第97ターン ワタクシ、高月 良ですけどねぇ
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
見るからに曲者、そう評して過言ではない実行委員の高月。その高月が第二回戦にもう一つの格ゲー「ザ・ナックル2」を使用する正当性を説く。
そのリクツに反論出来ないビッグバット。観衆からは「どうした?口だけCEO!」との嘲笑が届く。そんな劣勢の彼氏に思わぬ所から助太刀が入る。
「いつから、いつからナックル2がエントリーされたんですかね??」
その声はなんと来賓席から聞こえてくる。穏やかならぬ雰囲気が加速し、混沌への扉が開く。
「だいだいこの大会は我が社が関係各位にお声がけして設えたもの。それなのにウチのローバトだけでなく、ナックルまでも入れ込むのは、、」
「オイッ、クー子!あのオッサン何をみみっちいこと言ってんだよ。格ゲーは格ゲー、それでいいじやあねえか。」
「純はいいこと言うねえ。しかーし、もはや格ゲーはビッグビジネスに変貌したノダ。古き良き時代は過ぎにけり〜」
フンッ、おめえも味なこと言うじやあねえか。純が満足げに微笑むとコントローラーを少しの間見つめている。
「いやあ、西岡さん。これはこれは。メーカーさんなくしてこの大会はあり得ませんよ、もちろん。」
どうやらクレームを付けているのはローバトの製作サイドの人物らしく高月委員とも面識があるようだ。
「高月さん、こちらとしては委員会の独立性というか、公平性というか。まぁ、(広告)代理店さん中心でお任せしたのは皆さんを信用したからですよ!」
「まあまあ。ザ・ナックル2は御社のライバル製品には違いありせんが、ここは大所高所から格ゲー界の発展をお考えいただけませんかねぇ。」
何を屁理屈を言っているのだと納得がいかないビッグバット。メーカーの西岡氏を押しのけ猛然と高月に抗議する。
が、クレーム対応と粘り腰のネゴは代理店サイドに一日の長がある。陳腐なパワポで御託を並べている御仁とは経験値が違う。
「はぁ。でしたら棄権していただいても結構ですがねぇ、当方としては。どっちが勝ち進んだ問題でモメてることだし。」
でもねえ、プレイヤー達がキャワいそうですけどねぇ、と同情してみせる高月実行委員。痛いところを突かれたビッグは悔しそうに押し黙る。
「そ、その大所高所とはどういう意味なんですか?」
西岡氏が高月委員に思わず尋ねてしまう。相手のペースに乗らず一方的に主張を連呼するクレーマースタイルでは高月を攻略出来ないことに気付いてのことだろう。しかし、それこそ高月の狙いどおりの展開だ。
いやぁ、そこなんですよ西岡さんと、馴れ馴れしく西岡氏の肩に手を回して耳打ちする高月。
「ほら、見て下さいよ、来賓席の霞ヶ関の面々を。今日は格ゲーが国家プロジェクトになる運命の日かも知れませんよ。」
そんな大事な時に業界内でいがみ合うのはもったいない、へたっぴさ。高月は戯けて西岡の背中を叩くのであった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




