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帰還

「ーーーΩ∮Ѧ∽✧∰ψϞ✠⟁≒(クァエトゥン)!」


 美春がお守りを握りしめ ” おまじない ” の言葉を発した


 その途端、爆音が響き渡り、風が渦を巻いて衣装の飾り布を舞い上げる。

 ルシヴァン王子は風に弾かれ倒れいてた。


 手に持ったお守りが青い光を放ち、その光が美春を包み込む。

 美春は反射的に目を閉じた。


 ーーキィンーー

 と金属音に近い耳鳴りがして耳手を当てて蹲る。


 やがて風が止み、あたりが静まり返る。


 目を開けるとそこは


「 ……え? 」


 おばあちゃんの家の洗濯機の前だった。

 開いたままの蓋、その奥に覗くつやつやのステンレス層。


 ーー居間の方に視線を向けると、かじりかけのチーズ。

 飲みかけのワイン。


 洗濯機から異世界へ行った時、そのままの状態であった。


「 夢……? 」


 違う。


 だって着ている服は、あの神殿で着た聖女様仕様としか思えないキラキラの衣装のままだったから。

 神殿で付けてくれた手首の綺麗な腕輪もついたままだ。


「 あ……お守り! 」


 握りしめていたお守りを慌てて確認した。


 おばあちゃんから貰った、小さいな花の形のお守り。


 あれ?ちょっと変わった……?


 本来は5枚の花弁を持つような形の木彫りの花。

 おばあちゃんから貰った時は花弁は3枚だった。

 そして今、残っているのは……2枚。


 (花びらが減ってる……)


 「なに、これ……」


 ぞくっと寒気が走った。

 あの世界のおじいちゃん神官は、おばあちゃんのお守りをみて泣いていた。

 おばあちゃんを知っている様に……『 エリエゼル 』と、そう言って。


「 ……おばあちゃん、いったい…… 」


 おばあちゃんはいったい何者なんだろうか……

 あの世界は一体何なのだろう。


 美春は震える指でお守りをなぞった。


 ◇◇クレイアス◇◇


 廊下を全速力で駆け抜ける。

 第二王子と王妃が関わっているのなら、王族のプライベートエリアに美春は連れて行かれたに違いない。


「 どこだ、ミハル……! 」


 心臓を鷲掴みにされるような焦燥感に襲われる。


 自分の荒い呼吸が耳につく。


 ” 遅れれば、もう二度と会えなくなる ”


 そんな考えが頭をよぎり、さらに足を速めた。


 ーー ドゴォォンッッ!! ーー


「なんだ?!」


 城全体を揺るがすような爆音が響き渡った。

 王族エリアの奥からする音に、クレイアスの背筋を冷たいものが走る。


 《 過ちを繰り返すか…… 愚かなり 》


 直接頭へ響くような声。

 声自体は不快ではないが、血の気が引くような冷たさを帯びている。

 その声に思わず足を止める。


「 ……今のは……? 」


 だが、迷っている暇などない。声を振り払うように再び駆け出した。


 音がした部屋の前には三人の近衛の服を着た兵がいる。

 しかし、その立ち振る舞いは明らかに正規の護衛とは違う。


「 私はクレイアス・ヴァンドルだ! 愛し子様の捜索中である。

 ここを開けてもらおうか! 」


 相手は詰問することもなく剣を抜いた。

 詰問をせずに剣を抜くのは正規兵とは思えぬ行動だ。


「 刀を抜いた以上、切り捨てられる覚悟であろうな! 」


 切りかかってきた兵の刃を避けつつ、返す刀で首をはねる。


( 練度が低い。 やはり正規兵ではない )


 一人が切り捨てられた途端、残りの二人は蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。


 目の前の扉を蹴破ると、異様に甘い香りがするその部屋に腰を抜かしたように蹲る第二王子。


「 ルシヴァン!彼女はどこだ! 」


 倒れていたルシヴァン王子を引き起こして詰問する。


「 ……っ! 触るな! 無礼だぞ! 」


「 無礼だと? ふざけるな貴様、神の愛し子に何をした! 」


 床には宝石の散りばめられた髪飾りが落ちている。


 彼女の髪に飾られていたものだ。


「 ……ミハル! くそっ……!! 」


 指が震えるほどに剣握る手に力が籠る。

 彼女は確かにここにいた。

 なのに姿がない。


 焦燥と怒りが胸を焼き、目の前の第二王子を殴りつけていた。




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