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イタチは笑う  作者: 足利義光
第三話
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ドラゴンスレイヤー

「時間を合わせろ」


 均整のとれた男がそう言うとまだ朝日が上がりきらない暗闇の中、ドラゴンの四人は時計の時刻を確認。時間は五時五十九分……そして六時。

 四人は時間を合わせ、そして動き出す。



「疲れたなぁ、今何時なんだ?」

「六時だ」

「あぁ、サンキ……」


 返事を返そうとした警備員がそのまま倒れる。ファングが右のナイフを心臓に突き立てていた。


「クリア」


 ナイフを抜きながら無線で短く通信する。


 それを合図にしたのか二つの人影がファングに続いて正面のゲートを越えていく。


「こちらテイル。そこからニ百メートル先に障害を発見……排除する」

 三人が視線を向けるとバッと音が立ち、警備員が倒れるのが見えた。


「テイルはこのまま監視を、我々は中に突入」

「了解」

「はいよ」

「皆殺しだぜ」


 テイル、巨漢、ファングが返答。一気に動きを早める。



 建物は組織の武器庫。警備員がおよそ三十人程。警備のシフト交代が丁度今で、殺した警備が交代する所だったのだ。

 ちなみに三人とも警備員と同じ制服をきており、巨漢を除けば一見仲間に見えるだろう。



「ファングと私がまず近付く、【スケイル】は合図を待て」

「はいよ」


 巨漢ことスケイルを残してファングと均整のとれた男が何事もないような素振りで警備員達に近付く。


 警備員達は、武器庫に入ってすぐにあるホールでは暇なのか、テーブルを囲んでポーカーをしている。人数は……ここには十人。


「入口ホールに十人。続いて通路を確認する」

「はいよ」

「チッ、さっさと殺りてぇなぁ」


 ファングと男が別れてホール先の通路を左右に別れて確認する。

 結果、それぞれ通路にそれぞれ五人いるとすぐに判る。

 武器庫となる部屋は、四つあるので、単純計算で各部屋には二人程度いる計算になる。


「よし、スケイルは暴れろ。ファングはいつも通りに切り裂け」

「はいよ、準備する」

「やっとかよォ……へ」


 スケイルがゆっくりとホールに入ると通路の前に立つ。警備員達は一瞬何してるんだと思う、だがすぐに気付く。

 あんな体格の同僚がいないと。

 そしてその一瞬でスケイルには十分だった。

 両肩に担いでいたショルダーバッグをそれぞれクルリと反転させるとそこから凄まじい轟音と閃光が上がった。あっという間に警備員達が血塗れになっていく。

 スケイルのショルダーバッグからマシンガンがそれぞれその姿を現わす。

 二丁のマシンガンは圧倒的で一方的な殺戮をもたらす。


 突然のマシンガンの轟音に通路にいた五人がすぐさま動く。右側にはファングが五人に走り近付く。


「や、ヤバイぜ」

「何があった?」

「死人だらけになってる、ヤバイぞ」

「ホールが?」

「ここもだよ」


 言うや否やファングが右手を一閃。バッと血飛沫が飛ぶ。


「オラオラぁ、かかって来いよォッッ!!」


 右側の通路にいた五人が血飛沫をあげて倒れるまで、およそ三秒程。


「通路は完了」


 そこに立つのはファング(牙)を二本持つ獰猛な野獣。その恍惚とした表情は人間らしさからはおおよそかけ離れていた。



 一方、左側の通路での同時間。こちらは、男がファングと同じく逃げてきて、襲撃を伝える。


「くそっ」

「急ぐぞ」


 慌てて走り出す警備員達を背後から無造作にベレッタの二丁拳銃で撃ち殺していく。


「左側、完了。」


 男が淡々と言うと、ファングが、


「まだまだ喰い足りねぇよ」


 と通信が入る。


「テイル、様子はどうだ?」

「こちらテイル、まだお客さまはいないよ。」


 と言いつつ、ホールから逃げて来た警備員を正確にライフルで射殺。テイルにとっては、何て事のない殺しなので敢えて報告はしない。


「そろそろフィニッシュといこう」


 スケイルからの催促に均整のとれた男が応える。


「もうここには特に用はない、私が【伝言板】を用意するからあとは好きにしろ」


 この言葉を待っていたようにファングとスケイルが動き出す。

 普段は何を考えているのか不明なスケイルもこの時だけは感情が剥き出しになる。

 武器が納められた部屋は、全て電子鍵がかかっている。警備員達の誰かが鍵を持っているかもだが、彼等はそんな事は気にしない。

 スケイルのマシンガンが火を吹く。パララララララッと弾丸が落ちる度に中から悲鳴と絶叫が上がる。

 あっという間に左側の部屋にいた全員が血祭りになる。


「おいスケイル、テメェ右側には手を出すな」

「仕方ないじゃないか、ボクのマシンガン達がおさまらないんだ」

「スケイル、私の伝言板が無くなったから、右側は鍵だけにしてくれ」


 興奮しているスケイルも男の声に冷静さを取り戻す。右側の通路に入ると、今度はマシンガンで鍵だけを破壊する。

 すかさずファングが扉を蹴り破って部屋に乱入する。

 怯えている二人の警備員に襲いかかる様はさながら肉食獣が獲物に牙を突き立てているかのようだ。

 男が一番端にある部屋の扉を開けようとしてふと手を止める。

 スケイルに視線を送るとスケイルが部屋の前に立ち、扉を開ける……。

 途端に銃撃がスケイルに浴びせられた。部屋にいた警備員二人が反撃したのだ。

 スケイルが盾になった為に無傷の男が飛び出すと両手のベレッタの引き金を引く。弾丸は一人の頭を撃ち抜き、あと一人の両手を正確に打ち抜く。


「スケイル」

「あぁ平気。五発貰ったよ」


 何事も無いようにスケイルは平然とした顔で言う。


「や、やめろッ」


 両手を撃ち抜かれた警備員が懇願する。


「安心しろ。お前は殺さない、伝言板だからな」

「え?」

「【ドラゴン】はお前らを皆殺しにすると伝えろ」


 それだけ言うと顔面に蹴りを入れて気絶させる。スケイルが警備員を軽々と運ぶ。


「撤収する」


 男の言葉でファングが部屋から出てくる。部屋にいた警備員達は、部屋中を赤く染め上げて絶命していた。


 スケイルとファングがホールを抜けるのを確認して男がポケットから手榴弾を二つ、左右の部屋に投げ入れると走り出す。建物を出て二秒後には武器庫から轟音と共に爆発が起きる。



 ◆◆◆



「一方的ですね」


 イタチが見た感想をカラスに言う。


「これが【ドラゴン】のやり方だ。さっさと排除しないと毎日こうなる」


 毎日というカラスの言葉にイタチが嫌な顔をする。毎日毎日、こう朝からあちこち行くのは億劫だからだ。

「え〜〜と、カラス兄さん、ドラゴンのメンツの名前まだ聞いてないッス」

 イタチが強引に話を切り替える。


「テイル、スケイル、ファング、最後にタロン。こいつがリーダーだ」

「尻尾に鱗に牙に爪ですか」

「……コイツらはいつもの連中とは訳が違う。今回は俺も仕事をする。さっさと片付けるぞ」


 そういうカラスの口調と表情はいつもより厳しい。

「あいつら倒したら、竜殺し、ドラゴンスレイヤーって奴かぁ。カッコいいかも」


 冗談めかしてはいるがイタチもその表情は真剣だった。

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