幼馴染と僕の昔話
その時の真白の瞳の冷たさが頭から離れなかった。
僕はその夏の日から、真白の事をなんだか僕たちと異質の存在であると考えるようになった。
理由は定かではないのだが、纏ってる空気が違うのだ。僕たち人間とは。
小さい頃から一緒にいたから気にならなかったのだが、そもそも見た目も少し人間離れしているように思った。
夏の間半袖で外で遊んでいても全く日焼けしない真っ白な肌、色素の薄い瞳……
特筆すべきは体温であろう。真白の手はいつ触っても雪のように冷たい。また、とても暑くて皆が汗をダラダラかいているような気温の中で鬼ごっこをしても汗ひとつかかず、涼しい顔をしていた。
改めて書き出してみるとその異質さをしっかりと感じる。
そうそう、僕がこんな風に思うのは見た目に関してだけではない。
今でも夢か現実か、はっきりとしていない。僕は数年前の夏休みに非常に不思議な光景を見てしまったのだ。
当時小学校低学年だった僕は夏休みを満喫することに全てをかけていた。
毎朝6時半に起き、ラジオ体操に行った。それから猛スピードでお昼ごはんを済ますと虫取り網を持って蝉やカブトムシを捕まえに行くのだ。そんな感じで毎日が過ぎて行った。
そんな夏休みのある日の事だ、僕はその日もいつものように虫取りに行こうとしたのだが、ふと思い立って幼馴染の真白をその遊びに誘うことにした。他の友達が里帰りをしていていなかったからか、純粋に真白と遊びたかったからかは覚えていない。
僕と真白は家がすぐ近くということもあって、幼稚園に入る前からの友達だった。
お互いの家を行き来するのなんて当たり前だったから、家のチャイムなんて鳴らさずに玄関が空いていたらズカズカ部屋まで上がり込むような関係だった。今考えるとなんて非常識なのだろうか。
その日も僕は当たり前のように白雪家の家に行った。それで、キッチンから人の気配を感じたからそこに行った。
そこで見たものはジュースの入ったコップにふーふーと息を吹きかける真白だった。
それがどうした、と言われるかもしれない。
別にどうってことないじゃないかって。でも、どうってことあったのだ。
コップの中のジュースがみるみるうちに凍っていったのだから。
真白が僕に気づき、「あっ」っと小さく声をあげた。僕はなんだか見てはいけないものを見てしまった気がした。幼馴染の知らない一面を見てしまって怖かったんだと思う。全速力で走り、家に帰った。真白の家に虫取り網を忘れてしまったことに気付いたのは夕ご飯を食べている時だった。
翌日、真白は何事もなかったかのように僕の家に虫取り網をもってやってきた。「これ、忘れてったよ。」それだけ言って、前日の事には全く触れてこなかった。僕もなんだか聞いちゃいけない気がして、あれは夢だったと思うようになった。
年を重ねていくにつれて、そんな事は漫画の中でしか起こらないことだって認識が出てきたし、記憶も曖昧になっていった。中学に入学するころには、夢に違いないと思っていた。
でも今になって、真白だったら出来るのかもしれないって、そんな子供染みたことを考えはじめてしまったんだ。