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いらない子と思われていた令嬢は  作者: 青空一夏


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25 即位式 

 晴れ渡る空の下、スペイニ国の中心に広がる広場には、色とりどりの屋台や露店が立ち並んでいた。焼きたてのパンや香ばしい肉の串焼きの匂いが漂い、果物や甘い菓子を前にした子供たちの笑い声が響いている。


 商人たちの呼び声と、音楽家が奏でる軽快な旋律が、祝祭の空気をさらに盛り上げていた。広場はまるで国中の喜びが集まったかのような賑わいに包まれている。

 けれど、遠くの鐘楼が厳かな音を鳴らした瞬間、その喧騒はぴたりと止んだ。


 オリバー様の即位式が始まる。


 整然と並ぶ騎士たちが広場の中央に道を作った。その先を、王の装束に身を包んだオリバー様が進んでくる。彼の姿に、民衆からどよめきが起こり、期待と歓喜が波のように広がっていった。


 穏やかな表情の奥に、揺るぎない決意を宿した横顔。まっすぐ前を見据えて歩く彼に、民は感謝と祈りを捧げる。幼子を抱えた母親が頭を下げ、年老いた者が膝をつき、静かに祈りを口にしていた。


 彼が一歩進むたび、歓声と涙が重なり合い、広場の熱は高まっていく。

 私はその光景を、胸の奥が締めつけられるような思いで見つめていた。


 広場の中央、玉座の前でオリバー様が足を止める。その前に立つのは、豪奢な装いを纏った若き皇帝――双子の私のお兄様、アレクサンダー皇帝だ。お兄様の眼差しには、温かな誇りが宿っていた。


 お兄様は王冠を掲げ、厳かに宣言した。


「オリバーよ。その勇気、誠実、そして民を慈しむ心を讃え、今ここにスペイニ国の王としての位を授ける。我がローマムア帝国の名において、汝の王位を認め、重き使命と栄光を授けよう」


 その声が広場に響き渡り、オリバー様の頭上に王冠が置かれた瞬間、歓声が一斉に沸き起こった。大地が震えるほどの拍手の中で、私は胸いっぱいにこみ上げるものを抑えきれずにいた。


 この先には、私と彼の結婚式が控えている。

 それは和平を祝う儀式であり、新たな未来への誓いでもある。


 玉座に就いたオリバー様が、民衆に向かって力強く手を挙げる。その姿を見つめながら、私は心の中でそっと言葉を紡いだ。


 ――あなたと共に歩む未来を、私は全力で支えるわ。


 お兄様がふとこちらを見て、わずかに口元を緩めた。離れる寂しさを抱えながらも、これでよかったのだと、お兄様は自分に言い聞かせているようだった。


「僕はこの地を、これまで以上に発展させ、誰もが平等に暮らせる未来を築くことを誓います!」


 オリバー様の宣言に、再び大きな歓声が広場を包み込んだのだった。

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