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イタチは笑う  作者: 足利義光
第八話
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火曜日 ウサギちゃんと夜のお・シ・ゴ・ト

「お疲れ様でしたぁ♪」


 時刻は深夜の二時。バーの営業時間が終わった途端、イタチ君は速攻で店を出ていった。今日は夜のバイトはないハズ……アイツ逃げたわね。

 それにしてもいつもイタチ君は営業時間が終わると元気になるのよね。ま、いっか。


「あれ、オーナー。お出掛けですか?」


 リス君が部屋から着替えて出てきた私を見かけて声を掛けてきた。リス君は早速店内を掃除しようとモップを掛けていた。うん、いつもなから真面目だわあの子。いいわ、いいわ。


「ちょっとデートよ♪」

「マジっすか!」



 勿論、冗談なんだけど、いい反応だわ。

 ただ、それが聞こえてしまったらしく奥からガチャンとお皿が割れる音が店内に響く。あ、冗談と思わない奴に聞こえたか……しまった。


「お嬢、悪い男には気を付けないと!!」


 カラスが奥から飛び出してきた。普段は常に冷静なカラスも私の男関係にだけは昔から厳しかった、というか過保護だ。ある時はこうだった。


「お嬢と付き合いたい、だと? 千年早い」


 この台詞と殺気に満ちた視線で彼(当時は私も彼も12歳)はオシッコをチビってしまい……以来私に話し掛けなくなった。彼は今どうしてるだろうか?


 他にはこんな事もあったっけ。


「お嬢と付き合うなら俺を倒してからだ(怒)」


 鬼の形相になったカラスは当時の彼(互いに18歳)とその仲間達を威圧すると彼らの目の前で電柱を殴り付けてヒビを入れてたっけ。…………彼は死ぬほど怯えてたなぁ。

 まぁ、とにかくカラスに男関係を知られると厄介極まりない。もう私も21歳なんだから彼氏くらいいてもいいでしょ。まぁ、全然寄り付く男がいないんだけどね。誰のせいだか。


「冗談だってば。今から知り合いのトラブルを解決しにいくだけよ」

「……本当ですね?」

「……私の目を見て。嘘を言う女に見える?」

「うっ…………見えません」

「じゃ!」


 こんなしょうもないやり取りをしてから早足でバーを出る。やれやれだわ。カラスも少し位浮いた話も出ないのかしら。

 そう思いながら、私は今日の相手に電話を掛ける。急がなきゃ。




 深夜の繁華街を一言で表現するなら、【きらびやか】と言うに限るわね。

 私も初めてここに来た頃は綺麗だなぁと素直に感じた。でも暫くすると気付いたの、怖いと。

 繁華街に来る人の中には色んな人がいた。サラリーマンに学校の先生やお役所の人、堅気じゃない人もいた。

 バーも最初はカラスが一人で切り盛りしていたんだけど悪いお客さんが多くてよくトラブルを起こしていた。

 私はバーの営業時間中には寝ていたから最初は気付かなかったし、気付いてもなるべく下には降りずにいた。


「お嬢は下には降りないで下さい、柄の悪い奴も来ますから」


 よくそう言いながら私の頭を撫でていた。

 でもその日は何故か下に降りてみた。多分、好奇心が勝ったのね。そして初めて営業中のバーを見たわ。


「バーテンさん、酒だ」

「待てよ、俺が先だよなぁ?」

「何いってやがる?俺に決まってんだろ」


 初めて見た店内の様子は酷いものだった(笑)

 とにかく、お客さんが暴れていてケンカをしていても誰も止めないし、寧ろ加担して事態を悪化させたりしていた。

 カラスも止めようにも一人で切り盛りしていたものだから、なかなか止められずに苛々していたのを覚えている。(ただし普通の人には無表情に見えていたハズ)

