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イタチは笑う  作者: 足利義光
第二話
13/154

仕事と私事にリス

「…………ていう訳です。酷い有り様でした」

「……ひでぇなそりゃ」


 しばらくの間を置いてオレは一言だけ呟くように小さな声で言った。


 コータから昨日頼まれた事を、つまり集落で何が起きたかをオレは今、バーで聞いている。バーに呼んだのには理由がある。

 オレが【仕事】をする場合のルールの一つにカラス兄さんに了承を得るというものがある。


 理由は単純でオレはカラス兄さんのいわば【代理】だからだ。ついでにまだ仮免許扱いでもある為、手っ取り早くカラス兄さんにも同席してもらってる訳だ。でカラス兄さんは、って?


 あのお方は、ひたすら無言でグラスを磨くように拭いている。まるで宝石を磨くように一つ一つ丁寧にだ。この仕草をしている時、カラス兄さんは大抵激怒している。それを抑える為にグラス拭きという作業に没頭する訳だ。


 オレとコータはしばらく待つ。カラス兄さんの言葉を。オレはもう【殺る】と決めている。仮にカラス兄さんが止めてもだ。そして、しばらく時間がたち……。



「イタチ、殺気が滲み出てるぞ。……もう少し冷静になれ」

「……殺っていいンすね。ま、止めても殺りますけど、オレは」

「別に止めたりしないさ。クズにはクズらしい末路がある事をお前が教えてやればいい」


 許可が下りた。なら迷う必要はもうない。


「あの、イタチさんにカラスさんでしたよね?」

「そうだ。お前は確かコータとか言ったな」

「はい。お二人は、掃除屋なんですよね?」

「まぁ、オレはまだ仮免許だけど」

「プロに払うお金は多分あいつらには無いですよ。いいんですか?」

「コータ、一つだけ言うぜ、今回は仕事じゃない。【私事】だ。ですよねカラス兄さん」

「あぁ、ソイツが勝手に殺ることだから、問題ない。今からソイツは私事で外に出るだけだ。早く片付けてこい。お嬢にはオレが説明しとく」

「誰が誰に説明するって? カラス」

「お嬢、聞いてたんですか?」


 オーナーがいつの間にか店に降りてきていた。オーナーはそのままカウンター席に座るとゆっくりとこちらに振り向く。


「コータ君だよね?」

「はい、初めまして。貴女がイタチさんの雇い主さんですね」



 コータをオーナーがゆっくりと見る。品定めしているのが分かる。見るのが終わると、今度はコータに質問を始めた。


 質問は簡単で、何処に住んでいるかだとか、今は何して生計立ててるとか、オレにいつ掃除屋の事を聞いたのか? とかだ。ちなみにオレは掃除屋の話は勿論していない。


 コータはその質問に対しては、自分が第六区域ではそこそこ顔が利くからバーの掃除屋の事は以前から知っていた事、そして最後の質問に対しては、自分はもう以前みたいな悪さをするのは嫌だと言い切ったのが印象的だった。


 オーナーはニヤリ、と満足げに笑うとすぐに話を切り出した。



「アナタ、ウチで働く気はない?」

「オーナー、本気ですか?」

「イタチ君がしょっちゅう【外回り】に行くから人手が欲しいのよね。カラス【人手】、欲しくない? 第六区域からの仕入れ担当欲しかったでしょ。彼なら地元だから丁度いいと思うのよ。どうイタチ君? どうコータ君?」



 オレには異存はない。そもそもオレもまたコイツを気に入ったから。後はコータ次第だ。オレはコータに向かって頷いた。


「お、俺……有難うございますっ」


 このバーに新しい従業員が誕生した瞬間だ。となれば恒例の儀式。


「じゃ、コータ君、キミは今からリスで。」

「へ? リス??」

「うちのお約束なのよ。イタチ君も私が名付けたの。ね?」

「……そういう事だ」

「柄にもなく先輩風を吹かせるな。全く似合わん」

「か、カラス兄さン、いいじゃないっすかぁ」


 くだけた空気に皆が笑う。さっきまでの殺伐とした空気が変わった。


「さてと、ヨロシクなリス」


 オレはコータ、いやリスに新しい仲間に手を差し出す。

「は、ハイッ。ヨロシクお願い致します」

 リスはオレの差し出した手を両手で握る。


「イタチ、良かったな。これでお前が死んでも店は回る」

「ちょ、冗談キツいっすよ。」


 再び、店内に笑い声がこだまする。丁度よくリラックス出来た。さてと、そろそろ行くか。


 オレは、バーを出ると店の裏の倉庫からバイクを引っ張り出す。


 コイツはオレが【仕事】をする際に用いる大事な友達だ。手入れもきちんとしているから、エンジンは一発で掛かる。


 サイレンサーを着けているので無駄な音があまり立たない。静かなのはこの仕事で大事な点だ。


 オレはバイクに跨がると走り出す。標的を掃除する為に。


 時間はもうすぐ夜の六時。夜が世界を包み込む。オレの【掃除】の時間だ。

 コータことリスについての説明。


 年齢は一九歳。身長は一六四センチで体重は五二キロ。


 元々は第六区域でもそれなりのワル(不良)だったが、イタチにやられて改心し、今に至る。


 性格は真面目で何気に好青年になってます(周囲と比べて)


 非常識人だらけのバーの中で一番まともだったりします。


 服装は明るめ。黄色とか赤が好き。


 こんなんですがヨロシクです。

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