第52ターン ヨウヨウの攻勢とmakoの決意
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
「オイッ、スケベエ!バトサンとザ・ナックル2の操作が根本的に違うとはどういう意味なんだ?」
むーどのちょっとした謎掛けにド真ん中直球勝負の純が詰問する。
「○□△✕、各々のボタンが右手足と左手足になっているんだ。頭の中で整理されると、これはこれでやりやすい。」
メジャーな格ゲーマー達はそれぞれ専門分野を持っているが何せ元々がゲーム好き、
それ以外のゲームも一通りやっているものだ。むーどもまたそんなゲームクレイジーの一人、ザ・ナックルも触ったことがあるのだろう。
「う〜ん、じゃ小パンだ、大パンだってのはどう打ち分けるかなぁ?」
最近は中々にスルドイ質問が板についてきた格ゲー初心者の源五先輩が小首を傾げる。
「それよりむしろ、上中下段で打ち分ける。しゃがみパンチとか。そんなカンジかな。画面の二人の動きを見て。」
論より証拠、百聞は一見に如かず。画面ではヨウヨウ・ショーヨーがしゃがんだ姿勢でmako・レイコの下半身を攻め立てる。
「く、相手のコンビネーションが巧みで中々反撃できへんわ!」
専門でないザ・ナックル2の運用に苦慮するmako。なんとかディフェンスでしのぐが、ヨウヨウの攻勢は止むことなく、
「で、これか。。ここは一緒やね、バトサンと。」
makoの見立てどおり、打撃へのディフェンス一辺倒には投げ技で絡めてコンビネーションを多彩に変化させる。ショーヨーの投げ技がレイコに見事に決まる。
「ワ、ワッ!女狐が押し込まくっているのだ!負けちゃうと純のコーチが変わってしまうノダ。。」
不安に声を上げるクー子。純の姉貴気取りのmakoを忌々しい奴と煙たがってきたが、その指導力はクー子も大いに認めてきた。makoが唇を噛みながら抵抗を続ける。
「クー子ちゃん、簡単に負けたりせえへん。純坊を指導してプロにするのが私の役目、プロ化の瀬戸際にある格ゲー業界の為にも私は日乃本 尊の遺伝子を一流の格ゲーマーに育てるあげるんや!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




