていれば嫌でもこのゲームが嫌いになる。


「ま、また負けた……

エリートの俺が……」


ブライアンは顔を手で覆い悔しがっていた。

まるで世界が終わったかの様な顔をして。


「真人……もう一度だ!」


まだやるのか……


いつも通り過ぎてため息も出なくなった。


今日も時間いっぱいまで付き合わされそうだ……


ーーーーーーーーーーーーーーー


「真人〜飯いこうぜ〜」


ゲームが一段落し、各自部屋に戻り自由な時間を過ごした後、施設をぶらついていると勇気に声をかけられた。


勇気も暇を持て余している様だ。


「そうだな、ブライアンは?」


「あぁ……いつも通り……」


あのあとサボりがバレたブライアンは団長(オッサン)にこってりしぼられたらしい。


もう、毎度のことで同情もできない……


「あ、そう言えばブライアンが真人に話があるって言ってたぜ?」


「話?」


なんだろうか?

またゲームの誘いだろうか?


ブライアンのことだ、またなにか変なことを思いついたのだろう。


「分かった、後で聞きに行ってくるよ」


適当な返事をしたあと、勇気と食堂へと向かった。


ブライアンの話……悪いことじゃなければいいんだが……



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「面白いことになってきたね。

君のために最高の舞台を用意しなくちゃ」


不敵な笑みがこぼれる。

きっとこれからもっと面白くなる。

ずっと楽しくなる。


「目が話せないなぁ〜」


ここからが始まりだ。


「ねぇ、真人くん」

最近、プライベートが忙しく投稿が遅くなっております!

申し訳ございません!


でも、しっかりと着実に書いております!

気長に待ってもらえれば幸いです……


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是非お願い致します!


ではまた次回!

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