第83ターン オレっち、見覚えのあるオッサンを発見する
「タイムアープゥ!!」
司会兼レフェリーの暇でしょ?先生が対戦終了を告げると会場内からは激しいブーイング。これに対しゲーミングチェアを蹴り上げ、両手でガタガタと揺すって聴衆を威嚇する悪の枢軸クー子。
「よく最後の攻防を投げ抜けで乗り切ってた!読みの勝利、グッジョブだクー子ちゃん!」
興奮気味にヘッドコーチのむ〜どがクー子を讃えるとジョブとかシュートとかどっちでもいいノダとボソリ。そしてクー子が悔しさを滲ませる。
「まあ、お客に見せれるのかって言うか、、プロの仕事では無かったノダ。」
勝ち負けを超越し闘いを通して生き様を見せるクー子のスタイル、それは大好きな豊田真奈美選手へのオマージュだが、今回はチームプレーに徹したと言うわけだ。
一方、格ゲー常任理事国側は独特の空気感に包まれている。優勝候補といわれながらかなりの苦戦。現段階で1勝2敗1分けという戦績で、次の一戦に勝利しない限りその上のステージには勝ち上がれない。
うなだれるアレサに容赦ない叱責を加えるマネージャーのビッグバット。
「ガードを固める相手には投げ技がセオリーだろ!焦ってそんなことも忘れてしまったか?!」
そんなことではデビューも覚束ないぞと捨て台詞を投げつける。
「ちょっと待ちや、さっきから聞いてたら酷いんとちゃうか。」
なんと最早指導とは言い難い感情的な叱責を繰り返すビッグバットに異を唱えたのは理系女人情派のmakoだ。
「ビッグバット、あんたは名のあるゲーマーやけど指導については二流やね。憶えておき、日本には名選手、名監督に非ずって言葉があるんやで。」
「何だと!この私が二流だと?業界では数少ないMBA修了者である私が二流だと?!」
「MBAのPDCAオジさん、指導ってのは選手ごとに変えなあかんねん。せやのにアンタはいつも同じこと言ってるやないか!」
情に厚いmakoは若いゲーマー達を萎縮させるビッグバットが許せない、ピシャリと言い放つ。そもそも前途有為の子達に敵も味方もない。
「言わせておけば、、」
makoの気迫溢れる言葉に圧倒されるビッグバット。格ゲー常任理事国のプレイヤー達が密やかに微笑む。彼らはどうやら心の中でmakoを支持しているようだ。
最終試合を前にした両軍の小競合い。純が来賓席に見覚えのある人物を見つけたのは、まさにその悶着を見守っていた時だった。
つづく




