第39ターン 逆襲、煽りに対する煽り返し
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
煽られている、小バカにされている。事務長ヨウヨウの言に純とクー子、そして蘭子の三人は瞬く間に状況を理解した。
蘭子・ジュリーのオンライン対戦の相手、ゲンが突如としてカクカクカクと屈伸をし始めたのは、お前の技なぞ受けるものかヘタクソとの罵声をボディ・ランゲージで表したものだ。
「キィィ!悔しい!なんて性格してるの対戦相手は?!表出なさいよ!!」
激昂して逆上した蘭子にクー子がアハハ、性格破綻者がよく言ったものナノダと愉しげに笑う。すると源五先輩もフィジカルトレーニングの手を止めて、この騒動に参戦する。
「ムムッ、何だか面白いことになってますねぇ〜アラッ、対戦相手のプレイヤーネームは、、」
「う〜んと、オマエヘタスギ、って書いてあるぜ。お前、下手すぎ、か。」
コイツはいいや!と大爆笑の純とクー子。ついヨウヨウも我慢出来ずに吹き出してしまう。そんな状況に怒りのパラメーターが振り切れたのか、蘭子が驚きの行動に。
「ありゃ?何なのだ??守銭奴のキャラもカクカクし始めたノダ!」
クー子が指さすモニターの中では画面端でカクカクと屈伸をひたすら繰り返す戦士達。
摩訶不思議な光景が純たちの前に出現し、事務室は爆笑の渦に包まれる。
「あー、これもあるあるなんだけど、煽りに対する煽り返しね。で、制限時間が終わるまで、、」
意を決したのか、ヨウヨウの予測どおり蘭子ら二人のプレイヤーはひたすら屈伸運動を繰り返す。十字キーをひたすら上下させる。
「アハハ、まるで何かの宗教ナノダ〜」
クー子が苦笑気味に皮肉ったと同時についに時間切れかと思いきや、その直前になんとゲンが弾撃ち、気功拳を放つ。これがスクワット中のジュリーに見事にヒット、そしてタイムアップ。
姑息にもゲンが一本先取し、対戦相手を愚弄し切るというオンライン対戦の大命題?を達成したのであった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で高校二年生の3年目を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




