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イタチは笑う  作者: 足利義光
第二話
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フリマと巨大違法建築物について

「はぁ…………コレはヤバイ。マジにヤバイぞ」


 思わずため息をするオレ。目の前にそびえ立つ巨大なタワーがその原因だ。

 タワーの正体は、オーナーがとてつもない速度で買い集めた雑貨の数々。


「あの、オーナー……」

「何? イタチ君」

「これは本気ですか?」

「へ? 何言ってんのよ、当たり前じゃない。じゃ、まだ見たいものあるから〜〜」

「……殺される、こんなの持って帰ったら殺される、オレだけが確実に」


 ここでこのタワーの構造を説明しよう。

 まず一番大事な土台は大量のお皿が入った箱。

うん、まぁこれはいいか。

 次に伸びるは多数のグラスの入った箱。うむ、これもまぁいいか。

 で、大量のレコード盤の入った箱。主にジャズ。うん、これはオレが好きだからよし。

 で、展望台の様なレコード盤が詰まった箱の上の超高層部分に入る。

 花瓶だ。それもスッゴクデカイ。こ、これは、確かにバーに無かった物だ。一応インテリアも考えてるみたいだ。ただしデカイ。それを二つ。左右対称に。うー。カラス兄さんにメールしよ。


「かびん。虚かする、」


 即座に返信が来た。相変わらずカラス兄さんはメールをきちんと送れない。いい加減送信内容をきちんと確認して欲しい。


 そして、だ。

 最後にタワーの最上階にあるは、オーナーの趣味の雑貨の数々。何とも形容し難いラインナップだ。ファンシーなものから海外の変な御守りまであるわあるわ。これは、いらん。しかし、外したらオーナーにこの場で処刑されかねん。



 ……アカン、何一つ返品できへン。どないせいっちゅうンだコレ。


 頭を抱えて悶絶しそうなオレ。

 と、突然強風がフリマ会場を襲った。その強風は建築基準を大きく下回るタワーの高層部分を直撃し、花瓶がグラリと傾く。や、ヤバイ。

 とっさに両手で花瓶を支える、そこへ雑貨を詰めた箱がオレにトドメを指すべく落下してきた。


「う、き、ギツいっ」


 オレが自分から倒れ込む事で違法建築物を地面に豪快にダイブさせずに済ませた。勿論、花瓶は両手を思いきり伸ばし、セーフだ。しかし、ここで新たな問題発生。


 そう……起き上がれない。

この姿勢では起き上がれない。両手はピン、と伸ばし切り、胸には雑貨の箱、コイツが何気に重く、まるで鉄アレイのような重量感。

 さらにオレにダメージを与えるのは、近くの人々から向けられる好奇の視線と、ヒソヒソとした言葉の刃。


「何あれ?」

「バカだなぁ、あの人」

「駄目よ。あっち見ちゃいけません」


 や、やめれ。蔑むような視線と言葉の数々はオレのガラス細工のように繊細な心を容赦なく傷付ける。

 ……コータの奴をここに呼べば良かった。食材の買い出しを頼まずに。

オレは久々に後悔した。


「よいしょっと」


 不意に花瓶が持ち上がる。上を見上げるとオーナーがいた。


「イタチ君」

「はい……」

「帰りますかぁ」

「…………はい……」


 オレは屈した。二重の意味で。まずオーナーに。次に総重量は四〇キロにもなるタワーに。


 コータにはバーまで食材を運んでもらい、オレは皿とグラスとレコードの入った箱。オーナーはあのデカイ花瓶二つと雑貨の箱を鼻唄混じりに運ぶ。

 あの細身になぜあの怪力。女性に重いものを持たせるとは何事か、とか思った奴に言おう、あの御仁は美女の皮をかぶった魔神なのだと。


 あ。勿論バーに戻ったオレはカラス兄さんに怒られました。買わせすぎだと。


 フリマ恐るべし。もう嫌だ……マジに。

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