 酔っぱらいの一人が私を見つけると近付いてきた。服装からすると多分ヤクザな人だったと思う。


「お嬢ちゃん、子供は寝る時間だよぉ」

「私はお嬢ちゃんじゃないわ」

「気が強い嬢ちゃんだなぁ、バーテンの子供か?」

「私はレイコよ!」

「あ〜うるせぇよ」


 酔っぱらいが私に手を挙げてきた。彼には残念な事に私は子供の頃から父に護身術をみっちり教え込まれていたから、酔っぱらいの半端な攻撃なんか大した事なんか無くて返り討ちにした。


「うぎゃあ」情けない声で叫ぶと酔っぱらいが倒れて、店内にいたお客さんが全員こちらを見た。私は精一杯強がって、


「な、何よ?」


 と言った。すると酔っぱらいの連れらしい太った男がこちらに詰め寄ると掴みかかってきた。


「威勢がいいが場所を考えろよ、嬢ちゃん」


 太った男は多分柔道か何かをかじっていたみたいで私の服の襟をしっかりと掴むとそのまま投げようとした。力と体格に差があり過ぎたからアッサリと宙に浮いたけど、その勢いを利用して男の首筋に何とかしがみいた。


「すばしっこいガキだな鬱陶しい!」


 太った男は両手を伸ばして私を捕まえると楽々と目の前まで運んだ。反撃しようにも手も足も相手に届かなくてジタバタするしか無かった。


「バーテンのガキだか何だか知らねぇが大人に対する態度を教えてや、」


 言い終わる前に太った男は突然後ろに倒され、私はカラスに受け止められた。カラスは私を降ろすと、太った男に言った。


「そこまてだ、デブ」


 そこにいたカラスはいつもの無表情で不器用な彼じゃ無かった。その場に立っていたのはそれまで見たことが無い男だった。


「な、何だとこい……」


 言い終わる前にカラスは男の顔面を躊躇うことなく蹴りつけ、踏みつけた。二度、三度と容赦なく踏みつけていく。その光景に周りで面白がっていたお客さんも静まり返った。


「やめてカラス、もういいよ。大丈夫だよ!」


 怖くなった私はカラスの腕を取り声を掛ける。すると反射的にカラスは反対の腕で殴りかかろうとして振り向く。


 私が思わず「きゃっ」と悲鳴をあげると、カラスの拳が目の前で止まった。


「お嬢、俺は何て事を……」


 そう言うカラスの表情は何かに怯えたモノだった。あの時は分からなかったけど今ならよく分かる。カラスは【自分】が怖かったんだと思う。


「大丈夫だよ、カラス」


 私はうずくまったカラスの背中を撫でながら精一杯声を掛けた。



 それから暫くはバーにお客さんが全く来なくなった。ま、当然だよね。

 転機になったのはクロイヌが初めて来た時だった。


「よう、久し振りだな、レイヴン」


 それがクロイヌがバーに来て最初に言った言葉だった。

 クロイヌは今とは違ってまだ組織には所属していなくて、服装も黒一色なのは同じだったけど、この頃はシャツにジーンズを基本にしたカジュアルだった。あの独特の音を立てるブーツは当時から履いていたわね。


「何の用だ? 俺はもう足を洗ったぞ」

「そうかい。じゃあ丁度いいじゃねぇか。二人で【掃除屋】しようぜ」


 そうしてカラスとクロイヌは掃除屋を始めた。元々大戦で戦友だった二人は抜群のチームプレーで仕事をこなしていった。

 その内に今よりも治安が悪かった第十区域が少しずつ変わっていった。

 少しずつだけど繁華街に来る人が増えていき、大通りにマトモな店が増えていき、それに応じて住人も増えた。



 そしてやがて二人は第十区域と繁華街の顔役になっていた。

 さらにしばらくして、クロイヌが組織に入る事になった。



「行くのか?」

「あぁ、行くさ」


 二人は閉店したバーのカウンターで二人でスコッチを開けていた。いつの頃からかこれが二人で話す時の習慣になっていた。


「……俺はこの街を少しでも良くしたい。その為には組織の力が必要だ」

「いいのか? お前の手は血塗れになるぞ」

「別に構わないさ。俺一人が背負えばいいだけだ。お前こそ、あの子の事をいつまで……」

「聞くな、これは俺のケジメなんだ」

「そうか……分かった。じゃあ、行くわ」


 そう言うとバーを出ていくクロイヌの背中は何処か寂しそうだった。



 クロイヌが幹部になってから繁華街はまた変わった。組織の力を背景に大通りにあったいくつもの違法な店を規制し、治安を整えて、資金を出した。そして売上げからマージンを得て、組織に献上していく内に今では有力な幹部にまで成り上がった。


