第5ターン オレっち格ゲーを再開する
格ゲーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
晩秋の夕日が差し込む一室。その光は淡く、何処か刹那げだ。医療法人花崎会の事務室は、純らチーム夢原の面々が格闘ゲームの練習に励むブートキャンプ。
通常勤務時間が終業に至り、当直担当の職員らとバトンタッチする日勤帯の面々が、久しぶりに現れた純に声をかけながら帰途につく。
「日乃本氏は有名人なのですなあ。」
何故か純の練習についてきた留年生の源五先輩が独りごちる。
「そう、この夢原キャンプでは純はちょっとした顔なのダ。」
得意そうにクー子が解説する。
「チーム夢原は、かのレジェンドゲーマー夢原省吾のアタイら弟子達のチームで、純はそのエースなのダ。」
「まあ、夢サンは、今はちょっと格ゲーからは離れているけど。またいつかオレっち達を指導してくれるゼ、きっと。」
そう純は自分に言い聞かせるかのように呟くと、テレビの電源をリモコンで着けた。
そして話題の新製品、プレイステーション3にも電源を入れた。PS3が低い唸り声を上げて起動し、格闘ゲーム、ロードバトラー3のオープニング画面が表示された。
どうも見慣れない新しいキャラクターが追加されているのようだ。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。