第38ターン オレっち未知との遭遇、これが煽りだ!
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
対戦。ゲームの対戦と言えばゲーセンでの筐体を挟んでの対面型、勉強部屋で友達と横に並んでのファミコン対戦の横並び型。
そして仲間らが集まるDSワイヤレスでのワイワイ型対戦。これらがこれまでの対戦のフォーマットだった。
しかしインターネット対戦は違う。傍らに対戦相手はいない。相手は遥かウェブの向こう側にいるのだ。
格好良く言えば実存主義者の純とクー子には目に見えない回路を通じて対戦を行うこの型式に本能的な恐怖感を隠せなかった。
「オイッ、ヨウヨウ、、本当に画面の向こうに対戦相手がいるのかよ??」
「目に見えない相手と闘うのは何か、、怖いノダ。テレビの中に誰か入っているのかなぁ?」
純とクー子が写真撮影を恐れる未開人のようにリアクションする。これを鼻で嗤う花崎 蘭子。
「何を恐れているのだか。デジタルネイティブのアタクシには何の違和感もございませんわ、ア〜ハッハッハ!」
かかってこんかい!と岡八郎ばりに蘭子が吠えると折良く対戦が始まった。99秒のバトルランデヴーだ。相手はアメリカンな空手家ゲン、不足はない。
蘭子・ジュリーが↓↗→◯ボタンで足の甲から気のようなものを放つ、太極刃から仕掛ける、連発する。いわゆる弾撃ちだ。
これを垂直ジャンプで軽くあしらうゲン。そして突如としてカクカクカクと屈伸運動を始める。異様なムーブだ。
「お、オイッ、ヨウヨウ!相手がおかしくなったンじやあねぇか?ヘンテコな動きだぜ!」
「やっぱ、対戦相手は人間じゃないのだ、CPU が故障したノダ!」
純とクー子が口々に喚き出す。が、悪態のマイスター蘭子自体は黙り込み直感的に状況を理解し始めている。まさか、、
「違うのよ、純クン、クー子ちゃん。これは、、、煽りよ!対戦相手はこちらを小バカにしているの!!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で高校二年生の3年目を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




