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友達

失意の底


絶望に苛まれる


そこに現れる希望は……

「ねぇ、気づいて」


また、夢を見た。

あいも変わらず綺麗な場所だ……


「なぁ、ここはどこなんだ?」


隣にいる誰かに言葉をかける。

見覚えのある、でも思い出すことの出来ないそんな誰かに。


「ここはね、大切な場所。大切な思い出の場所。そして、全ての始まり」


誰かはそう答えて目の前にそびえ立つ二本の大木を見る。


「ねぇ、気づいて。思い出して。あなたが必要なの」


そうして俺はまた目を覚ます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


……目が覚めた。


あの人は何を言っていたのだろう?……

俺が必要?……


何故?どうして?

夢の中で新しい謎を渡されてしまった……





あれから3日が経った。


この3日間、頭が混乱したままだ。


どうすることもできず、ただただあの男が言っていた事を頭の中で反芻するしかなかった。


『神』、『悪魔』、『代理戦争』


今起きていると言っていたこと。

信じることの出来ないオカルト。



それでも自分の身近に起きたこと。


何が何だか分からない。

今まで起きていたことはたちの悪い夢なのではないかと思いたい。


「母さん……美久……夏目……!」



でも、何も知らない。

何故?どうして?

何も分からない。



頭の中がぐちゃぐちゃのまま、あの男が言った3日目が来てしまった。



俺はどうしたい?

どうすればいい?


