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絶望的真実

真実のその先


そこに本当の現実がある。

子供のころ俺は他人に興味を持てなかった。


自分の周りの人が幸せで、自分がその輪に入れていればいい。

そう思っていた。


どんな悲惨な事件が起きても、どんなに甚大な被害をもたらした災害も、自分の周りの人が関わっていなければ興味すら持たなかった。


変われたのは大学に入ってから。

勇気と過ごし、夏目と過ごし、少しだけ常識的な範囲で他人に興味を持つことができた。


俺はエゴイストなのだ。

自分が幸せであればいい。

自分の幸せのために周りに幸せであって欲しい。


そんな自分が、二人のお陰で少し自分とは関係のない所で興味を抱くことを覚えることができた。



自分を変えるのは自分とその周り。

当然の日常のなかで人は成長し、考えを変えながら、選択肢を増やし、人として育つ。


自分を成長させてくれる、幸せを与えてくれる、その日常は誰にも奪う権利なんかない。

決して失うことはあってはならない。


日常は当然で必然で、でも偶然で運命できっと天文学的な数値で積み重なって、失って初めて気づく大切な大切な宝物なのだ。


今、様々な人の日常が奪われている。


今だから理解出来る。

今だから言える。


そんなことあってはならない。

そんなことは決して起こってはいけない。


それは重く重く罪深いものだと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


戦いから一夜が明けた。


オッサンはあのあとも忙しく駆け回っていた。

民間人の保護、各所被害の確認、その他諸々。


結局昨日は残りの話は聞くことはできず、各々与えられた部屋へと戻った。




「うぃ、おっは!」


勇気は今日も朝から元気だ。

昨日の戦いを見たあとでもそれは変わらない。


「おっす、夏目達は?」


「まだ来てないぜ?

多分朝飯食ってると思う」


俺たちは朝方オッサンに呼び出された。

昨日出来なかった話をするそうだ。


「そっか、なら暇つぶしでもしとこうぜ」


「お、いいね!

なにするよ?」


勇気の質問に考え込む。

突発的な提案だったためになにも考えてはいなかった。


そうだな……

なにが、あるだろうか?


昨日の戦いの後この組織の施設を隅々まで探検したがある程度何でも揃っていた。

生活に必要なもの、ストレスを解消する為の道具、施設。

きっと探せば暇つぶしなどいくらでもできる。


だが……


「久しぶりにチェスでもどうだ?

最近全然やってなかっただろ?」


俺はボードゲームを選択した。

きっとそんなに時間もない。

すぐに終われるほうがいいだろうと。


「おっ!いいね!やるか!

戦略ゲー大好きの俺に戦略ゲーで挑んだことを後悔させてやる!」


勇気は目を輝かせながら提案に乗ってくる。

こいつはその手のゲームに目がない。


勇気と2人部屋に戻り、机にチェス盤を乗せ向かい合い、ゲームをスタートし、お互い順番に打ち合う。



勇気が戦略ゲームが好きなのは本当だ。

本当なのだが……


「チェック」


「ぐわー!!

待ってくれ!」


「チェック」


「またぁ?!

待った!」


「チェックメイト」


「……はい」


恐ろしく弱い。

いや、弱くはないのだが俺に勝てない。


知り合ってそれなりにチェスで対戦してきたが、ルールを教えて貰った時に負けた以来負けたことがない。


「く、くそ……

なんで勝てない……」


勇気は顔を歪めながら悔しがる。

自分が教えた手前、負けるのはやはり悔しいのだろう。

チェスに負けた時はいつも決まってこの悔しがり方をする。


「まぁ、俺のほうが頭がいいってことだな

後でジュース1本な」


悪い笑みを浮かべながら勇気にたかる。

勇気ははっとした表情に変わり顔を上げた。


「き、聞いてねぇぞ!

ずりぃー!」


「いつものことだろ〜

じゃ、宜しくな」


「く、くそ〜……」


勇気の反論をニヤニヤと笑いながら受け流し、チェスを片付ける。


いつも通り。

何の変哲もない、いつも通りの日常の風景。


状況や場所は違うが、いつも通りの2人。

昨日あったことなど忘れてしまいそうなほどなんの変哲のない……


「おーい二人とも〜?」


チェス片付け終わったのと丁度に夏目が部屋のドア開け入ってくる。


「あ、いた!

