第44ターン テイク・アール、謎のネットプレイヤー
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
嫌味ったらしいプレイに終始する剛仁遣いをスキップすべく、電源ON/OFFに奔った純。
が、しかし、またしてもネット対戦の画面に現れたのはボロをまとった武道家、剛仁。
「プレイヤーネームを確認して無かったから分からないけど、さっきとは別の剛仁遣いかも。」
事務長ヨウヨウの言にも一理ある、いやその可能性の方が高い。確かに深夜から早朝にかけてのネット対戦、とりわけマターリとプレイするラウンジでは、何度となく同じプレイヤーに遭遇することもあり、奇妙な仲間意識が醸成されることも稀にあるが、殆どの場合はまたお前かといった嫌悪感が昂じることになる。
「ともかくも、今回はプレイヤーネームを確認して置きましょう〜えーと、」
Take_R、テイク・アールか。R指定のゲーマーってことでしょうか?興味深いですねぇ〜、と源五先輩。留年も長くなってくると気働きにも磨きがかかる。
「などど言ってる間にもう対戦は始まっているノダ、画面に注目〜!」
クー子の周知と同時に純が操る空手家リョウとTake_Rの剛仁のバドルが始まる。99秒の拳のカンバセーションだ。
「じゃ、まずは挨拶代わりにこれを喰らいなッ、気流ぅ拳ぇん!」
純が勢いよく弾を撃つと、やはりというか悪い予測が当たったというか、剛仁が剛気流拳を返し、二つの弾が衝突し相殺される。
またかよ、引きつった笑いで唇を歪める純。そして烈風脚で間合いを詰め、飛龍拳をぶっ放すとこれを防御した剛仁が全く同じコンビネーションを展開する。あーやめたやめた!
誰にともなく純はブッキラボウにそう叫ぶとまたしても電源をON/OFF。そして新たな対戦相手を探す。
純、クー子、ヨウヨウ、そして源五先輩と蘭子。5人は口を閉ざし、何も語らないが頭の中では全く同じことを考え画面を見つめる。
オープニング画面、ネット対戦モード、そして対戦相手の検索、、、
「ア〜ハッハッハ!またですわぁ!!馬鹿ゲーマー、貴方ずいぶんとこのズタボロ武道家に愛されているのね〜Take_R様のお出ましですわよ!ア〜ハッハッハ!!」
狂気じみた蘭子の絶叫。ネット対戦の異常事態に格ゲーのベテラン、ヨウヨウでさえ丸メガネの奥で刮目し、柔和な笑顔が消えている。
信心深いクー子は両手を合わせて仏様に何かを祈り、留年界のカリスマ源五先輩はしたり顔でいつも台詞を口にするが何故か言い淀んでしまう。面白いことに、、、
「あー分かった分かった!てか、分かんねぇけどやってやるよトコトン!Take_Rさんよお!!」
純は意を決した。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




