シナぷしゅ君へのお手紙
バイキンマンが好きな、シナぷしゅ君。
えらいね。
アンパンマンよりもバイキンマンだなんて。
そうだね。
「あんぱーんち」しか能がないアンパンマンよりも、
発明家で、次々と不思議な乗り物を作って、攻撃をしてくるバイキンマンの方がカッコいいよね。
ドキンちゃんにも好かれているみたいだし。
でもね、気を付けてね。
君のオジさん(お母さんの弟)は、ダースベイダーのファンだけどニートだから。
君のひいオジイさん(お母さんのオジイさん)は、「天才バカボンのパパ」や「クレヨンしんちゃん」のファンだったし。
酒飲みで、タバコ好きで、パチンコ好きで、カラオケで演歌ばかり歌い、借金だらけの大工だったんだ。
酒に酔って、気に入らないことがあると、食卓をひっくり返していたよ。
その度に母は、泣きながら、散らばった食器や食べ物を片付けていてものさ。
「巨人の星」というテレビアニメで、星一徹というオヤジがやっていたやつさ。
「うる星やつら」の藤波竜之介のオヤジも同じだったね。
君のお母さんも酒好きで、色々と恥ずかしいエピソード持ちだから、気を付けるんだよ!
「人間は生まれた時に半身を失い、それを伴侶として探し求める」
つまり、自分にないものを持っているか正反対の性格の人を好きになるってことかな。
僕の母は、料理も裁縫も下手だったし、学校の成績も悪かった。
その反対に、祖母は働き者で、魚の行商もやっていたし、畑仕事も家事も得意だった。
僕が小さい頃は、朝早く汽車(昔の蒸気機関車)に乗って、4駅先の大きな町に魚を売りに行っていた。
海のそばなんだけど、線路を渡った山側の斜面に畑があって、そこで野菜を作っていた。
今でも時々夢に出て来るのだけど、「いづめっこ」という大きな平たい竹のカゴがあって。
それに僕は入れられていた。
赤ん坊が農作業中に這い出さないように入れるカゴだね。
今でも鶴岡市のお土産物として「いづめこ人形」が売られているし、
君の母が小さい頃、僕の母(君のひいおばあちゃん)にもらったのが、僕の部屋にあるよ。
でもこれって、幼児虐待だよね。
泣いても、おもらししても、カゴから出られないんだよ。
「我慢強い子供に育つ」なんて評価する人もいたけど、やっぱり良くないと批判されて、
3歳下の弟の頃は使われなくなったよ。
中学生の時だって、僕の時代は男の子は坊主刈りにさせられていたのに、
弟の時は、坊主刈り廃止(長髪可)になったよ。
だって、坊主刈りなんて、刑務所の囚人か軍人ぐらいだよね。
高校野球の選手にもいるけど…。
僕が高校生ぐらいの時には、サッカー部の選手の方が、長髪でかっこいいので人気があったな。
そういえば、君のお母さんが高校時代。
制服がないのをいいことに、東京の原宿まで行って高価な「なんちゃって制服」を買ってたり。
「ルーズソックス」や「ギャルファッション」を身につけたり。
修学旅行では禁止されてもビキニの水着を持って行ったり。
やりたい放題の自由な毎日だったような…。
シナぷしゅ君、「反面教師」という言葉は知っているかな?
親の良いところを真似るのではなく、親の嫌なところや悪いと思うところを嫌うことだよ。
僕は「あんな親にはなりたくない!」と心底思えるような、そんな逆境が君を強くするんだよ。
丁度それは、寒い時に外で遊んだり、エスカレーターに乗らないで階段を駆け上がったり、
お腹がぺこぺこになるまでおやつを食べないこと、だよ。
今は、何でも好きなことをして、好きなものを食べて、寝たい時に眠れる。
その自由を失った時に、自分で取り返せるように、強くなるんだよ。
僕の好きな言葉はこうさ。
「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない。」




