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煌めく衣装と初めての王城

こちらに来てから、もう3か月くらい経った


 今朝も温かくてとても美味しい朝食を頂いた。


 正直言って、毎朝きちんと朝食を食べるなんて、おばあちゃんと一緒に暮らしていたころ以来だった。

 社会人になってからは、ぎりぎりまで寝ていたから朝食を抜くことの方が多かったから。


 美味しい食後の余韻に浸っていると……


 コンコンコン…… 控えめにドアが叩かれ静かに開かれる。


セリオン・ネリエル(おはようごさいます)タラネク・ミハル(愛し子ミハル様)


 いつも世話をしてくれる侍女の二人、ミューラとセミルが姿を見せた。


 こちらに来たばかりの時、彼女たちは言葉の通じない私に、根気よくいろいろ教えてくれた。

 身振り手振りや絵を交えて、まるで小さい子供に教えるように。


 二人がにっこり笑って挨拶してくれる。


 「 セリオン! 」


 私も朝の挨拶を返した。


 発音があってるか不安だけど、二人が「 うんう 」とうなずいてくれるから多分大丈夫なのだろう。


 三か月もいればいくつかの単語は覚える。 

 思い返せば、この世界で必死に覚えたのは「 トイレ、どこ? ( ウビ・ラトリナ )」という言葉だった。 あれはもう、本当に切実だった……


 そんなことを思い出していると、二人が「 こちらへ 」と身振りで誘う。

 隣室へ案内されると、そこにはいつも以上に気品に威厳をまとったキラキラフリフリ衣装が整えられていた。

 煌めくような刺繍とひらりひらりと風に揺れる布。


 それに着替えさせられて鏡の前に立った。

 ここでの衣装は一人で着ることができない物ばかりだ。


 最初は、人に着替えさせてもらうのが恥ずかしくて、一人で着替えようとしたけど、着方がさっぱりわからない物ばかりだった。


 そして、諦めた。


 今の私はキラキラ光る腕輪に、頭飾りまでつけられている。

 うわぁ…… なんかもう、凄い。


 神殿バルコニーでのお披露目の時もすごかったけど、さらに上があるなんて思わなかった。


 思わず、一生に一度は言ってみたかった言葉を口にしてみる。


 「 こ、これが私……? 」

 

 ……うん、特に感動は無かった。


 この世界では言葉も意味も通じないし、それに衣装が変わっても中身の私は私のままだし。

 気品あふれる豪華な服を身につけたのに、私のどこを探しても気品なんて存在していなかった。


 ( おかしいな。画家が描いた肖像画の私は気品あふれる美女なのに。 )


 やはり似てるだけの別人か。 あるいは画家渾身の改変だ。 そうとしか思えない。


 今日は「 どこかに行く日 」だと、ミューラとセミルが絵を書いて教えてくれた。大きな建物と、王冠をかぶった人の絵……


 もしかして、王城に行くのだろうか。 だからいつもよりマシマシのキラキラに着替えさせられたのかもしれない。


 着替えが終わってしばらくすると、


  ーー コンコンコン ーー


 ドアをノックする音が聞こえた。


 ミューラがドアを開けると、いつもより豪華な装いのクレイアスが微笑みながら立っていた。


 「 セリオン、ミハル 」


 「 セリオン、クレイアス 」


 そう答えると満面の笑みが返ってくる。



 わぁ…… もイケメンだぁ。


 彼の顔を半月近く見ていなかったけど、2日前に神殿に戻ってきた。 どこかに出かけていたのかもしれない。

 お土産に花束とお菓子を持ってきてくれた。


 彼がいる時は毎日一緒に散歩をしていたから、少し寂しく感じていたけれど、昨日は久しぶりに散歩してお茶も飲んだ。


 ……まあ、相変わらず会話は全然弾まないんだけど。 言葉が通じないってやっぱり不便だなぁ。


 そんなことを思いながら、誘導されるままに、お世話係の二人に付いていくと、外には威厳たっぷりの装飾の馬車が待っていた。

 馬車の周りには白い制服の騎士たちがずらっと並んでいる。

すごい迫力!

 その前でクレイアスが、すっと手を差出してくれる。


  えっと、これ…… どうしたらいいの?


 戸惑っていると、後ろからセミルが、両手をひょいっと重ねるしぐさを見せる。

 ミューラも「 ほらほら 」とばかりに自分の手を彼の差し出す腕に乗せる真似をする。


 あ、なるほど。彼の手に自分の手を乗せればいいのか。

 もしやコレはエスコートというやつですか?