ご飯食べ終わったから、お父さんのとこ行くよ!」


「おー、了解了解」


勇気と2人立ち上がり、3人で団長室へと向かう。

3人だけで揃って歩くことが懐かしく感じる。


そんなに時間も経っていないのにな……


そんなことを考えながら歩を進めた。


「あれ?真人のお母さんと美久ちゃんは?」


勇気が二人が居ないことに気づく。


「あー……二人は呼ばれてないんだよ」


へ?


俺は2人先に行ったものだと思っていた。


「なんで?」


「んー……お父さんがね、昨日もあんまり理解出来てなかったみたいだし、起こっている事さえ知っていてくれればいいから今日は2人だけって」


オッサンが考えていることが何となく理解ができた。


実際、理解し難い話だ。

それを無理に話しても意味はないだろう。


きっと不安を煽るだけだしな……


「そっか、まぁそりゃそうなるよな〜」


勇気もある程度は理解出来ているようだった。

腕を組み納得している。


そんなことを話しているあいだに団長室へ着いた。

夏目がノックをして団長室へ入っていく。


「お父さん、入るよー?」


団長室には既にオッサンが座って待っていた、


「おお、来たか

3人ともとりあえず座ってくれ」


オッサンに促され机の前にあるソファに腰掛ける。


正直、昨日の話である程度起こっていることは理解できた。

しかし、しっかりと聞けなかった部分。

そこにオッサンが知っていて欲しいことが詰まっているのではないかと思っていた。



「さてと、早速話に入るが……二人とも、今から話すことは昨日と同じく事実だ。

今日は全てを語る。」


オッサンが話を切り出す。


昨日と同じく真剣な表情。

オッサンがここまでなってしている事。


それほど深刻なことなのだろう……


「昨日で、『代理戦争』については話終えた。

問題はその先。

これは覚悟のある奴でないと聞けない。

出来ればお前達には俺や夏目と同じ所にいて欲しいが、もし覚悟が無ければどこかへ避難して欲しい」


オッサンの口から出たのは、この話を聞くかどうかという言葉。


それほどまでに重い真実。


しかし、俺と勇気の回答は決まっていた。

昨日のあの戦いを見て。


「オッサン……

聞かせてくれ。

俺たちはもう無関係ではいられないんだろう?」


その言葉にオッサンがくすりと笑う。


「そうだな……

ああ、誰もが無関係ではいられないさ……

きっとやりきれないだろう…

でも、お前達なら話しても大丈夫だ!

その目を見て安心したよ」


オッサンの顔から迷いが消えた。

きっと、悩んでいたんだろう……


俺たちに話しても良いものか。


「それじゃあ聞いてもらおう。

この世界がどうなっているかを……」


オッサンからは昨日よりも重い雰囲気は感じられなくなった。


迷いが消え、スッキリとした表情に変わったからだろうか?


