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イタチは笑う  作者: 足利義光
第三話
18/154

イタチはだらける

毎回、こんな感じの話を一回入れていくつもりです♪

日常って大切です

Σ(´□`;)

「あ〜〜〜〜だるぅ」


 オレは開口一番にぼやいた。ぼやくのも仕方ない。あまりに暇でおまけに眠いからだ。


 理由はいくつも思い付く、うん、即座に。


「まず、夜に働き過ぎていて体調不良気味。で次は深夜に【バイト】ある日も普通にバーで働いてるから過労気味だろぉ。で、毎度毎度とカラス兄さんとの手合わせは散々で身体中が痛いしさ、オーナー、いやあの【魔神】には無茶ぶられて……」

「ちょっとイタチさん、ブツブツ独り言ばかり言わないで掃除手伝って下さいよ〜〜。それと最初の二つ、意味同じですよ」


 そう。いつの間にかバーに居着いて働いてるコイツ、【リス】が思いの外仕事が出来やがる。

 要領がいいから仕事がスイスイはかどるし、こりゃいいや♪ とか最初は思ったさ、いやマジで。

 でもな、冷静に考えたら、オレの仕事減る=暇になる。で、暇だから眠くなると。な? リスが真面目過ぎるんだよ。だから、まぁ……眠い訳で………………。


 ◆◆◆


 バーカウンターに突っ伏して寝てるイタチを尻目にリスは働く。キュッキュッとグラスを磨いて、床はモップがけ。とにかくやる事一つ一つに手を抜かない。その表情は真剣そのもの。


 やがて一時間。店内は見事に綺麗になった。もっともイタチの寝てる付近以外はだが。イタチはスースーと寝息を立てている。そんな様子を見ながら思うのは……。


 《イタチさんは、いつもお疲れだ。理由は簡単で、バーの営業が終わってからスラムで【仕事】をしているから》


 リスはこっそりイタチについていった事がある。もっとも、ついてきてる事はバレバレだったらしく、後程激しく怒られた訳だが…………。


 ◆◆◆


 それはある夜の事。バーの営業時間が終わるとイタチはすぐに店を出ていく。リスはそれに本人としてはこっそりついていく。(ちなみにリスの尾行だが、カラス曰く、まぁまぁらしい。一般人なら気付かない。プロなら気付く位だそうだ)


 バーのある第零区域とも第十区域とも呼ばれる区域スラムは他の区域と比べると狭い。立地的には第三区域と第七、第六、第九と四つもの区域に囲まれたごくごく狭い区域。

 元々第十区域は塔の街の前身だったある県の県庁所在地があった場所を含む繁華街だったのだが、塔の街が成立してしばらく後に起きた大戦、そして政府が機能を失い、やがて組織が支配者となるとその支配に反発する連中の溜まり場となる。

 組織は何度か圧力を掛けたが屈せずに、いつしか皮肉を込めて【第零区域】とも呼ばれるようになった。


 イタチがしばらく繁華街を歩くと雑居ビルに入る。そこは法律事務所となってはいるが実際には組織の管理下のビルだ。

 リスも入ろうとするが、いかにもな護衛がエレベーター前に二人立っており、挫折しか他なかった。


 待つことおよそ十分程。イタチがビルから出てきた。

 するとイタチはツカツカとリスに近寄るや否やで即座に拳骨をかます。

「つうっ、…………」

 リスは頭にジーンと衝撃が残り頭を抱える。


「バレバレな尾行だぞ」

「え、と。バレバレでした?」

「まぁ、シロウトには通用するかなぁ」

「気を付けます。……でここは何ですか? ヤバそうな感じですが」

「ここか。まぁ、歩くか……来いよ」


 イタチがクイッと首を動かし、移動を促す。

 繁華街は深夜も明るい。たくさんの人が通りを歩き、光の中に入っていく。

 イタチはこの辺りではかなり有名人のようで、娼婦らしき女性達にはしきりに誘われて、その度に断ったり、逃げたり、またあちこちの店の用心棒やチンピラからは恐れられているらしく、相手は目があうと視線を反らしたり逃げ出したりしている。