 彼の手に恐る恐る自分の手を添えると、クレイアスがにこやかにほほ笑んだ。

 どうやら正解だったらしい。


 導かれるままに馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出した。


 ◇◇


 美春みはるはクレイアスと、おじいちゃん神官、アルセルドさんと共に、きらびやかな廊下を歩いていた


 先頭には着飾った城の兵士のような男が無言で進み、その後ろに背筋を伸ばしたアルセルド、そしてクレイアスに手を引かれた美春。


 さらにその後ろには、侍女二人と白い衣装をまとった神官たちが列を成して続いている。

 まるで白い波のような行列。


 馬車から降りて目の前の建物を見たときに、そのその大きさに絶句した。

 本当に大きかった。しかも広い。

門から入ってからも、しばらく馬車で移動。

そして大きな扉の前で馬車が止まり、そこから案内されるままに歩いている。


 (これ、やっぱり、王城だよね。だって建物の見た目が完全にお城って感じだったし……)


 廊下の先には、巨大な両開きの扉。扉の前に立っていた兵士が無駄のない動きでそれを押し開けた。


 その瞬間、視界に鮮やかな赤い絨毯が広がり、その奥には玉座らしき椅子と、いかにも「 王様です 」という雰囲気の人物が座っていた。


 王様っぽい人の横には王妃様っぽい美女と王子様っぽい人が三人、その隣にもう一人きれいな女性、そこに続く赤い絨毯の左右には、宝石や羽飾りで着飾った人々がずらりと並び、じっとこちらを見ている。


 美春みはるの足が、思わず止まった。


 ( やばい。引き返したい……!! )


 クレイアスが心配そうに美春の横顔を覗き込む。距離が近い。


 『 ミハル、ヴェレン サ?(大丈夫か?) 』

 「 あ、はい…… 」


 ( 近い……顔が……今日も顔が良い! じゃなくて! ここに入らなきゃダメなの? )


 いつもよりさらに清楚さが増した白と淡い金の衣装に身を包み、遠い目をしながら美春は豪華なホールに視線を向けた。


 先に足を踏み入れたのは威厳のあるアルセルドさん。 


 それに続き、クレイアスに手を引かれた美春も中に足を踏み入れる。


 すると左右の着飾った人々が一斉に膝をついた。


 ( うわぁ、なにこれ。

あれだ。世直し旅をするご隠居様とお供が印籠だして、周りの人たちが ”ははーっ” ってなるやつだ……)


 おばあちゃんとよく時代劇を見ていた幼い頃を、なぜかこんな場面で思い出してしまう。

 あの時はあの印籠が欲しいとねだったっけ。 そんなことを思い出していた。


 ……現実逃避かもしれない。


 ホールの中央あたりまで歩みを進めると、王様と王妃様は椅子から立ち上がり、段差を降り、ゆっくりと一礼した。

そ の動きに倣う様に王子様たちもそろって礼をする。


 『 本日は足をお運びいただきまして非常に恐縮でございます。 』


 王様が美春を見ながら何か言っている。 言葉は分からないけど挨拶している雰囲気的なものは何となく伝わってくる。


 ただ、時々こちらみる王様や王妃様の視線が、クレイアスが美春の手を取っているのを気にしているように感じられた。


 『 愛し子様はこちらの言葉や風習に不慣れであられる 』


 アルセルドおじいちゃんが何かを説明してる。 声は穏やかだが内容はさっぱりわからない。


『 こちらが愛し子であるミハル様。 先日、女神の祝福の光とともに降臨された。 クレイアスはその場に同席しており、ミハル様とも交流がすでにあるのでな。 ミハル様が不安を感じないよう、クレイアスに案内をさせておるのじゃ。 』


 再びアルセルドさんの声。 周りの視線が一斉に美春に向かう。

 うわぁ、全員見てる! びっくりした……。

 おじいちゃんが何を言ったのかは分からない。


 どうやら、説明を続けている様だけど、意味が分からない以上、美春にできる事は周りを見ることくらいだった。


 美春にはちょっとした特技がある。

 どんなに穏やかそうにみえても、どんなに良いひとに見えても、美春が ゛ 嫌だ ゛ と思う人間は影で良くない行いをしていたり、自分を利用しようとしていたりする。


 どんなに笑顔でも自分をだまそうとする人間は何となくわかる。 ” なんか嫌な感じ ” がするから。

 王様のとなりの美女の笑顔にソレが見えた。 顔はとても穏やかそうで上品。 仕草も上品で゛たおやか゛という言葉が似合う美女。


 でも ” なんかちょっと嫌だ ”


 周りに着飾った人たちの中にも ” 嫌 ” な感じの人がちらほらいるけど、

 三人のうち真ん中の王子様は、爽やかな笑顔なのに ” ものすごく嫌 ” だった。


 美春は不安になり、クレイアスと繋いでいる手に力が入ってしまった。

 王様の挨拶の後、美女の挨拶、続いて王子様の挨拶が続く。


 とても穏やかな口調なのにミハルは落ち着かなかった。




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