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あの時のアイツ


今日も今日とて魔物退治をしていた。最近は魔物の量だけでなく質も上がっていて、対応できる人が限られている。そのため、ワタシ達がこなさなきゃいけない依頼が増えている。その分金がたくさん貰えるし、お礼もしてくれるから悪い気はしていない。だが…


「騎士団も対応しているが、このままではジリ貧だ。元凶が見つからないのではどうしようもないがな」


「どうするんだよー…。本当に心当たり無いのか?」


「あるにはあるな」


「なんで今まで言わなかったんだそれ!」


「落ち着け。…はぁ、今までワタシが言わなかったのは……怖かった、からだな」


「?」


「その心当たりはな…ワタシが捨てられる前に住んでいた場所だ」


「そういう事か……あまり詮索はしないけどちゃんと覚えてるのか、それ?」


「覚えている。鮮明に、な。なぜだかは知らん」


「じゃ、早速偵察に行くぞ」


──────



「ここらなはずだ」


「へぇー、ここが…」


もう何者かが住んでいたような痕跡は無い。来ただけ無駄だったか……。


「特に何も無さそうだ。期待させてすまないな」


「いや、いいよ。今日はもう魔物退治も終わってるし帰ろうか」


「そうだ…な…?」


今さっきから妙な気配が……っ!


「ブレイ!警戒しろ!」


「どうした!?」


「これまでの魔物とは比べ物にならないくらいに同族の魔力を感じる…来るぞ!」


森の中から地面ごと抉りとるような暴風が放たれる。魔力を与えすぎると本来の魔力と混ざって元の魔法が強化されるのか…?いや、いいや今はどうでもいい!


ワタシは急いで壁を作り暴風を凌ぐが、壁がすぐに壊れかける。


「ぐっ……」


壁を増強し続けてどうにか凌いだ。ブレイの方は……この魔法なら大丈夫だな。


そうしていると、風が放たれた方向から、大男が出てくる。


「おい、あいつ…」


「ギルドのとこで喧嘩ふっかけてきたやつじゃないか!……様子、おかしくないか?」


「明らかに正気じゃないな。吸魔族に与えられたであろう魔力とアイツ本来の魔力が完全に混ざってしまっている。そんな無理矢理な力の与え方をされたら、ああなっても仕方ない」


「ヴァエルは下がってくれ。僕が前に出る」


「援護はしよう」


実体を伴わない魔法は効かない、というのは便利だな。だが…


「気をつけろよ、あれは肉体も弄られてる。以前とは次元が違うだろう」


「分かった!」


突っ込んだブレイに暴風を放たれるが、ブレイはすり抜ける。意識がブレイに向いた瞬間に、ワタシはクリスタルを飛ばし始める…


「はあ?」


クリスタルが刺さってから壊れた。妙な壊れ方をしていたが…もしや魔力を過剰に流されたことでクリスタルが耐えられなくなったか?さっき壁がすぐに壊れかけたのはそれが原因か…。


そうこうしてるうちにブレイはアイツの懐にまで到達している。


「硬いな。同じところを切り続ければ切れるだろうが、剣の方が持たないなこれは……ヴァエル!剣の補充頼む!」


「もう飛ばしてる!」


急いで作っているから魔導具として扱うならアレだが、なんの能力もない剣としてなら使えるだろ。


ワタシは普通の弾とたまに剣を混ぜて放つ。アイツは、ステラのように器用な使い方は出来ない。そんなに思考力が残っていないのか、元々無かったのかは知らん。


それを続けていると…


「…その頭でも気付いたみたいだな」


アイツは、剣を補充しているワタシに意識を向けてくる。あの暴風は、クリスタルの現在の許容量を優に超える魔力量を込められ、放たれている。まともに当たったら、は考えたくないな。


だが、その隙に…


「はぁ!」


ブレイが右腕を切った。これで、徐々に魔力が漏れていき、あのような出力は出なくなるだろう。


──ほんの少し、ほんの少しだけ、本人も気付かない程度に、ヴァエルの緊張が緩んだ。


その瞬間、分かたれた右腕から…


「なっ」


暴風が襲いかかった。




あの時のアイツ、ボス化。子分は吸魔族の魔力に適応出来ずに死にました。


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