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生存と希望

夏目は生きていた。


それは真人と勇気にとって大きな希望であった。

10年前


「とりゃ!!」


竹刀が俺の頭の目の前で止まる。


「くっそ、手加減しろよ夏目!」


当時10歳だった俺らはよく神木の神社前で剣術の師範代の夏目のお父さん(オッサン)に稽古をつけてもらっていた。


「とりゃ!たー!」


俺の持っていた竹刀が宙を舞い、再び夏目の竹刀が目の前に突きつけられる。


「くっそ!……」



夏目は神社の次期当主。

小さい頃から色々な武道を教えこまれていたため、俺なんかよりもずっと強かった……


「真人弱いなぁー!もっと頑張ってよ!」


夏目が不満げに頬を膨らませる。


「無茶言うなよ……俺とお前とじゃやってきた時間が違うだろ……」


そうボヤきながらも竹刀を持ち直し、夏目を見据え構え直す。


「はっはっは!真人は負けず嫌いだな!」

夏目のオッサンが笑いながら見守ってくれていた。


「オッサン!笑ってないで開始の合図!」


「おーおー怖いねぇ。よし、じゃあ始め!」


夏目と2人竹刀を振り下ろす。


パシンッと心地のいい音と共に流れる幸せな時間。

今でも鮮明に思い出せる……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「な、夏目……生きて……」


目の前にいたのは紛れもなく夏目本人だった。


「2人とも……何でここに……」


夏目が俺達に気づき、動きが止まる。

真剣だろうか?夏目の手には刀、目の前に立つ男性も大きな西洋剣を持っている。


何をしてるんだ?……

そんな物騒なものをもって。


そう言おうとした瞬間

男が剣を振り上げ、夏目に襲いかかった。



「夏目!!前!!」


「え?うわっ!!」


間一髪 刀を盾にして攻撃を防ぐが、勢いに負け宙に浮き、俺たちの目の前まで吹き飛ばされてしまった。


「夏目!大丈夫か!」


何が起きているのか分からない。

夏目が生きていて。

でも、男に襲われていて。

刀持ってて……


頭の処理が追いつかなかった……


「いっててて……」

夏目が起き上がり、無事を確認する。


「良かった……大丈夫か?」


安心したのも束の間。

男は剣を振り上げ、また襲いかかってくる。


「「う、うわぁぁぁあ!!」」


情けなく悲鳴をあげる俺と勇気の目の前で、夏目が男の剣を払い、男を蹴り飛ばす。


男が宙に浮き、神社の柱に激突する。

ボロボロになった神社はその衝撃で崩れ始めた。


半壊気味の神社の屋根や天井が落ち、男はその下敷きとなる。


「お、お前ってそんなに強かったっけ?」


俺のそんな愚問に対し夏目はニヤリと笑いかける。


「この状況の説明は後!今はとりあえずアイツを倒さないと!

2人ともそこでジっとしてて!」


そんな夏目の凛々しい姿に俺達は

「「は、はい」」

と返事をすることしかできなかった。



蹴り飛ばされた男は立ち上がり、剣を構え直す。


男は屋根の瓦礫の下敷きになったにも関わらずその身には傷一つ付いていなかった。


「化け物か……アイツ……」

常人ではありえないであろうその現象に俺は驚愕していた。


男が歩みを進める。


夏目もそれに合わせ、刀を構える。


刃は上向き。上段の構え。


夏目の得意の型だ。



一瞬も気を抜けないほどの緊張感が場を満たす。


一歩また一歩と間合い詰め、互いに相手の間合いを探る。



2人の足が止まる。


互いに間合いに侵入した。


息が詰まるほどの緊張感。


動くことを許されぬ時が流れる。




その刹那の不動は長く永遠にも感じた。




俺の汗が雫となって落ちる。

その瞬間、男は動いた。


剣を振り上げ、間合いを詰め襲いかかる。


「ふん!!」

男の剣の太刀筋には一切のブレはなく、夏目の首めがけて振り下ろされた。


しかし、男の剣は空を切った。


夏目はたった一歩。

剣の刃が首にかかる一寸手前。

たった一歩後ろに下がる事で剣を避けきった。



一動作が終わったと思ったその時だった。



夏目が片足を軸に回転する。

黒く長い髪が舞い 再び前を向いた時、刀の刃は男の首を捉えていた。


「はぁっ!」


目で追うことすら出来なかった。



気づけば男の首は飛び、体は前のめりに倒れた。


間合いを空けることも、避けることも許さぬほどの剣速。


一刀。

たったの一振り斬撃が勝負を決めた。




一瞬の出来事だった。

動いてからコンマ数秒の立ち合い。



目の前起きたリアルな死に息を飲む。



振り返った夏目の表情はいつもと変わらない笑顔で、その違和感に夢なのではないかと疑ってしまう。



しかし、転がった首と倒れた体が今起きたことを物語っていた。


恐怖。

それが俺と勇気に襲いかかっているのだ。


「な、夏目……」

「二人とも!

……連れて行きたい所があるの。

ついてきてくれる?かな?……」


少し曇った夏目の笑顔に全てを察した。


そして気づいた。

夏目の笑顔に感じた違和感は人を殺した事への恐怖。

そのズレだったんだ。


自分達が感じている恐怖。

それを感じていないということへの違和感だった。


でも、平気な訳がないんだ。

今起こったこと、起こしたこと。

そのことに対して平気でいる訳じゃないんだ。


何も分からない俺達に心配をさせまいと、気丈に振舞おうと必死なんだと。


勇気もそれを察しているようだ。


「なぁ、夏目。

助かったよ。ありがとう」


夏目に感謝を伝え立ち上がる。


「俺達をどこへ連れて行ってくれるんだ?」


そう言うと夏目は

「秘密!」

と笑ってみせた。


少し涙の滲んだ瞳で……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夏目について行き辿りついたのは、山の頂上付近

そこにあったのは、大きな洞窟だった。


「この山にこんな所があったのか……」


夏目はキョロキョロと周りを確認し、洞窟へ入っていく。


俺と勇気もその後ろについて行く。


暗い洞窟の中にポツリポツリとランプが置かれていた。


なにも見えないほどでもないが、歩きづらい。


そんな洞窟を抜けるとそこには、広い空間が広がっていた。


「な、なんだこれ……まるで何かの基地みたいじゃんか……」


勇気が驚くのも無理はない。

そこに広がっていたのは、およそ洞窟とは思えない、モニターや機材がのある施設だったのだから。


「な、夏目。なんなんだここ?」


「ここはね、お父さんが団長を務めてる組織の基地だよ」


「そ、組織って……」


俺は少し、いやすごく混乱していた。

ここ一週間に起きたことが多すぎて、頭の処理が全くもって追いついていなかった。


「詳しい話はお父さんから聞いて。

真人会うの久しぶりでしょ?」


「ん、あぁ確かに久しぶりだな。

戻ってたのか?」


夏目のお父さん(オッサン)は1年程前から仕事があるといって各地を転々としていたらしい。


「戻ってるっていうか……

まぁ、お父さんに聞いてよ!」


夏目はそういうと俺達をある部屋まで連れていった。


ノックをして部屋に入ると


「おお〜!待ってたぞ。

まぁそこに座れ」


そこには一年前と何も変わらないオッサンと


「……母さん?、美久?」


火事で死んだと思っていた、母さんと美久の姿があった。

ついに少ないながらも戦闘シーンを書く事が出来ました!

これからはどんどん戦闘シーンも増えていきますので楽しみにしていて下さい!


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評価、感想、ブクマ、レビュー

お願い致します!


ではまた次回!


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