 さらにしばらく歩いて裏通りに入る。さりげなく周りに人がいないのを確認するとイタチは話を始めた。


「さてと、さっきのビルはだな、まぁ【組織】の出先機関だな」

「……はい?」

「だから、【組織】の管理下にあるビルだ」

「…………え〜〜とすいません。【組織】ってあの【塔の組織】で合ってます?」

「合ってるよ。あそこは【クロイヌ】の城だ」

「【クロイヌ】って組織の幹部でしょ? 何でそんな大物と」

「クロイヌが【依頼主】だからだ。今からやるバイトのな」

「オレ、帰ります」

「そうだなぁ、でも悪いが無理だわ」


 イタチがリスに目配りすると周囲に視線を飛ばす。すると暗闇から人が現れる。人数は二人。明らかに敵意を向けており、既にナイフを抜いている。


「イタチ、てめえ何の用だ?」

「は、分かってンだろ?」

「何の事かわからんな」

「お前ら、最近好き放題してるらしいな」

「オレらのシマだぜ。文句ないだろが」


 二人組が襲いかかってくる。問答無用らしい。


 二人組は一人が背が低く、もう一人が高い。それぞれ一六〇、一八〇位だろうか。ちなみにイタチに敵意剥き出しの言葉を投げたのは背の低い方だ。

 イタチはやれやれと肩をすくめると二人組に迷わず向かう。

 まず、背の高い方の左足を右足で踏みつけながら左手はナイフを払いのけつつ、狙いを反らす。腰を回転して右肘で顎を打ち抜くと身を反転させ背の低い方に向く。

 背の低い男はイタチの腹部を狙いナイフを突き出す。対してイタチは左足を斜め前に踏み込み、狙いを反らしつつ右足で鳩尾を蹴る。思わず相手が体をくの字に曲げると素早く足を払い倒し、ナイフを持つ手を踏みつけて使えなくする。ワンテンポ遅れて背の高い奴がバタンとアスファルトに沈む。



「やれやれ、手間をかけるなよなぁ」


 欠伸をするイタチに緊張感はない。リスはよく分からない内に終わった一方的な戦い? に呆気にとられてる。

 相手はその辺りの不良では無く、二人とも決して弱くは無かった。それをほんの数秒で終わらせたイタチにただ驚いた。

 イタチは続けて起き上がろうとした背の高い奴右の掌底を顎に喰らわせる。その光景に残された背の低い男は、心底怯えたのか急に態度が変わった。


「わ、分かった」

「何がだ? ハッキリ言ってくれ」

「か、金なら返すよ」

「……誰に?」


 イタチの目付きが鋭くなる。返答しだいではという雰囲気だ。


「も、勿論、皆だ。踏み倒した金全部払うよ」


 財布を差し出す小男。


「オレじゃねぇよな。お前が払え、自分でな」


 そう言うとイタチが背の低い男を無理矢理起こすと引きずるように連れていく。


「リス。そのデカブツが起きないようにしとけ」

「え?」

「頼んだぞ」



 ◆◆◆



 俺が後で聞いた話だとあの二人組は区域内のあちこちで食事代を払わなかったり、窃盗を繰り返していたらしい。取り立てようにもナイフで切りつけられたりしたらしく手が出せなかったので被害者達が【クロイヌ】に苦情を出した所、イタチさんに【バイト】が入ったそうだ。

 あの二人組がイタチさんを知っていたのは以前にいた区域で自分達がいたチームが潰されたかららしい。

 結局、全部の店に踏み倒した金を払わせ、どうしても返せない分は働かせる事で話はついたそうで、二人組は荷物運びなどをしていた。ってこんな感じだ。戻って来たのは朝の六時だった。で、今に至る。


「これだけなら、カッコいいんだけどなぁ……」


 ため息混じりにリスはチラリとイタチを見る。相変わらずカウンターに突っ伏して寝ているイタチに格好よさなど皆無だった。


 これから三〇分後にイタチはぶっ飛ばされた。

 カラスに叩き起こされ、オーナーに軽々と投げ飛ばされた後に、一人で営業後の片付けを一週間やらされた。


「よく分からないなぁ、あの人……ホント」


 彼は思わず苦笑する。

 これがリスの今の本音だ。

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