第74ターン 激闘に決着?蘭子の秘策!
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
もっと大胆に、もっと激しく!花崎 蘭子のプレイスタイルに注文を付けたのはあのメガネのアラサー、ヨウヨウだ。
「オイッ、ヨーコ・オギノメ!なんでおめえがここにいるんだよ!?」
純やクー子、さらにはチーム夢原のコーチ陣も事務長ヨウヨウの登場に驚きを隠せない。
「ヤッホ〜純クン!お嬢さんが少し心配で新幹線に乗って来ちゃったよおよお〜」
ヨウヨウは両手を胸のあたりで振って明るく答えると、すかさず蘭子にエールを送る。
「お嬢さん、どうしてワタシがコリアの不良ジュリーを勧めたか、自分でも分かっているはずよ!あなたは何でもそつなくこなせる万能型、だけど、、」
「実はリスクが取れない優等生タイプ、言い換えれば器用貧乏なのよ!」
一瞬、蘭子の表情が歪む。が、何故かもう一人の乙女が激高した。
「あんだとぉ〜!誰がビンボーだ、多重債務者だ!金は無いけど華がある、それがアタイ、下町の太陽、クー子なのダ!」
と、貧乏という言葉に脊椎反射してしまう我らがクー子。違うわよ〜お嬢さんのこと。器用貧乏って言ったのようよう〜と、メガネの奥で困ったちゃんフェイスはあざといアラサーこと事務長ヨウヨウ。
そうこうしているうちに、蘭子・ジュリーとモレシャン・アノンの激戦はいよいよ佳境に近づいて来る。残りタイムは15秒だ。
現状では体力はアノンが勝っているが、本大会の特殊レギュレーションではKO勝利以外は引き分けとなってしまう。
「フンッ、知ったようなことを!大胆に、、、やってやるわよ!」
そう蘭子は一声吠えると方向キーを上下に激しく擦る。すると画面端でジュリーがカクカクカクと例の屈伸運動を始める。
「ウッキー!!ワターシをアオーってマス、許せないーデス!!」
な、なんと蘭子の煽りにモレシャンが反射的に煽り返してしまう!
「フランダース!何をしている、時間を無駄にするな!早く決着をつけろ!!」
と、格ゲー常任理事国のコーチ、ビッグバットが叫んだ時、先に技を出したのは、弾を撃ったのは花崎 蘭子だった、↓↘→R1
「出たッ!太極刃也!」
見事な陽動作戦からの弾打ち。元・蘭子親衛隊長の比留多 恭介が思わず声を上げる!
大パンチで撃ち出された弾がカクカクと煽り中のアノンを打ちのめす。アノンの体力ゲージがゼロになると会場にはうねりのような歓声があがり熱狂の坩堝と化す。
「フンッ、ワタクシが器用貧乏な臆病者ですって、、知ったようなことをッ。」
劇的勝利を誇るでなく、ゲーミングチェアからサッと立った蘭子が独りごちる。
でも、たしかに、、自分の想いは相手に伝えれていない。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