真剣な顔は変わらないが、どこかいつものオッサンの声色の様な気がする。


軽くて、明るい、いつもの声に近いそんな声に。




「今、この世界には『神』と『悪魔』がいる。

そしてその二つの勢力は『代理戦争』と言われる戦争を大規模に行っている。

その規模がどのくらいか想像できるか? 」


規模……

都市伝説の感じからして大体は俺たちの街に起こっていると思っていたが……


「この近辺の地区……最悪この国全体くらいですか?」


勇気が考えを絞り出す。

俺も同意の答えだ。


「うん、相馬くんいい考えだ。

君は頭の回転が早いんだね。

素晴らしいよ。

でも、少し間違っている。

昨日の話から続いていると思ってくれ」



昨日の話……


俺は最悪の答えに辿り着いた。

これだけは間違いであって欲しいという答えに。


「国は……

負けたのか?」


オッサンの表情が曇る。

手を口の前に組み、下を向く。




俺の想像は当たっていた。


「ふー……そうだ。

昨日の様なことが起きていたんだ、国がなにもしないわけがない。

国は対策を行っていた。

しかし、手も足も出なかったんだ……

知識が無かった……経験が足りなかった……

惨敗だったよ」


オッサンはため息を吐き出しながら説明を続ける。


国が負けた。

それは自分達が思っていたよりも絶望的内容だった……


それほど俺たちは無意識に国に守られていると思っていたのだろう。

その支えが消えて、まさに崖っぷちに追いやられた気分だった。


「国が動いている。

この国だけではない……他の国もだ……

ということはだ、『代理戦争』の規模はこの街全体なんてものじゃない……

規模は……



全世界だ……」


唖然とした……


学生の都市伝説程度の話。

ついこの間まで普通の日常を過ごしていた。


でも、知らないだけで

知らなかっただけで

戦いの火は世界全体を覆っていたんだ。



勇気と2人拳を握る。

どうしようもない現実を聞かされた。


全世界……

逃げる場所はどこにもない。


その事がどれほど辛いものか……


「さっき避難していて欲しいなんて言ったが、実際は安全な場所なんてもう、どこにもない……」


オッサンのその言葉にトドメを刺された。


もう俺の日常は帰って来ない……

そう言われたものだから……


「ま、待って下さい!

国はなんでそれを国民に報告しないんですか!

ここまで大きくなっているのに!」


勇気の疑問……

その質問は愚問にも等しいものだった。


「勇気……それは出来ないんだ。

お前はニュースやテレビで『代理戦争』のことを話されて信じることができるか?

『神』や『悪魔』がいますと言われて信用できるか?

俺たちでさえ、まだ半信半疑なのに……

しかも、国が負けているなんて言ったら……

国は崩壊するぞ……」


勇気の顔が青ざめる。

下を向き、黙り込む……


冷静に考えればすぐに出てくる答えだ。

勇気はバカだが、頭はいい。

でも、この事実を聞いて冷静に考えられなかったんだ……


こんなことを聞いたあとならみんなそうなる……


「真人の言った通り、もし真実を報道すれば国民は暴徒化する。

それだけは避けなければならない。

まぁ時間の問題だけどな……」


思ったよりも深刻な状態だった。

俺らが考えていたよりもずっと。


「この組織は国連の資金によって『神』や『悪魔』についての知識あるもの達が集められたものなんだ。

国連の最後の対抗策。

今この組織が最高機関として国々をギリギリで保っている。

しかし、いずれそれも崩れる。

人間社会はほとんど崩壊したんだ……

まだ皆が気付いてないのは、表面上しか見えないからだ。

裏側を見ればもう……」



絶望。

その言葉が相応しいだろう。


俺も勇気も息を呑んだ。

言葉が出なかった……


「だから、二人にはこの組織の一員として皆をまとめる仕事をお願いしたい。

戦いから遠いその仕事を……」


オッサンは頭を下げた。


俺たちにこれを話したのは責任感から。

そして、今は俺たちを遠ざけるため、事実を知ったものにしか出来ない組織の仕事を頼むため。


オッサンはこうやって、大切なものを守ろうとしていたんだ……


真実を聞いたあとだからこそオッサンの考えてることが汲み取れる。

手に取るようにわかる。


この先戦いは激化する。

想像もつかないほどに。


そんな時、大切な人を戦場に置いておきたくないんだ……


それが分かるからだろうか答えはすぐに出た。


「オッサン、頭を上げてくれ……

それを頼むのさえ苦しいんだろ?


分かったよ……

俺たちで良ければやってみるよ」


俺たちを守ろうとしてくれている。

それだけ分かれば、迷うことはない。

どうせどこにも逃げる所はないんだ。

やれることをやろう。


勇気も首を縦に振り了承する。

俺たちは組織の一員として働くことになった。


自分達にも出来ることがある。

そう、信じて……


最近投稿が遅くなりがちですが頑張っています!


そして第8話を書き上げることが出来ましたー!


これも見てくださる皆様のお陰です!


これからも頑張って執筆していきたいと思います!


気に入った方がいらっしゃいましたら

評価、感想、ブクマ、特にレビューをお願い致します!!


また次回をお楽しみに!

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