第68ターン アングリーの兄、ビッグ現る!
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
圧倒的な力の差。砂漠の貴公子アシッドを操るアングリーバットの一気呵成の攻めに格ゲーではグリーンボーイの留年生、源五先輩が追い詰められる。
勝負時間は10秒程度が過ぎただけで、源五先輩のキャラ、ロークの体力は半減している。が、アングリーも手を緩めることは出来ない。何故なら今大会での勝利条件は対戦相手の体力を奪いきる一本勝ちのみという、特殊なレギュレーションだからだ。
「アングリー、何をグズグズしている!勝負を終わらせてしまえ!!」
突如、会場に響いた怒声。アングリーが肩をすくめる。そして明らかに狼狽した様子で声の主に返答する。
「わ、分かってるさ、兄さん、、」
そう言うと、さっきと同じく弱K、中Pで繋ぐコンビネーションをせっかちに繰り出すが、精度が落ちたのか、源五先輩にガードされてしまう。
アングリーが兄さんと呼んだ長身かつ筋肉質なエグゼクティブ風の男、最前からのmakoの記憶の支え棒がカタンと落ちた。
「あ〜思い出した!バットという名前。彼はアラビア格ゲー界を代表する格ゲーマー、アラビアンナイトことビッグバットやヮ!」
となると、アングリーは彼の弟か。なるほどの実力だね、とヘッドコーチむ〜どが口元を歪める。
「アングリー、何を焦っている!的確に確実に繰返し技を重ねろ!」
再度の厳しい叱責の声に応えんと緊張したのか、アングリーの操るアシッドの調子がにわかに崩れはじめた。と、そこに、、
「ドスケベ留年生!この勝負勝ったらアタクシが一度お付き合いしてもよくってよ、ア〜、ハッハッハ!」
驚愕!なんとこの間沈黙を保っていた花崎 蘭子、源五先輩の想い人が弩級のエールを発砲する。駄馬も目の前に黄金のニンジンをぶら下げられたらヒヒンヒヒンと鼻息も荒くなる。
「来ましたぁ〜愛のめざめ〜!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




