第21ターン プレイキャラ選び、彼女らは自分に向き合った
格ゲーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
5人組のチームはとりあえず出来上がった。が、二人の女子達のプレイキャラが決まっていない。
じゃあ、アタクシから選ばせてもらいますわとコントローラーをサッと握ると花崎 蘭子がプレイキャラを品定めする。
格ゲー歴は無いに等しい彼女だが操作が板に付いている。万事、覚えが早く器用な所が傲岸クイーンのバックボーンなのだろう。
あ、これにしようかしらと早速選んだのはピンク色の髪をしたスーパーモデル風の美人キャラ。どうも柔道家との設定だが、蘭子は華やかな自分に相応しいのはこれだと言わんばかりだ。
その様子を注意深く見ていた事務長のヨウヨウが蘭子に別のキャラを勧めた。
「お嬢様にはこちらのキャラの方が良いかも知れませんよ。」
ジュリー。テコンドーの達人で、いかにも素行の悪そうな、黒と紫をまとった女性ファイター。蘭子とは正反対なキャラだ。
「ハァ?どうしてセレブリティのアタクシがこんな蓮っぱのレディースでプレイしなくてはなりませんの?!」
半ギレする蘭子にヨウヨウはまあ騙されたらと思ってと笑って窘める。すると意外な人物がこれを後押しする。
「ランラン、このキャラ案外といいかもしれねえぜ。」
純が何を思ったか、ボソッと呟くと蘭子が馬鹿ゲーマーがそう言うならと珍しくこれを同意した。そしてチラッとクー子に視線を送る。思春期の女性心理は複雑だ。
そんな蘭子の対抗意識を知ってか知らずか、これを無視するかのようにクー子が呟いた。
「女子プロレスラー、セイント・リカはアタイの生き写し。情熱と負けん気で闘う、あんなキャラでプレイしたいノダ。」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病やまいのレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で高校二年生の3年目を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験のある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




