15 黒幕はスペイニ国王
オリバー視点
僕は城の外壁に隣接する荒れた裏庭から、使われなくなった荷物口を通じて王宮へと潜り込んだ。帝国の精鋭部隊の男たちも後に続く。
スペイニ国は、怠惰な王の統治によって国土が荒れ、民は貧困にあえいでいた。宮殿もまた手入れが行き届かず、衛兵の巡回もまばらだった。そのため、宮殿内に足を踏み入れるのは思ったより簡単だった。使用人用の服が保管されている部屋を見つけた。僕は給仕の役を演じるために使い古された制服に袖を通し、同じく使用人になりすました精鋭部隊の男たちを引き連れて先へと進む。油断しきった衛兵の隙を突きながら、豪華な食堂へと忍び寄った。
時刻はちょうどディナーの時間。目の前に広がる光景を見て思わず顔が曇った。そこでは贅を尽くした料理を目の前に、スペイニ国王がふんぞり返って食事をむさぼっていたのだ。貧困にあえぐ民を気にも留めず、贅沢に耽るその姿に呆れた。
「おい、そこの給仕! 肉も魚も足りないぞ。もっと、たくさん持ってこい!」
でっぶりと太った身体に豪華な衣服を纏ったスペイニ国王は、腹がパンパンに膨れていた。
(明らかに食べ過ぎだぞ。スペイニ国の民たちのなかには餓死する者も少なくないのに……)
厨房から肉や魚をさらに運んだ。スペイニ国王は高価な酒を飲みながら上機嫌だ。
「ローマムア帝国の皇女が毒薬をかけられただと? それは面白い。実行犯は我が国の民? なかなか楽しい展開になってきたな。若き冷血皇帝はもちろんその者たちを厳しく罰するはずだ。ますます、我が民のローマムア帝国への反感が募るぞ」
スペイニ国王は楽しげに笑った。報告を告げた騎士たちの顔は、どこかで見覚えがある。ローマムア帝国騎士のふりをして、悪事を働いていた者たちだ。
「ですが、もし戦争になれば、我が国はひとたまりもありませんよ」
「そんなことは、わかっておるわい! ここは痩せた土地ばかり。未練はないさ。ローマムア帝国に攻め込まれたら、余は異国に亡命するつもりだ」
「でしたら、俺たちも一緒に連れて行ってください。ローマムア帝国の騎士たちとは、とても戦えませんから」
(なんという無責任さ……国王でいる資格はまったくないし、あの騎士たちも同罪だ)
「しかし、あのアレクサンダー皇帝は絶世の美男子だと聞いた。とすれば皇女も素晴らしい美人なのだろう?」
騎士のひとりが、記念皿を国王に差し出す。
「ほぉ、たいした美人だ。毒をかけるよりもスペイニ国に拉致して奴隷にすればよい。余がじきじきに可愛がってやる」
僕は必死に我慢し、給仕のふりを続けた。精鋭部隊は、厨房の水瓶に眠り薬をたらした。着々と裁きの時が近づいているのも知らず、スペイニ国王はふんぞり返って笑う。
「皇女を拉致してきた者には、褒美をやろう!」
(自国民を騙し、そのうえ僕の最愛を害そうとする極悪人め!)