ーーーーーーーーーーーーーー


「真人〜!ご飯できたよ!早く起きなさい!!」

いつもの母さんの声。


「お兄ちゃん!お母さん呼んでるよ!お〜き〜て〜!」

妹の美久に揺さぶられてる。


「わかった。わかったから〜……」

観念して起き上がる。


「やっと起きた。ほらリビング行くよ!」

美久が腰に手を置きえらそうにしている。

今回は寝坊した俺が悪いから何も言えない……



「美久、すまんな……ありがとう」

美久と2人リビングへ向かう。

リビングに入ると母さんがいそいそと朝ごはんの準備をしていた。


「あ、やっと起きたのね。ほら、早く食べちゃいなさい。」

座った俺の前にご飯が置かれる。

卵焼き、焼き鮭、おひたし、味噌汁、ヒジキ、漬物。

純和風の朝ごはんだ。


「いただきま〜す」


俺はこの家で3人で暮らしている。

親父は15年前に交通事故で死んだ。


まだ俺達は小さく最初は何が起きたのか分からなかった。

でも、母さんの泣いた姿をみて自分達もつられて泣いたことを覚えている。


それ以来母さんの泣いた姿を見ていない。


母さんは強かった。

家事をし、仕事をし、地域の行事にもしっかり参加して、近所の人地域の人から絶大な信頼を得て、女手一つで俺達をここまで育てあげた。


どんなに忙しい時も朝ごはんと夕ごはんは欠かさず手作りで、美味しくない時なんて1度もなかった。


どんなことにも全力で、頑張り屋さんで

自慢の母親だ。


そんな母親のことを兄妹2人いつも感謝していた。

妹は甘えん坊で泣き虫で。

でも、負けん気やいつも全力な所は母親譲りで、学校ではみんなの人気者らしい。

いつもうるさくて、俺の周りをうろちょろしてるけどそんな姿が愛おしい。


「お邪魔しま〜す!真人〜!迎えに来たよ〜!」

朝ごはんを食べていると夏目が迎えに来た。


「美香さん、美久ちゃん!おはよう!」


あまりに家に馴染み過ぎて、チャイムも押さずに家に入ってくる。


「あら、夏目ちゃんおはよう!今日も元気ね!」

母さんがニコニコと笑いながら挨拶を返す。


「げ!真人まだ寝起きなの!?早くしないと遅刻だよ!」

夏目が俺を急かす。

俺の部屋に上がり、戻って来たかと思えば……


「はい!着替えて!服これでいいでしょ!」

俺の部屋から服を持ってきた……


「お前いい歳こいて男の部屋に勝手に入るとはなに事か!」


「大丈夫!少しエッチな本くらいじゃ引いたりしないから!」


そういうことではない……

ないんだが……夏目はこういう奴なんだ。


お節介で面倒見が良くて明るくて。

こいつと一緒にいると自然と笑顔になってしまう。

俺も、周りの奴も。

それは昔から変わらない。


小中高ずっと一緒だったが、どんな環境でもこいつは人気者で、周りには自然と人が集まっていた。


そんな幼馴染を少し誇らしく思っていた。


「ほら!食べ終わったでしょ!着替えて!」


服を手渡され脱衣所に向かう。

服を着替えてカバンを持ち靴を履く。


全ての準備を終わらせ、美久、夏目、俺の3人

玄関で振り返る。


「それじゃ、母さん。行ってきます」


「「行ってきます!」」



「はい!行ってらっしゃい!」


俺の日常はどんな時も幸せだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


幸せな時を思い出す。

失った時間。

息苦しくて、辛くて、怖くて。


どれほどにその時間が大事だったか。

どれほどにその時間が愛おしいかったか。


失った。

俺は失った。


生きる希望を失った。


俺に何が残っている?……

俺の手には何がある?……





そんな時家のチャイムがなった。


重い足取りで玄関へ向かう、記者か?

事件の被害者家族に話を聞きにでも来たのか?


そう思いながら、扉を開ける。


「よぉ、真人。遊びに来たぞ」


「……お前、なんで……」


そこにいたのは、勇気だった。



「なんでって、普通聞くかよ、そんなこと。

友達だろ、俺ら」


そう言って家に上がる。


「ああ、外の記者は追い払って置いたから。

さて、ゲームしようぜ!」


「ゲームってお前……」


こいつは分かっているのだろうか?

今がどんな状況で、俺がどんな状態なのか……


「おい、勇気……俺……俺」


「知ってる。

知ってるからさ。

何も言うなよ……」


勇気の顔が曇る。

きっと想像が出来てしまうのだろう。


こいつは分かってない訳じゃないんだ……


「なぁ勇気……こういう時ってどんな顔すればいいんだろう……」


枯れていたはずの瞳から、雫が落ちる。


「真人、泣いてもいいんだよ……

俺だってつらいよ……夏目ちゃんが死んじまったんだ……俺だって……」


勇気の瞳に涙が溜まる。

必死に堪えている。


「でも、お前の方が辛い!!

そんなの分かってる!

分かってるから!

だから!俺が耐えてでもお前に泣かせてやる!」


溢れ出す。


「くっ!……うっ……うっ……!」


とめどなく流れる。

心から噴き出すように。


この三日で泣き果て枯れたはずの涙が。


泣いて 泣いて 泣いて 泣いて。




そんな俺の横で勇気は俺の肩を抱き寄せ隣で静かに声を殺して泣いていた。


友と2人、泣き続けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


暫く泣いた後勇気が


「なんも食べてねぇだろ?

外でなんか食べようぜ。」

と言って2人で外へ出かけた。


コンビニで缶コーヒーとパンを買って公園へ向かう。

ベンチに座り2人一息ついた。


「「ふぅ……」」


勇気は携帯を取り出しなにかし始めている。



「何してんだ?」


「ん?ゲームだよ。

最近流行りの奴」


「ふーん」


興味なさげにパンを貪っていると勇気が突然、


「見ろ。これでも戦略系のゲームで全国ランキング53位なんだぞ?頭いいんだぜ?」

といって携帯を見せつけて来た。


「いや、知らねぇよ」

そんな愛想のない相槌を笑いながらうってまたパンを貪る。



いつも通りだ……

何も変わらない。

いつも通りの時間だ……



どこか……不思議な気持ちになる……


何故だろうか、不謹慎で無神経な勇気のそんないつも通りの姿に気づかないうちに、笑いがこみ上げ、元気と【勇気】をもらっていた。


変わらず悲しい。

苦しい。辛い。


でも、残っていた。

俺の日常は俺の幸せはここにもあった。

忘れてはならないもう一つの大事なこと。

大切にしなければ行けないバカ。





全てを知りたい。

……あの男の言っていた真実を知りに行こう。


「勇気……ありがとうな」


「もう……大丈夫なのか?

