これが歴史の真実!? 勇者御一行について
歴史の真実、とは。
見える? あの町が、私が務める神殿がある町。いつも汽車で行くけど、あそこに私の務め先があって、そして、始まりの歴史がある。
あるよね、勇者御一行の銅像。
立派に立ってるよね。
たくましく、勇気のあった、しょうじ、いや、少年、勇者。
異世界の知識が豊富で、色々と凄い物をこの世界にもたらしてくれた、少女、魔法使い。
そして、医療の偉人になった、少年、ヒーラー。
異世界から召喚された3人が、魔王を倒し、そして、この世界を平和にした。
おばあちゃんの私は、その3人のそばにいつもいた。
歴史を残すため、3人の勇姿を正しく、正しく、伝えるため。
巫女として。まあ、今も巫女なんだけど。
…。
誰も聞いてないね。
あなたには、知っておいて欲しい。
歴史の真実について。
汽車が着くまでの、短いお話。
「これより、勇者たちを召喚する」
大体70年くらい前の話。
私は新人の巫女で、まだ18歳だった。
「魔王を倒し、そして、この世界を平和にしてくれる3人」
今は亡き王様は、真面目に言った。
「皆の者、心の用意はいいか!」
兵士たちも、魔法使いたちも、そして、私も、真剣にうなずいた。
昔、魔王がいて、魔物たちもいた。
人類は、世界を平和にするために、それらと戦っていた。
けど、それらは身体能力が高く、速く、重く、かたかった。
それらの王、魔王。それと互角に戦える、そんな夢のような人たちを今から召喚する。
私は、ワクワクしていたし、ドキドキもしていた。
召喚は始まった。
魔法使いたちは呪文を唱える。
床には模様が現れる。
私は唾をのむ。
そして、
「召喚は成功した…!」
目から感動の涙を流しながら、王様は口にした。
伝えられている、勇者。
少年で、勇気があり、たくましかった。
けど、本当は。
「アタシのエロ本がー!」
うん。
少女で、変態な人、奴だったの。
嘘だよ、って?
そうだね、私が書いた物には、少女の勇者は現れない。だから、嘘と思っても仕方ない。
勇者は少年であるべきだ、とは思わない。私はね。
けどね、なんか王様が目を丸くしてたから、「あっ、なんか失敗したな」て、そこにいた皆が察したの。空気を察したの。魔法使いたちは堂々としていたけど、冷や汗ダラダラだっただろうね。
だから。
そして、魔法使い。
知識豊富、色々な物をもたらしてくれた。
それは、真実。あの子がいなかったら、コーヒーはなかった。ありがたいね。
けど、
「…ヒッ」
召喚された途端、どこかに魔法で消えるくらい、怖がりな少女だったの。
インキャ、とか、なんとか。
召喚されたら、すぐに魔法使いたちとの魔法を使った追いかけっこが始まった。魔王と互角だったから、長い追いかけっこになったよ。結局はその子が飽きて捕まったけど。
そして、3人目。医療の偉人、ヒーラー。
「あーあ。
解剖したい」
また、皆察したね。「あっ、ヤバい奴召喚したなっ」て。王様はまた目を丸くしてるし、魔法使いたちも冷や汗ダラダラだっただろうね、追いかけっこでそこにはいなかったけど、もしいたら。
ヒーラーは少年だったよ。そこは失敗しなかったらしい。
「異世界転移かよっ、どうせ帰れるならやりたい放題じゃねえかっ」
と、勇者。
「異世界人か。こりゃ、リアル理科の実験だな。オレらは召喚されたんだから何でも許されるよな、な?」
と、ヒーラー。
「帰りたい…、帰れないなら図書室に引きこもりたい…」
と、捕まった魔法使い。
巫女の私は思った。
え…、コイツらと一緒に冒険しないといけないの?
て。
私は3人のそばにいつもいて、その活躍を記し、歴史を伝える。そんな役目があったから。
まあ、召喚された時点で、捏造は始まっていたんだけどね。
もう70年くらい前だから、その嘘の歴史が正しいって完全に思われてるけどね。
国の…歴史だからさ。
滅茶苦茶な歴史にする訳には、いかないじゃない?
あっ、鈴が鳴った。
もうすぐ着くよ、何か落としたものはない?
今日の話は、ここまで。
うん?
じゃあ、メドゥーサを倒したり、大量のゴブリンたちを倒したり、村の瘴気を浄化したり、魔王と激しく熱く戦って勝った話は、実際はどうだったのかって?
また、明日も、あなたには話すから。
私も、あいつ等のクソっぷりを誰かに伝えて残さないと、気が収まらないし。ね?
本当に。
でも、おばあちゃん、あることには感謝してるの。
飲めば眠気がなくなり、24時間働ける『コーヒー』を教えてくれたこと、それだけには、感謝してる。
…ふう。
今朝も飲んだ、これで24時間働ける。
さ、おりるよ。
ありがとうございました!




