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イタチは笑う  作者: 足利義光
第三話
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次の攻撃

 組織の武器庫はあれからさらに二日連続で攻撃された。これで合計三ヶ所が破壊された事になる。

 三日目ともなると組織の警備も明らかに厳重になったのだが、ドラゴンには通用しなかった。

 彼等によって三つ目の武器庫は爆破され、相当数の武器、弾薬が失われた。

 死亡者は百人を超え、街中で警察や軍隊に組織の黒服までもがなりふり構わず捜索をしている。



「テイル、様子はどうだ?」


 タロンからの通信がテイルに入る。テイルが返事をする。


「奴らも必死だね、武器庫には重武装の連中がたくさん入ってる」

「了解、ファング?」

「あいよ〜、こちらも似たようなもんだ」

「了解、スケイル」

「はいよ、う〜〜ん。こっちは、軍隊も入ってるみたい」

「間違いないか?」

「うん、間違いないよ」

「了解。定時通信を切る」


 そういってタロンは双眼鏡である場所を確認する。

 そこは普段なら厳重に厳重を重ねた警備体制が敷かれるはずの場所だ。


 しかし、この三日連続の武器庫襲撃での被害で警備体制にも変更が出ている。その為に【わざわざ】武器庫を襲撃したのだから。


「こちらタロン。今夜は楽しくなるぞ」

「了解」

「よっしゃぁ」

「はいよ」


 ◆◆◆


「イタチさん、大丈夫ですか?」


 リスが思わず心配になり声をかけた。外からバーに戻って来たイタチの表情が冴えないからだ。


「…………ん? ああ、気にすんな」


 イタチからは気のない返事が返ってくる。

 リスがカウンターのいているカラスに視線を向ける。カラスは無言でグラスを磨いている。

 こちらは表情に特に変化はなく、いつも通りに見える。ただし、いつも以上に無口なのを除けばだ。


 《こんな時にオーナーがいてくれたらなぁ》


 オーナーは朝突然に


「今日はちょっと出かけるわ」


 とリスに言うとあっという間にいなくなったきり。

 イタチとカラスも謎だが、オーナーの方も謎だらけで困る。


 《何だか最近、俺が普通の人間に思えてきたな》


 と心の中で苦笑する。



「カラス兄さん、今日辺り動くかな?」


 とイタチがポツリとカラスに質問を投げる。カラスは無言でグラスを磨いていたが、十秒程して


「恐らくな、この三日は多分陽動だ」


 と返事をした。

 リスは二人が何に関わってるかは聞いてないが、三日という言葉で武器庫襲撃の件だと気付く。


 カラランと音を立て、扉が開かれる。入って来たのはクロイヌ。

 初めてクロイヌを見たリスは、その威圧感に思わず怯える。

 クロイヌはそんなリスには見向きもせずに、カウンターのカラスの前に座るとカラスはグラスを置くと、スコッチをそこに注ぐ。

 クロイヌはそれを無言で一気に飲み干す。いつの間にか出来た無言の挨拶だ。


「クロイヌの旦那、今日は朝から珍しいッスね」 

 イタチが軽口を挟み二人に割って入る。リスが本物のリスみたいに怯えるのが少し面白かった。


「……イタチ、お前は相変わらず軽いな」

「ハハッ、それが取り柄っすよ」


 クロイヌのバカにしてるのか関心してるのかよく分からない返事にまた軽口で返すイタチ。少しだけ、場の雰囲気が柔らかくなった。


「コイツ位だな、俺がクロイヌだと知っててこんな口を叩く奴は」

「だが、悪い気はしないんだろ?」


 グラスにスコッチを注ぎながらカラスもいつもより軽い口調で話す。


「ふん、ぬかせ。」


 クロイヌは今度はスコッチをゆっくりと味わうように飲む。


「あの人は今日はいないのか?」

「お嬢なら、お出掛けだ。行き先は知らん」

「そうか」

「用件は?」


 さっきとはまた違う空気をリスが感じる。イタチは床にモップ掛けしている。


 《クロイヌ、コイツが組織の幹部の一人か、思ったより若いなぁ》


 相手がクロイヌだと分かると怖いながらも、興味も湧く。

 組織の幹部はスラムの住人からすれば支配者の一人。普通に生きていればまずお目にかかれない存在だからだ。


「ドラゴンのスポンサーが分かった」

「誰だ?」

「正確には元のだがな」


 というとクロイヌは一枚の写真をカラスの前に置く。そこには老人の姿が写っていて、そしてカラスはその老人を知っていた。


「奥羽さんがスポンサーだったのか?」

「ああ、間違いない」



 ◆◆◆



「さてと、サクサク片付けてやるぜぇ」

「あまり突び出さないでよ、ボクの邪魔になるからさ」


 獰猛な笑みを浮かべるファングと虚ろな目をしたスケイルが動き出す。



 同時刻また別の場所。


「テイル、動きはあるか報告しろ」

「ないよ、今の所は」

「そうか、なら行くか」

「了解、片付けよう」



 ドラゴンが動き出す。更なる血の嵐を巻き起こす為に。


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