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イタチは笑う  作者: 足利義光
第三話
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カラスとクロイヌ

「ひどい有り様だな」

「そうだな」


 【ドラゴン】の襲撃が伝わって四時間後、建物には様々な人々が集まっていた。

 警察と軍隊は互いに捜査権を譲るつもりはなくにらみ合いが起きている。その一方で組織の連中も来ている。事態に無関係の一般人は野次馬としてこの惨状を見ている。

 そんな中で建物に二人の男。一人は全身黒で統一した男。

 もう一人は身長は2メートル近い大男、体重は100キロ程あり、プロレスラーのような体格だ。【クロイヌ】と【カラス】の二人だ。


「一人は生かして伝言板代わりに。その際おまけに両手を撃ち抜くのも奴の手口だ」

「……ドラゴン、確か四人組の殺し屋チームだったな」

 クロイヌが葉巻を出したのでカラスがライターに火をつけ差し出す。ハァーという息と煙が上がる。


「ああそれで合ってる。元々は軍隊にいた奴がリーダーをしていてな、こうアッサリ全滅したのはソイツがこの区域を熟知しているからだ」

「これも【例の連中】が絡んでるのか?」


 カラスもポケットから煙草を取り出す、今度はクロイヌがシュボッとライターで煙草に火をつける。


「……可能性はある。奴らの実態は分からない、組織の情報網でもな」

「派手に始めたんだ、これから荒れるぞ」

「だから、お前に依頼する。ドラゴンを排除してくれ」

「イタチには頼まないのか?」

「……必要なら使えばいい」



 二人は沈黙した。空気が重いからではない。

 《感じる》からだ。誰かが見ている。

 刺さるような殺気混じりの視線をハッキリと感じる。


「見られてるな」


 とクロイヌ。


「お前の恋人か?」


 皮肉混じりにカラス。


「心当たりがありすぎて誰かわからん」


 普段なら言わない冗談がクロイヌの口から出た事にカラスは驚いた。無論、表情に出さずにだが。


「とりあえず、挨拶ぐらいこちらもしないとな」


 カラスが落ちている小石を何気無く拾うと視線の方角に不意に投げつけた。


 程なくしてバリッとガラスにヒビが入る音がわずかにした。


 視線が消えたのを確認して二人は建物から何事も無く悠々と出ていく。


 ◆◆◆


「……だからやめとけばよかったんだ」

「うるせぇっ、暇な時間をどうしようとオレの勝手だろが!!」


 カラスとクロイヌのいた建物から少し離れたビルの屋上から階段を使い下りる人影。神経質そうな痩身と短気そうな小男の二人だ。

 最初、監視していたのは痩身だったが、途中で小男が


「変われ」


 と強引に双眼鏡を奪い監視を続けたのだが、殺気が抑えられずに二人に察知され、双眼鏡は壊され、今に至る。


「君には忍耐強さが足りないよ、【ファング】。そんなんだから、いつも怪我をするんだ」


 自分の双眼鏡を壊されたので嫌味を飛ばす痩身。小男つまりファングと呼ばれた男は、露骨に


「チッ」


 と舌打ちする。


 もうすぐ外という所で、ファングが痩身の肩を掴み歩みを止める。

 首をクイッと動か、し振り返る痩身に合図をする。

 ファングはおもむろにジャケットの内ポケットからナイフを二本取り出すと歩き出す。そして外に出る瞬間、ナイフを左右に突き出す。

 その途端に、


「がっ」

「あ」 


 小さく呻き声をあげる二人の黒服。二人共に一撃でナイフが喉を貫いていてほぼ即死。


「そういうテメェは相変わらず反応が遅ぇよな、【テイル】」


 ナイフを引き抜きながらファングが獰猛な笑みを浮かべる。


 そこに残されたのは、組織の黒服の変わり果てた姿だけだった。

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