精製施設へ
「おい、ここで間違いないんだな?」
「は、はい。あの錠剤はここで精製されてます」
「もし嘘なら……」
「滅相もないッス。イタチさんにそんな嘘つける度胸なんてないッスよ。」
「……ならいいや、家に帰れ。ただし、クスリには二度と関わンな。」
「は、はいっ。」
「さてと…………」
オレはザコAにフォールンの精製施設へと案内させた。時間は朝の五時。
朝日がもう少しで昇る時間だ。ン? オレが急いでるって? ああ確かに。
それには理由がある。
ザコAの話だと精製したフォールンを今夜にも流そうとしてるらしいからだ。
誰が受け取るにせよ、ロクな事にはならない。
だからさっさとフォールンの精製施設に潜入してここをぶっ壊す事にした訳だ。
黒幕が誰かはカラス兄さんにここを連絡したから、クロイヌが調べるだろう。つまり本当ならば、オレの仕事はここで終わりってこと。
とりあえず正面は流石に目立つので裏側に回り込む。入口は無い。少し考えよう。ン?
キキッ。
車が三台やって来た。車から降りてきたのは組織の連中。人数は五人。どうやら護衛らしい。最後に一人降りてくる。年は50歳程。身長は170位。どうもコイツがボスらしいな。
「おい、ブツは用意出来てるんだな?」
「はい、あとは箱に積み込んで運び出すだけです。」
ボスらしい男、腹が出てるから腹ボテにしよう。
腹ボテが護衛の一人に横柄に話し掛ける。他人が勝手に死ぬのは構わないが、店にまでとばっちりが来たらオレのなけなしの給料まで影響する。それだけは勘弁だ。
てなわけで、様子見をする。施設の周囲には人影は無い。見張りがいる気配も無い。普通なら厳重に警戒しそうな物だが、ここが組織の管理下にあるから、敢えて誰も近付かないのだろう。
ま、ンな事はオレには関係ねぇか。……それより急がないとな。
◆◆◆
一方で腹ボテは焦っていた。取引相手が時間を早めたからだ。
相手が小物なら突っぱねれば済む話だが、今回は別だ。それにどうやら組織内で裏切り者の調査が始まっている。時間はかけられない。
指揮をとるのがあの生意気な若僧クロイヌ。アイツのおかげで自分の組織内部での権益が減らされた。
そう全てアイツのせいだ。だから、フォールンを流し、資金を蓄えつつ、スラムのチンピラに与えてヤツの縄張りを荒らして、失脚させてやるつもりだった。
首尾よくアイツが失脚したら簡単だ。殺せばいい。組織内ではいつもの事だ。とにかくここを引き払えばいい。
「おい、急げ。回収したら設備は壊せ。」
腹ボテはニヤリと下卑た笑みを浮かべた。