第54ターン オレっち、不透明決着に会社批判
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊の忘れ形見、日乃本 純の指導権を巡る熱き女達の闘い。
すなわち、makoとヨウヨウのザ・ナックル2対戦は大詰めに来ている。ヨウヨウが操る功夫の姑娘ショーヨーがやや優先であるが、makoの不良レディース、レイコが反転攻勢に出てきた。
しかるにこの激闘の中、沈黙を保っている一人の女性がいる。罵詈雑言の総合商社こと花崎 蘭子だ。今、彼女は何を思う。
「オオッ、ハットリmakoちゃん!持ち直してきたじやあねえか!」
自身の教官に声援する純。む〜ど、源五先輩もワッセワッセとmakoにエールを送る。劣勢となったヨウヨウは打開策を模索するが間を取り、巧みに立ち回るmakoにとどめが刺せない。残り時間を念頭に優勢勝ちを意識し始める。
「そっちが来ないなら、こっちから行かせてもらうでぇ!」
するとmakoは一声吠えると方向キーを素早く二度押し、ダッシュでレイコとショーヨーの距離を詰めると中段の正拳突きをワン・ツーの要領で繰り出してさらに、
「あ!裏拳なのダ、アジャ様の必殺技なのダ!!」
全女信者のクー子が思わず声を張り上げる。mako・レイコの見事なコンビネーションにショーヨーの体力はグッと削られる。
「な、なんとほぼ残り体力は同じなりましたねえ〜これは面白いことになってきましたよおぉ!」
語り口のキモさでは定評のある留年会のシティボーイこと源五先輩が囃し立てたその時だった。
「ノーカン!ノーカン!ノーカウント!!」
絶叫した花崎 蘭子がなんとプレステの電源をON/OFFして対戦を無効試合にしてしまった。
「オイッ!ランランッ、おめえ何するんだよ!気でも触れたか!!」
怒声を上げる純。驚愕のクー子も蘭子に詰問する。
「しゅ、守銭奴!おヌシ、何をしたのか分かってるのか、て、テロなのダ!」
雪の札幌中島体育センターなのダと、蘭子の非行をなじる下町の太陽。が意外なことにドローというかノーコンテストで終戦した二人のレディ格ゲーマー達は何処か安堵の表情を見せている。
「中々、やりますね、、」
「ふぅ~ッ、そちらこそ。」
この異様な光景を恋愛アナリストむ〜どは斯く考察する。
どちらであっても勝者が純クンと今以上に距離を縮める、それが許せない蘭子ちゃん。一方、makoもヨウヨウさんも敗北の危機感がリアルに生じ、この際ドロー決着も悪くないと悟った。その瞬間の出来事だったのか。
三者の思惑が交錯し玉虫色の決着となったが、そんなフクザツな状況を意に介さない純とクー子は益体もない小芝居に興じていた。
「こんな会社辞めてやる!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




