第43ターン オレっち、プレステの電源を切断する
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
「真似ばっかすんなよぉ!まねし!!」
純の怒りは沸点を超えんばかり。そもそもからして沸点は低めなのだが、対戦相手のボロをまとった武道家・剛仁のプレイがあまりにも挑発的であることには違いない。
メーカーによるキャラ設定では純が操る空手家リョウは剛仁の弟弟子。よって使う技も同じ系統であり、その対戦はいわゆるミラーゲームとなる。
「くそう!何をやっても同じ技で反撃しやがる!」
怒れりが嘆きに変わりつつある純だが、格ゲービギナーを脱したばかりの彼は技のバリエーションが乏しい。
自然と↓↘→気流拳、→↓↗飛龍拳、↓↙←烈風脚の三大コマンド技が中心の組み立てとなるが、これにイチイチ剛気流拳、剛飛龍拳、剛烈風脚で対抗してくるのだからたまったものではない。
「あんにゃろ〜!まるで掟破りの逆サソリなのダ、マッチョドラゴン藤波か!」
と、クー子が己の趣味を披瀝しながら対戦相手のやり様を的確にカテゴライズする。
それにしても何よりイヤミなのは対戦相手が全ての技においてタイミングや精度が純よりも一枚も二枚も上手なのだ。
「あ〜鬱陶しい!ダルいンだよおぉぉ!!」
ついに堪忍袋の緒が切れた純はなんと驚くことにバチリとプレイステーションの電源を切ってしまった。
「純クン、ダメよ〜負けてるからって電源切断は。それじゃまるで敵前逃亡よ。」
万事良識派?の事務長ヨウヨウが純を優しく叱ると、ウッセイなもう!と不貞腐れてみせる純。何故かいつも年上の女性から構ってもらえる純にフクザツな気持ちを惹起させる親友クー子。
「フンッ、別に相手に迷惑かけている訳じゃないノダ。時短、時短、ジュデジーヌ・ジタン。敵前逃亡ならカネックだってやってるノダ。」
分かったよう分からないようなことを言ってヨウヨウにケンカ腰のクー子。そしてプレステの電源をパチリと押して、さあ切り替えて次、次、とJリーガーのようなことを言って純に次のネット対戦を勧める。
「おーし、次こそは、、」
と、純がコントローラーを握り直すと、え、またしてもボロをまとった武道家、剛仁が現れるではないか。これは何かの偶然か。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




