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いらない子と思われていた令嬢は  作者: 青空一夏


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22/26

22 頑張るオリバー 

 僕はまず、国中に広がっていた混乱を鎮めることから着手した。治安を立て直すため、信頼できるスペイニ国の騎士や護衛を選び出し、部隊の再編を進める。かつてスペイニ国王から冷遇され、正当に評価されなかった騎士の中にも、不遇に耐えながら己を磨き続けてきた者たちがいた。数は多くないが、話を聞き、実際に動く姿を見れば、国の再建に必要な人材であることは明らかだった。


 僕は彼らに、できることから順に役割を任せた。成果を上げた者には感謝と労いの言葉を惜しまない。うまくいかなかった場合も、頭ごなしに叱ることはせず、何が足りなかったのかを一緒に考えた。最初は戸惑っていた彼らも、次第に前向きな表情を見せるようになり、街を巡回する騎士たちの足取りにも、少しずつ力が戻っていくのが分かった。


 治安が落ち着き始めると、次は国を支える基盤に手を入れる必要があった。

 僕は荒れ果てていた農地を整備し、住民たちに野菜の種子や苗を無償で配布するよう手配した。口先だけで命じるのではなく、自ら畑に入り、土を耕し、汗を流す姿を見せた。最初は遠巻きに様子をうかがっていた人々も、やがて鍬を手に取り、黙々と作業に加わってくれるようになった。


「まだ、この国で生き直せるかもしれない」


 そんな声が、あちこちから聞こえてくる。それを耳にしたとき、僕の胸の奥に、確かな手応えが生まれた。周辺国との交易も徐々に再開され、市場には以前よりも多くの品が並び始めた。ローマムア帝国から届く物資のおかげで、人々の生活は目に見えて楽になっていく。笑顔で商いをする商人の声や、食料を手にして安堵する住民たちの姿を、僕は何度も目にした。


 アレクサンダー皇帝陛下は、スペイニ国を単なる属国として扱うのではなく、独立した一国家として復興させたいという考えを示していた。その意向に応えるため、僕らは民と共に働き、道路や井戸といった公共設備の修復にも力を注いだ。水が安定して供給されるようになり、街道が整備されるにつれ、人々の顔から張りつめた不安が少しずつ消えていくのが分かる。

 いつの頃からか、街を歩くと、視線を感じることが増えた。好奇心や期待、そして感謝が入り混じったような視線だ。


「オリバー様が来てから、すっかりこの国は変わったよ」

「皇女様とオリバー様は恋仲なんだってさ。お似合いの二人らしいよ」


 そんな噂話が、僕の知らないところで広まっていることを、後から耳にした。中には、僕とビクトリア(アグネス)様の未来を勝手に語る者もいたらしい。


「オリバー様と皇女様は結婚なさって、この国の王になるらしいよ」

「そりゃ、めでたい! これ以上いいことはないなぁ」

「お二人がこの国を治めてくだされば、安心して暮らせるわ」


 そんな言葉を聞いたとき、正直に言えば、戸惑いの方が大きかった。だが同時に、彼らがこの国の未来を信じようとしているのも、確かに伝わってきた。

 人々は自分にできることを探し、街を活気づけ、さらなる発展を目指して働いていた。その熱意が連鎖するように、スペイニ国は驚くほどの速さで息を吹き返していく。


 やがて、この変化を確かめるため、アレクサンダー皇帝陛下がスペイニ国を訪れた。陛下の目に映ったのは、希望を語り合いながら行き交う人々と、生き生きとした街の姿だった。僕に向けられる視線の意味を、陛下も感じ取ったのだろう。

 その夜、陛下は静かに、ひとつの決断を胸に刻んだようだった。それが、僕と皇女様、そしてこの国の未来を大きく左右するものになるとは、このときの僕は、まだ知らなかった。

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