肉食系女子とスイーツ系男子
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それは、いわゆる一目惚れというもの。
けれどもこのネガティブ思考は、どうせダメだと諦めた。
そんな中学時代。
高校に行って、一番驚いたのは君もいたこと。
運命、なんて思ってしまった。
同じクラスだったからか、君と少し話すことができた。
そんな高校時代。
大学は、僕が君と同じ学校を選んだ。
その時、初めて学食や給食ではなく、テラスで君と2人きりの食事をした。
もしも君と、この先も、深く知り合うなら、そう考えたら、これは必要なことで。
ドキドキした。いろんな意味で。君は、それを普通だと、僕を否定しなかった。
安心して、嬉しくて、僕は涙を流した。
そんな大学時代のあと、僕らは付き合い始めた。
同棲していて、今は彼女のために、買い物中。
そんな時、「お、久しぶりー」と、声をかけられた。
「あ、先生」
高校時代の恩人だった。とは言っても、リハビリの先生でもあるから、出会うのは1ヶ月ちょっとぶりくらいかな?
中学までは、大丈夫だったんだ。高校時代からは、先生のこっそりとしたサポートがなければ、僕は給食を食べれなかったし、友人もできなかっただろう。
「今どうしてるんだ?」
「あ、彼女が出来ました」
「・・・マジかよ」
先生は、とても驚いている。
「はい、マジです」
「・・・あれは、大丈夫なのか?」
「ええ、彼女も受け入れてくれます。と言うか、彼女も同じなんです」
「・・・なるほど」
「先生は、どうしてるんですか?」
「いや、何も変わらず」
そう言って笑った先生の顔は、いつもどおりだった。
「そんなことより、ちゃんとリハビリ来いよ。あ、もしかして・・・」
「はい、ちょっと、まぁその・・・彼女との生活で忙しくて・・・」
「ラブラブのイチャイチャで忙しいってわけかこのやろ!」
「うわっ!」
僕の頭をグシャグシャになでまくる先生、何も変わってないや。
「くそ!もう帰る!あ、出来れば彼女さんもリハビリ連れてこいよ!」
「はい」
どこかへと走っていった先生、そういや生まれてずっと彼女なしだったっけ。
本当に、彼女との時間を大切にしていたら、時間があっという間に過ぎてしまう。
リハビリか。たしか、パンをひとかけら食べても、僕は泣かなくなった。
でも、それは飲み込むという意味で。どうして、パンをよく噛んで食べると、まるでスポンジをかんでいるような気分になり、泣けてくる。
それでも、食べれたときは、先生がさっきみたいに撫でてくれたっけ。
食べることは悪いことじゃない、先生は、それを教えるのがうまい。
そもそも、僕がこうなったのは、母さんのせいなんだけどね。
あ、いや、僕は母さんが嫌いなわけではない。母さんも、父さんがいなくなって辛かったんだろうし、僕の食事を考えるのもめんどくさかったんだろう。
彼女も同じだ。母親がそれしか与えないから、そうなった。ただ、彼女の場合は幼少期。僕は中学生時代。年季が違うんだけどね。
それに、彼女にリハビリをさせるのは難しい。心的な問題で。それをまず、僕が治せたら、なんて思うんだ。
そんな事を思い、考え、買い物を済ませて、帰宅した。
「あ、お帰り。作っといたよ。スペシャルコーヒー」
彼女は料理が苦手だ。作れるのはスペシャルコーヒーくらい。
そして僕も、料理が苦手だ。だから食事は、いつもどこかで買ってきたもの。
まるで、あの時と同じ。母親が与えたものしか食べないような、そんな食生活。
たまには自分で決めた、別の食品も買わなくちゃいけない。わかってる、それはわかってるんだ。でも、どうしてもいつもと同じになってしまう。
「ありがと」
彼女との約束、なるべく、ネガティブはやめる。でも、どうしても不安はあるもので、考えてしまう。
そんな考えを押し流すかのように、スペシャルコーヒーを一気飲みする。いつもどおり、ジャリジャリする。
ちなみにこのコーヒーのつくり方、砂糖をコップからあふれるギリギリまでいれる、ミルクたっぷりのコーヒーを入れる、ジャリジャリとする感触を残して出来上がり。
これが、僕の好きなスペシャルコーヒー。先生曰く、気持ち悪くなるようなゲロ甘さ。
「よし、終わったよ」
「あ、うん」
どうやら、食事の用意ができたらしい。と言っても、買ってきたものを器にもるだけだけど。
今日の食事。彼女の分は、唐揚げ、焼き鳥、タンドリーチキン、チキンナゲット、フライドチキン、焼肉。
僕の分は、チョコレートケーキとショートケーキを1ホールずつ。
肉食系女子とスイーツ系男子、といえば聞こえはいいのかもしれない。でも本当は、肉類依存症と糖分依存症。
彼女は、肉類以外を食べると、吐きはしないけど気持ち悪いととても怒る。
僕は、ケーキや生クリームなど以外を食べると、吐いてしまう。
でも、彼女は塩や醤油やポン酢などの、肉に付ける調味料は平気。
僕は、塩や醤油やポン酢などの、そういう調味料でも気持ち悪くなる。
どちらの症状が重い?なんて、比べちゃいけない。
早く治す、と考えちゃいけない。
これは、心の問題でもあるのだから。
焦らず、焦らずゆっくりと。
「じゃ、食べようか」と、僕が言うと、彼女は笑う。
「いただきまーす!」
「いただきます」
こうして、食事は始まる。お互いが食べれるものだけを食べる。
不思議かもしれない、異常かもしれない。
でもこれが、僕らの食事でもあり、僕らの日常なんだ。
友人の実話です。