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小さな町の魔導具店

お待たせしました。前の話からこの話までかなり時間が経ちまして、ヴァエル達はこっちの世界で言うところの成人年齢を超えています。


そこは、トライン魔法国からかなり離れたところにある町、ランジ。


ランジの町では、腕の良い職人がかなり安いお値段で魔導具店を営んでいるそうな。


「すみませーん、ここで魔導具を買えるって聞いたんですけど…」


そこに、1人の客が訪れた。


「いらっしゃい、適当に置いてあるから、勝手に選びな」


そこの店主は、少々無愛想なことでも有名であった。ウワサで聞く、失踪したトライン魔法国の元騎士団長に言動が似ているとかなんとか。


「えーっと……」


客が魔導具を選んで、お金を払いに来る。


「ちなみに、これって何で作ってるんですかね…?」


「ワタシの魔法だ」


「えっ、それって消えてしまったりしないんですか?」


「…ワタシの魔法は少々特殊でな。問題無い。だがまぁ、消えてしまったならワタシに言え。なんとかしてやる」


「分かりました…」


客が店を出ていく。


……これだと安すぎるのか?相場が分からん…。まあいいか。これだけで生きてはいけるだろうが、実戦の経験も積みたいからな。今日も依頼をこなすか。



────



あれから、修行がてらに旅をしてランジの町にたどり着いた。実際のところ、魔族として生きるか人として生きるかは決めかねているが…魔族の掟は弱肉強食、強きに従っていれば生き長らえられる…が、自由は無い。人の強さの平均は、魔族より弱い。だが、恩を売れば返ってくることもあるし、自由もあるだろう。……なにより、居心地はこちらの方が良いな。


「……はぁ」


問題を先延ばしにするのは良くない事だ…。キューレさんがそう言っていたな……。魔族が人と生きる…か。今更何を悩んでいるんだと、ステラに言われそうだ。


まぁいい、今は魔物狩りだ。今日は近くの洞窟に住み着いた蜘蛛退治。


「ここか」


確かに蜘蛛の魔力の流れが見える。…一度魔物が住み着いた場所は、追い払ったとしてももう一度住み着く魔物が出てきやすい。ここの洞窟は、潰してしまって構わないとの事だから、遠慮無くやらせてもらおう。


あれから、断片的に覚えているあの感覚をどうにか再現しようとしている。…まぁ、不完全なものを完全に再現しようとしている、なんて馬鹿げた話ではあるが、今はこれしか無い。


ヴァエルの体を流れる魔力が速くなっていく。ヴァエルの髪に、魔法に、黒が混じる。


「不完全なものを、不完全に再現する……。笑えるな」


黒が混じったクリスタルが、凄まじい速さで広がっていく。蜘蛛が洞窟ごとクリスタルに飲み込まれていく。


「あぁ…痛い」


一切の反撃を許さず、蜘蛛を殲滅した。


「駄目だな……。戦い方が雑になる。……ぐっ」


輝きが無い、黒一色な訳でもない、不安定で不完全なクリスタルは元の性質を失い、蜘蛛ごと砕けた。


「進んでいるのか、戻ってしまっているのか、現在地が分からんな」


ともかく、蜘蛛は退治したんだから報告を……。


「あ」


倒した証は、砕けて散った。


「…………」



─────



「助かった。ありがとう」


「いえいえ、仕事ですから」


ギルドの職員に事情を説明して現場を見てもらい、無事、討伐報酬を受け取れた。


手間をかけさせてしまった。やっぱり、もう少し丁寧に…。


「……よいしょ」


ご老人が重そうな荷物を持っている。



─────



「助かったよ。ありがとうねぇ」


「いや、大したことは無い」


まぁ、他人を手助けしたところでさっきの失態は無かったことにはならないが、キューレさんにも教わったし、ワタシの経験からも他人には優しくするべきだ。ワタシが助けなくても、他の誰かが助けていただろう。


助け合いの精神、これは大事にしろと教わった。人は、こういうところが好きだ。



完全な黒→放出がとても速い、激痛、そもそもこれになれない

不完全な黒→放出が速い、激痛、すぐ壊れる

普通→コントロールしやすい

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