「……て、柄にも無いわね。昔話をするなんて」


 私はいつの間にか話し込んでいたみたい。


「うぅん、そんな事ないですよ、興味ありますもん」


 相手はリスの彼女、ウサギちゃん。今夜は彼女と待ち合わせていたワケだ。

 時計を確認すると時刻は深夜の三時。


「それにしてもウサギちゃん可愛い♪」

「ちょっと、やめてくださいよ♪」


 ウサギちゃんはホントに可愛い。着ている服はパーカーの上に男物のカーディガン(多分リス君のね)にホットパンツと黒タイツの上から黒のソックスにスニーカーとボーイッシュだけど活動的で彼女によく似合ってる。

 ちなみに私の今の服装は、上からポンチョを羽織ってインナーにパンツとブーツ、仕事が終わったから気楽な服装だ。


「それにしてもウサギちゃん、感謝するわ」

「私の仕事ですから」


 ウサギちゃんは前はギルドに関係していて泥棒をしていたが、今は足を洗っていた。

 もっともギルドから抜けるのは極めて難しいらしく、今の彼女はギルドのお尋ね者扱いだ。

 一度ギルドに狙われたら無数の犯罪者が目となり彼女を探し、また足となり彼女を追い詰めるだろう。最後にギルドお抱えの暗殺者が派遣され殺される。

 塔の街だけでは無くギルドは世界中に情報網を持ってるから逃げ切るのは困難だとカラスが前に話していた。

 助け船としてカラスはクロイヌに彼女を紹介してクロイヌが彼女の身柄を保証する事で安全を確保したそうだ。

 何でクロイヌが彼女の保証をしたのかがよく分からないから聞いてみたらカラスは「借しがあるんです」と少し笑いながら答えた。

 ギルドとしても、組織の幹部であるクロイヌとコトを構えるのは得策ではないと判断したらしく、追跡は収まった。

 でも念のためにクロイヌはウサギちゃんに、第十区域からは出るなと伝えたそうだ。それからしばらくして彼女は仕事を始めた。【捜し屋】だ。

 良くも悪くも泥棒だった彼女は持ち前の行動力でこの区域内で人捜しや盗まれた品物を捜すようになり、今夜は私の依頼で【人捜し】をしたってワケ。で、今いる場所がデートのお相手がいる場所らしい。


「それにしても流石だよ、ウサギちゃん。急に頼んだのに場所まで」

「よしてくださいよ、あんな目立つ奴ならすぐですから」


 私はスマホから写真を取り出す。相手はあのハゲ頭の外人さん。さっさと片付けてテル達に身分証を渡してやらなきゃ。


「それにしても、ソイツ何者なんですかね?」

「さぁね、ぶちのめしてから聞けばいいんじゃないかな」


 ウサギちゃんの疑問は当然だと思った。通称【ブル】。名前の通りに牛みたいな奴で最近、あちこちで暴力沙汰を起こしているらしい。前歴はよく分からないらしいけど、間違いなく堅気さんではないわね。


「それにしても遅いですねぇ、そろそろ二時間経ちますよ」


 ウサギちゃんがブルブル震えてる。息は白くなったし、もうすぐ冬になるのが身に染みて分かる。私達が張り込んでいるのは所謂、風俗系のお店の裏だ。ブルはこの店を気に入ってるらしく、週に三回は来るらしい。今夜も来店したのはウサギちゃんが確認している。

