イタチは眠い
「ふぁーあ〜」
あー眠い。
今日はまたヒドイ目にあった。
「が……ッ」
と、いつもの事だが、何でこういう日に限って仕事が入るンだろ。考え事をしつつ、目の前の相手の鳩尾に肘を叩き込む。ああ、痛そうだなぁ。
「テメェ」
「ガキがっ」
仲間はあと二人か。安いセリフを吐きながら二人共にナイフを取り出す。
「やめろよ、つまンない意地を張るなよ」
「うるせぇっ」
一人がナイフをこちらに向け水平に切りつけてきた。下手な使い方だ。
ンな小型のナイフで相手を殺すなら刺突。それは威嚇にしかならない。
「くそっ」
しかも大振りで左右に振り回すから隙だらけ。
仕方ない、少しレクチャーしようか。そう決めると相手のナイフをこちらの左手で軽く払いつつ、右手で手首をとりその左肩にナイフを突き刺す。
「う、ぎゃあ!」
呻き声をあげる相手の足を軽く払い、地面に転がす。その声に残った一人は完全に戦意を無くしたのか、ナイフを落とした。用無しなので呻く男に蹴りを一つくれてやる。メシッと肋骨の折れた音と感触。ようやく静かになった。
「さて、話をしよう」
「な、何なんだアンタ」
少しは落ち着いたみたいなのでオレは用件に入る事にした。カーゴパンツのポケットから白い錠剤を取り出す。
「これを捌いてる奴を探してる、……アンタ知らないか?」
と言いながら奴に錠剤を手渡す。奴はオレと錠剤を交互に見ながら、考えてる。どうやら当たりだ。値踏みしてるってトコだな。
「何で、アンタコレを」
「友達に貰った」
「売る気があるのか?」
「知ってるのか知らないのか答えろよ」
「……知ってる」
即座にオレは奴の鳩尾に膝蹴りを入れる。勿論ゆっくり話をする為だ。テキパキやらないと寝不足になる。寝不足はお肌に悪いしな。
◆◆◆
「う、……っ」
しばらくして目を覚ます男。うん、分かりにくいからザコAにしよう。
ザコAはゴホゴホと咳をしながら、辺りを見る。
場所は倉庫、ザコAを中心にライトが当たっている。で、オレがその正面に椅子に座っている。
「何だここは?」
「ようやくお目覚めか、こっちが寝そうだったぜ」
スマホを確認すると時間はもうすぐ三時。そりゃ欠伸もでるってもんだよ、実際。
さっさと用事を済ませよう、健康とお肌の為に。
「さて、さっきの続きをしようか」
「お、おれはあんまり詳しく知ら……」
バキッ。
言葉をいい終える前に右の裏拳をザコAの鼻先に叩き込む。
「うぎゃあ!!」
「ハイハイ、喚かない喚かない」
そういいながら同じ鼻先に右手の人差し指でデコピン。
「あぎゃあ〜」
「中途半端な嘘は要らないからさっさと話せよ。別にアンタの代わり位なら、いくらでも調達出来るんだぜ」
少し時間を空ける。勿論考えさせる為だ。二分後にザコAがポツリと呟く。
「……分かった」
「よし、じゃ話せ」
……あぁ、そういや何でこんな事をしてるのか説明がまだだったよな。キッカケはこうだ。