初めての弟子
「俺の名前は、レング・ウォートです」
「そうか、分かった。ギルドへの報告なんかはワタシがやっておく。帰ってろ」
「あ、えっと…お名前はなんて言うんですか?」
「ヴァエルだ」
「ヴァエルさん!俺の……俺の師匠になってくれませんか!」
「…あいにくだが、弟子は取っていない。悪いが他を当たってくれ」
そうして、ヴァエルは去ろうとするが
「…待ってください。俺、強くなりたいんです。我儘なお願いだとは思ってるんです。でも、どうしても強くなりたいんです」
「……そうか、じゃあなぜ強くなりたいんだ?」
「生きていくために、です。俺は体が頑丈なことくらいしか取り柄が無いから、せめて強くならないと金も稼げない、だから…」
「……」
「駄目でしょうか…」
「…………いや、分かった。少しなら面倒を見てやる」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「礼はある程度強くなってから言ってくれ。じゃあ、着いてこい」
「はい!!」
「ところで、お前魔導具はどうした」
「なんですか?それ」
「……」
ワタシはとんでもないヤツを弟子に取ったのか?蜘蛛に捕まっている時から魔導具を持っていないとは思っていたが、戦っている最中に無くした、などではなく知らない……か。ううむ…。
「まぁいい、一から説明してやる」
「ありがとうございます!お願いします!」
「まず、魔導具とは人が魔法を使うための武器だ。剣でも弓でもなんでもいい。その魔導具と接続して、初めて魔法が使えるようになる。魔物や魔族じゃないと何も無しで魔法は使えない」
「ヴァエルさんの魔導具はなんですか?」
「ワタシはこの義手と義眼だ」
「一見武器に見えないものでも魔導具なんですね」
「ああ。それと、魔導具を知らないということは、自分に適した魔法なんかも知らないわけだな?」
「…はい」
「じゃあ、ワタシが見てやる」
「そんなことができるんですか?」
「この義眼は少々特殊でな」
ヴァエルの義眼がレングの魔法を映す。
これは……火、か?いや、他にも…。
「………」
「どうですか?」
「お前は少し特別らしい。とりあえず、その魔法を使えるようにするには、魔導書が必要だ。本来は魔法学校へ行かないといけないんだが、たまたまワタシはその魔導書を持っている。ギルドへの報告を終えたら、ワタシの店に行こう」
「はい!…店を経営しているんですか?」
「魔導具を売る店だ。お前の魔導具も見繕ってやる」
「何から何まで、本当にありがとうございます!」
────
「お邪魔します…」
「えぇー……どこにあったかな…」
確かこの辺に片付けたんだが…
「お、あったあった。この魔導書の……ここだな」
「俺は何をすればいいですか?」
「ここに手をかざせ」
「それだけでいいんですか?」
「元々人しか覚えられないように作られているから、覚える工程を簡単にしたって問題が無い。ほら、さっさとやりな」
「はい!」
レングが魔導書に手をかざす。魔導書から赤色のような光が発せられる。その光が、レングの手へと収束していく。
「これで終わりだ」
「使えるようになったんですか?」
「ああ、家の裏に行くぞ。そこで試しに使ってみろ」
「分かりました!」
「それと、魔導具は何が良い。剣でも杖でも、なんでもある」
「えっと、これがいいです」
そう言ってレングは、篭手型の魔導具を選んだ。
「……接続ってどうやるんですか?」
「装備した段階で、接続は終わっている。これもさっきと同じだ。わざわざ工程も難しくする意味も無いからな」
────
「ワタシの魔法で的を作ってやった。あれに火の玉を放ってみろ」
「分かりました!」
レングは手に力を込める。そうすると、段々魔力が集まっていき、小さな火の玉ができた。
「これをあそこに…」
ひょろひょろと火の玉が的に飛んで行った。が、途中で消えてしまった。
「あぁ……」
「ま、最初はそんなもんだ。ゆっくりやってきゃ良い」
「はい……」
「それで、もう一つ教えとくことがある」
「なんですか?」
「まだ、教えなくても良いとは思ったんだがお前が結構特殊でな……。固有魔法についてだ」
「?」
「固有魔法ってのは汎用魔法とは別の魔法で、稀に発現することのあるこの世に一つしかない魔法だ。ワタシのこのクリスタルのようにな」
「それを教えてくれたってことは…俺に固有魔法がある…と?」
「ああ、察しが早くて助かるよ。お前は汎用魔法にも適正があり、尚且つ固有魔法も持っている。これまでも、そんなやつは見た事がない」
「ふむ…」
「だが、それのせいでさっきの火の魔法が弱くなったんだろう。二つの魔力が混ざってしまっている。だからまずは、その魔力を分離させることからだな」