そっか……大丈夫ならそれでいいんだ」


勇気はそう言って笑った。


こいつとなら向き合える。

勇気に全て話そう。

一緒に真実を知りに行こう。


そう思った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そっか、そんなことがあったのか……」

勇気に全てを話した。


夏目の家で火事が起きたこと。

そこには自分の母親と妹がいたこと。

消火されたあと真実を知るという謎の男が現れたこと。

その男が携帯で見た記事と同じことを言っていたこと。


そして今日事件現場で真実を知れるということ。



勇気は一息吐いて、姿勢を正す。


「真人ごめんな、遅くなって。

俺も昨日の夜知ったんだ」


そう言って頭を下げる。




勇気は1人暮しをしていて、大学の近くに住んでいる。


対して、俺と夏目の家は大学から電車で駅六つ程の距離があり、事件が起きていても、気づくこと出来ないはずだ。


「勇気、いいんだ。

来てくれてありがとう」


勇気は立ち上がり、俺に決意に満ちた顔を見せた。


「真人、行こう。

俺も夏目ちゃんの友達だ。

真実を知りたい」


やっぱりこいつは馬鹿だ。

いつもうるさくて、周りを巻き込んで。


そんな姿にいつも背中を押されるんだ……



「……そうだな。

行こう。本当のことを知りに」


気づけば2人立ち上がり、夏目の家に向かい始めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


山に辿り着き、燃え尽きた夏目の家に向かい合う。


勇気は少し泣いている様だった。


「……何もねぇな」

勇気がボソッとそうつぶやく。


「なにかあるのかもしれない。

探そう」


そう言って2人で燃え尽きた夏目の家の周りの探索を始めた。


何を探しているかも分からない。

目標のない無謀な探索を。



ーーーーーーーーーーーーーー


「勇気、なにか……あったか?」


「……何もねぇな」


探索を始めて3時間が経過していた。

しかし、努力のかいもなく、何一つそれらしいものは見つからない。


「なぁ、真人。

俺ら何を探してるんだ?……

自分たちにも分かって無いもの探しようがないぜ」


勇気の言う通りだ。

何一つヒントも見つけられず、ただ時間だけが過ぎていくだけだった。


「せめて、ヒントがあればな……あ、そう言えば! えぇーと……」


勇気は携帯を取り出し何かを調べ始める。


「何を調べてるんだ?」


「火事のニュース。

なにかヒントになること書いてるかもって」


ひとしきり調べ、勇気は携帯を置いた。


「なにもない……

書いてあるのは、遺体の身元は不明なこと、消火に3時間かかってること、半壊した原因は不明なことくらいだな……」


「手掛かり……無しか……」


2人 口を閉ざし、沈黙が場を満たす。


あの男が言っていたことはやっぱり虚言だったのか……そう思った時だった。



ィィン……キィィン!


甲高い金属音が沈黙を破る。


「なんだ?なんの音だ?」


勇気と顔を見合わせ、恐る恐る音のなる方へ視線を向ける。


その音が鳴っているのは、神社の裏の様だ。



ジッと神社を見つめる。


キィィン……キキィィンと絶え間なく音は響く。


確認するために裏に回ろうと、立ち上がったその瞬間。


神社の壁が突き破られた。


現れたのは2人の人間。


手には刀らしきものをもっていた。


「な、なんだ!?」


「真人!何が起きてるんだ!?」


勇気と2人して困惑し、動けずにいた。


しかし、すぐに我に帰る。

突然で意味の分からないこの状況下で自分を取り戻す。


勇気も全く同じ様だ。


2人顔を見合わせ、見間違いで無いことを確認する。


驚きながらも息を整え、口を揃え、その名を叫ぶ。



「「夏目!」ちゃん!」


そこにいたのは紛れもなく、神木 夏目その人であった。

遂に確信に触れる話まで進みました!

まだかすっている程度ですが、これからバトルシーンなど増えて行くので楽しみにしていて下さい!


ブクマ、レビュー、評価よろしくお願い致します!

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