第57ターン オレっち、東京に初上陸!
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
「東京だよ、おっ母さん!」
感極まったような声を上げたのは留年生の源五先輩。彼のススメで焼津から電車でやってきたが、その時間は概ね三時間半。
純ら他のメンバーはかなり疲れが溜まったようで言葉少なだ。饒舌な部類のコーチむ〜どや、いつもは元気印のクー子もグッタリして見える。
「中々の長旅やったけど、東京、着いたヨ。で、会場はと、」
もう一人のコーチmakoが大会チラシを開いて確認すると、市ヶ谷の東郷公園ですよと比留多 恭介。未だムラはあるものの、この年齢にしては気が回る、周りが見れる恭介だ。
「オイッ、ニヒル*!トーゴー公園て何だ?」
[註]ニヒル 純が比留多に付けたあだ名
「純は何にも知らないノダ〜トーゴーといえばグレート東郷。昔のプロレスラーなのだ。」
と、クー子が迷解説。その偉業を讃えて公園が出来たのだと胸を張ると、純がそんな訳ねーだろッと手刀をクー子の脳天に落とす、アッポ〜。
にわかに元気になった?ツープラトンはいつもの悪ふざけにエンジンがかかる。
「あー煩い!こっちは幼稚園児の引率じゃ無くってよ!!東京に来たからって燥ぐンじゃないワヨ、この田舎っぺ大将!!」
と激高する花崎 蘭子。彼女も含めたこの三人のトリオ漫才は最近ではチーム夢原の定番になりつつある。
すると今度は蘭子さんの怒った顔も魅力的ですねえ〜と鼻を伸ばす留年生の源五先輩。なんとも言えないワチャワチャ感だが、当人ら高校生らは至って真剣だ。
そんな瑞々しい光景を青春の乗り越し精算を終えたむ〜どとmakoは目を細めて見守る。格ゲーと、そして仲間と過ごした日々が、いずれ純たちにとって掛け替えの無い宝物になることを、彼らは知っている。
makoが腕時計を見る。時刻は正午を若干過ぎた頃だ。
以前に食したアメ横のケバブが恋しいが、まずはU−18格ゲー日本代表選考会が開かれる東郷元帥記念公園へと急ぐ。大会の開会まであと小一時間だ。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




