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第35ターン 驚愕!格ゲーマー養成ギブス!

格ゲーの始祖、日乃本 たける。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!

 あんなこといいな、出来たらいいな♪ケーシー花崎があの国民的テレビ漫画の主題歌を歌いながら手提げから出したものは黒いゴム製の、どこかしらエロティックな小道具。


「日乃本クン、指をこれに入れてミソ。」


 ケーシーに言われる通りに純がその5本指を5つの穴に差し込むとゴムの力が加わり、力いっぱい指を伸ばさないと手を開くことが出来ない。


「オオッ、これは、、ほら何とか強制ギブスみたいなものか?」


 純の問にケーシーはザッツ・ライ、と得意げな表情になる。


「手を開いたり閉じたりすれば指の力が自ずと付いくる。まずはこれで以て鍛錬しなさい。」


 ケーシーはそう言うとハイ、チミ達にもと言ってクー子と源五先輩に格ゲーマー養成ギブスを手渡す。万事積極的な下町の太陽は早速ギブスを指にはめ、シャキーンと吠えてポーズを決める。


 一方の源五先輩はどこかしら心配そうな表情でギブスを手に着けると初対面のケーシーに遠慮がちに問いかける。


「あのぉ、このギブス、ずっと着けておく必要があるのですかあ?」


「まっ、出来るだけ着けとくほうがいいね。その分だけ鍛えたられるわけだから。」


 ケーシーの返答に少しホッとした様子の源五先輩。時々外してもいいんだ。


「いやあ、こんな物を着けてたら、大事なルーティーンに差し障りがあるしなあ!右手はボクの親友さ、ウフフ。」


「なんか知らないけど、先輩はキモいのダ〜」


 呆れたような声を上げるクー子。流石は耳年増の現役JK。どうやら源五先輩の心配ごとを察知したようだ。事務長ヨウヨウは少し赤い顔をして手のひらで顔をあおぐ。


「何言ってんだ、先輩。格ゲーマーの友達はコントローラーだぜ。夢サン*がオレっち達に教えてくれたんだよ。」


[註]夢サン...夢原省吾、第一部に登場したレジェンド格ゲーマー。純たちの師匠。


 一人要領を得ない純の一言に、微笑ましくも少し切ない空気が流れた。


つづく






人物紹介

・日乃本 純 ひのもと じゅん

 本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。


・クー子 くーこ

 純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。


・比留多 恭介 ひるた きょうすけ

元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。


・日乃本 尊 ひのもと たける

 純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。


・花崎 蘭子 はなさき らんこ

 高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さはやまいのレベル。


・源五先輩 げんご せんぱい

 純のクラスメートの留年生で高校二年生の3年目を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。


・ヨウヨウ ようよう

医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。


・花崎 誇 はなさき ほこる

 格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。


・デコ、ミッチ

 クー子の友達で純のクラスメート。

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