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拳に火を灯せ


あれから数時間ほど経った。


「……はっ!」


レングの手から火の玉が発射され、無事的に命中した。


「その調子だ。火魔法の純度が高くなってきている。……今日はこの辺りにしておく。明日またここに来い」


「分かりました!今日はありがとうございました!」



────


「……ふう」


いやしかし驚いたな。固有魔法と汎用魔法を同時に持っているなんて聞いたことがない。火魔法の方はあのままいけばすぐ使えるようになるだろう。問題はもう一つ、固有魔法の方だ。……あれは恐らく身体強化の魔法だ。自覚せずとも身体は常に魔力が無理のない速さで循環している。他の魔法なら不可能だが、身体強化の魔法なら、呼吸をしているだけでも微弱だが発動し続けているだろう。さらに、身体強化の魔法は己の外に放出することが無い。それによって失われる魔力もそう多くないだろう。


「これほどの人材が何故……。いや、両親は既に亡くなっているのか。今日生きるのに精一杯で、自分の才能に気がついていない……か」


とことん才能以外恵まれていないな。……しばらく基礎を鍛えたら、学校へ預けるか。切磋琢磨できるヤツは、強くなるために必要だ。


順調に強くなれば、ワタシを超えるだろう。…………それは悔しいな、ワタシも強くならないと。



────



「今日もよろしくお願いします!」


「ああ」


「今日は何をするんですか?」


「昨日と変わらない、火魔法の純度を上げていく」


「分かりました!」


「地道な反復は苦痛だろうが、強くなるのに近道など無い。耐えろよ」


「上等ですよ!」


こうして、今日も修行が始まった。ワタシはその間、魔力の速度をだんだんと速くし、修行がてら、クリスタルで家の裏に机や椅子を作った。


数日の間、そのような修行が続いた。ちなみにワタシは、魔導具の在庫を増やしたり、机や椅子を豪華にしていた。



────



「そろそろ慣れてきただろ、魔物討伐に行くか」


「はい!」


できれば簡単なのにしておくか……。ゴブリンなんかがちょうどいい。


「あぁそうだ、固有魔法についてはこの討伐が終わったら色々教えてやる」


「本当ですか!ありがとうございます!」



────



「今日の討伐依頼は近くのゴブリン討伐だ。危なくなったら助けてやるが、基本は自分でやれよ。数も少ないからな」


「分かりました!」


そんな会話をして、少し歩いていくと


「あそこにゴブリンがいるだろ。見えるか?」


「はい!見えます!」


「……流石にもう少し静かに返事しろ。んで、万が一なんてあってはいけないから、相手がどんなに弱くても、使える手は全部使っていけよ」


「例えば…今は気付かれていないので、奇襲を仕掛ける、ですか?」


「ああ、上出来だ。ワタシは手助けができる位置で待機しているから、安心して行ってこい」


「分かりました…!」


そう言って、レングがゴブリンの後ろの草むらまでゆっくり移動する。


位置に着いたレングが火魔法を準備し始める。


「はあっ!」


気を抜いているゴブリンに火の玉をぶつける。急襲で焦っている隙を狙ってレングが近づく。


あぁ、そういえば一つだけ戦い方を教えたな。固有魔法が身体強化なことも相まってこの戦い方が合っているだろうと思っていたが、想像以上だな。


そう思うヴァエルの目に映るのは、己の拳に火を灯してゴブリンを難なく倒していくレングの姿だった。



────



「思った以上だ。初めてでここまで動けるヤツは珍しい」


「光栄です!」


「約束通り、ギルドに報告した後、お前の固有魔法について教えよう」



────



「結論から言うと、お前の固有魔法は身体強化の魔法だ。人より身体が強いってのは自覚してるだろ?それはお前の魔法によるものだ」


「身体強化…」


「火魔法の魔力自体はある程度分かるようになったはずだ。今度は自分の身体にあるもう一つの魔力を使う修行だ。やれるな?」


「はい!」



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