第2ターン オレっち、JKに罵られる
格ゲーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説。
「だいだい、バトサン*は覚えることが多いすぎるンだよぉ〜」
[註]本作中の格闘ゲーム、ロードバトラー3の略称
純の悲鳴にも似た叫びだ。たしかに、それは一理ある。PS3の発売に合わせてリリースされたバトサンの新機軸は何よりオンライン対戦。そして高度化された攻守の技だ。
その一つには「パリィ」という技術。相手の技を受け流すという防御法で、実際の格闘技にも存在する技術だ。
次に「クリティカル」。ゲーマー達は「クリティカ」と約することがままある攻撃技だ。打撃における会心の一撃、そう解していい。
これらの新技を出すには相手の攻撃を読んだり、コントローラーのボタンを二つ同時に押したりと、要するにゲーム中にやる事さらに増えてしまっているのだ。
初心者を漸く抜け出したかに思われた純に新たに学ぶべき技術が増えてしまった。またスタートラインに立った気分だ。
「これだから格ゲーはガラパゴス化するンですよ!マッタク運営は何考えてんだか。」
柄にもなく批評家気取りの純。そこに誰かがピシャリと冷水をぶっかけた。
「何情けないこと言っておりますの?バカゲーマー!」
誰、あの娘?ザワつく男子らクラスメート。するとクー子の顔つきがみるみる変わっていく。クー子、激情態だ。
「あんにゃろう〜!!」
クー子が敵意丸出しで睨みつけるその先には、明るい栗色の肩まであるロングヘア。いかにも上等そうなスカイブルーのブレザーに赤チェックのリボン。
他校、どうやら私学の制服を身にまとった少しキツそうな美少女JKが純の前に立ちはだかる。
そう、あの麗しき人格破綻者、花崎 蘭子だ。
「もう格ゲーに穴を割ったのでございますの!?ア〜ハッハッハ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。