 裏口にいるのはブルはいつも裏口から出入りしているからで、こちらとしては有り難い。手間が省けるからね。


「レイコさん。寒い、寒すぎます」

「まぁ、もう少し……」


 という私もあまりの寒さに正直トイレに行きたくなりそうだ。

 待つこと更に十分。


「「我慢出来ない」」


 二人とも限界だった。見事にハモったので笑う。


「もういいや、行こう」

「ですね、寝不足はお肌に悪いですもん」


 私達は二手に別れる事にした。私が裏口からでウサギちゃんは表から堂々とだ。何で私が裏口かって? それはまぁ、色々あるから。




「いらっしゃい…?」


 受付にいた店員が思わず訝しげな表情を浮かべた。入ってきたのが女性、しかもまだ十代後半らしい少女だからだ。


「誰だアンタ?」


 店に新人が来るとは聞いていない、店員は少女を睨みつけながら言う。


「ここは会員制だ。それにお子さまが来る店じゃないぞ」


 少女は店員の言葉に身を震わせながらも、少し間を置くと近付く。


「あ、あの私……」

「何だ? 言われた言葉が分からないのか?」

「……もう子供じゃないです」

「何だと?」

「……試してみる?」


 少女はそう言うとレジカウンターに右足を乗せる。


「な、何だよ」


 そう言いながら店員の視線は少女の右足に釘付けになっていた。ホットパンツにタイツの組み合わせは少女の脚線美を見事に表現していた。身長は150あるかどうかだが少女からは大人の女性の持つ艶かしさを感じて店員は思わず唾を飲み込んだ。


「私……ここで働きたいんです」

「そ、それは僕の権限じゃ……」

「面接して貰えます?」


 そう言うと少女は左足もレジカウンターに乗せると開脚した。店員の目が完全に少女に釘付けになった。


「あ、あぁ……」

「私を味わって♪」


 と言うと少女は開脚した状態から両手を軸に、素早く腰を捻ると右足で店員の顔面を蹴り飛ばした。全く反応出来ずまともに喰らった店員は吹き飛ぶと後ろの棚に激突。派手に物が落ちた。


「いい夢見・て・ね♪」


 そう言いながら少女、ウサギは悪戯っぽい笑顔を浮かべた。


「何だ今のは!」

「誰だ?」


 物音で別室から店員らしい連中がぞろぞろと出てきた。


「見てわかんないのかい? 面接だよ」


 と言うと気絶している店員を指差す。店員は完全に気絶しているがその表情は何とも嬉しそうだった。


「ふざけんな」

「女だからって手加げ、」


 いい終わる前にその店員の顔面にウサギの左足での飛び蹴りが炸裂。


「ん、何か言った?」


 ウサギは不敵な笑顔を浮かべると手招きしながら言う。


「次は誰が私を味見してみる?」


 その言葉をキッカケに店員達がウサギへと襲いかかった。





 裏口にいるレイコの耳に派手な音が聞こえた。どうやら始まったみたいだ。


「よし、行くか」


 ドアに掛けられた鍵はウサギが既に外していてノブに手を掛けるとドアはアッサリ開いた。


「……嫌な匂いね」


 裏口を開けるとそこは店の倉庫の様だった。所狭しと棚には色々な種類の所謂大人の玩具がたくさん置いてある。他にもコスプレ用だろうか、セーラー服やスクール水着に看護服(透けている)など諸々だ。

 倉庫の出口が見えてきた、同時に店内に流れる曲を打ち消すように男達の悲鳴と怒声がハッキリ聞こえてきた。

 レイコが倉庫から出るとそこでバッタリと部屋から通路に出た客らしき中年に出くわした。


「あ、」

「ん? ネェチャンも店の女か。丁度いいわ、ちょっと中に入れよ」


 と言うと右手を掴み部屋に連れ込もうとした。中年にとって不幸だったのは相手がレイコだった事に尽きる。左手で中年の後頭部を掴むと無造作にそのまま壁に叩き付けられた。


「ジャマよ、おじさん」


 レイコは吐き捨てるように呟くと中年のいた部屋に視線を送る。部屋には女性が一人ベッドに伏していた。

 服はボロボロで身体は細かい傷だらけ。近くには鞭が置いてあったのでそういうプレイをしたみたいだ。改めて中年と店に嫌悪感が湧いてきた。


 レイコは奥から左右のドアを順番に空けていく。どの部屋にも客らしき男達と店の女の子達がいて、そのうち何人かは見覚えのある組織の人間もいた。

 レイコは即座にスマホでみっともない写真を撮る。向かってきたら返り討ち。

 その繰り返しでほぼ全ての部屋を確認したが、肝心のブルの姿が見当たらない。


「残るは……あの部屋」


 レイコの視線の先に映るのはVIP室。他の部屋に比べて入口がしっかりと鍵が掛かっていて外からは開けられそうにない。仕方ないので入口へと足を向けると店員が一人残らず倒れていて、丁度ウサギがトイレからスッキリした表情で出てきた。


「あ、レイコさん。どうでした?」

「ちょっと鍵がね……」



「……あ〜、これは道具がないと開けられそうに無いですね」


 ウサギがお手上げとばかりに肩をすくめた。仕方ないので店員を一人起こして聞いたが今、VIP室には客と店長がいるらしく誰も中に入れないらしい。


「どうします?」

「う〜〜〜〜ん……」


 二人は店員を眠らせると少しの時間考えを巡らせた。そして、


「ウサギちゃん、お願いがあるんだけどさ」

「はい、何なりと♪」


 レイコの考えを聞くとウサギの表情が一変した。最初は驚いたもののすぐに満面の笑みを浮かべると嬉しそうに店の外に出ていった。


「はい、アンタ達はさっさと動く!!」


 レイコが倒れていた店員達を起こすと場所を開けるように指示する。最初は「何だコイツ」と反発していたが、見せしめに一人を壁に投げ付けると大人しくなり素直に従った。

 待つことおよそ五分。レイコのスマホにウサギからの電話が来た。


「もしもし♪」

「今からいっきまぁす!!」

「いつでもどうぞ」


 二人の通話が終わるとすぐに店員達は事態を理解した。いきなり店の入口を突き破りショベルカーが入ってきたからだ。

 運転するのは勿論ウサギでショベルカーは真っ直ぐにVIP室の扉の目の前に辿り着く。


「誰かあの部屋に電話か何かしてくれる?」


 レイコの満面の笑顔に店員は戦慄しながらも内線を通話状態にして子機を渡した。


「もしもし♪」

「何だお前、さっきから何だか五月蝿いがお前の仕業か?」

「何、VIP室って外の様子は見れないワケ?」

「な、何言ってやがる。見れるワケがねぇだろう……」


 歯切れが悪い回答に嘘を感じたレイコはウサギに対して親指を立てて合図を出した。途端、


「わ、や、やめろッ。やめろってレイコ!!」


 相手が懇願したがもう遅い。ショベルカーのアームがゆっくりと動くと先端のショベルが思いっきり衝突してドアを破壊した。


「はい、アリガトね♪」


 ドアが破壊されて部屋にもうもうと埃と煙が立ち込める中、レイコはすぐさま部屋に入ると逃げ出そうとしていた男を捕まえると腕を素早く捻って極めると床に組み伏せた。


「アイタタタタッッ」

「捕まえたっ♪」


 相手がブルでは無いのにはガッカリしたが、部屋の様子がハッキリし始めるとレイコは思わず苦笑した。


「うわっ、趣味悪いわ」


 VIP室というのは建前で実際には監視室だった。全ての部屋の様子をリアルタイムで確認しつつ録画していた様で、これではプライバシーも何もあったもんじゃない。


「あ〜〜あ、やっちゃったわね店長さん♪」

「くそっ、何でテメェがここに来たんだよ?」

「まだ分からないワケ? 鈍いわねぇ」


 そう言うとレイコは極め方を緩める。店長が苦痛に歪みながら顔を向けると、


「よせッ、レイコッッ!!」

「さんを付けろッッ!」


 すぐさま改めて床に組み伏せる。さっきよりも強めに極めているのであと少し加重をかけると骨が折れるだろう。


「れ、レイコさん……」

「良くできましたぁ♪」


 呻き声をあげながらの店長の言葉にレイコは満面の笑みを浮かべながら笑った。


「じゃ、話して貰いましょうか? 色々とね♪」

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