第153ターン 語りはじめた元マイルドヤンキー
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
勝った、柚葉のゲイルが勝った。"胆力の門"の番人、柚葉が「先輩」と呼ぶマエストロ、マジくんを倒したのだ。
「柚葉、ようやった!負けたわ。」
少し戯けた顔つきで後輩を讃えるゲーセンヤンキー。もちろん、この対戦は師が弟子に胸を貸す乱取り稽古のようなもの。ガチ、では無い。
「それにしても途中でえろぉ熱ぅなったな、何でじゃ?」
マジくんが怪訝そうに柚葉に訊くと、これに純やクー子も乗っかって来る。疑問点が多すぎるのだ。
「オイッ、ゆずりー!おめえ、何でそんなに比留多に拘んだよ?一応はナハシ聞いたけどよ、そりゃおめえさんの思い込みじやあねえか?」
「純、ちょい待ち!その前にサ、先ずマジくん先輩との関係から教えてもらうのだ。ヘイ、マジくん。アンタ、柚葉の何なのさ♪」
と、クー子がマジくんに懐メロ風にキメて見せれば純はすかさずコーラスを被せてくる。港のヨーコ、ヨコチンぶらぶら〜♪
「ブハハ!わりゃ、おもろいなぁ!ヨコチンか何か知らんけんど、柚葉とは清水のゲーセンでな、格ゲー教えとったんじゃ。」
そうマジくんは切り出すと柚葉に一瞥をくれて、言うてもええか?と確認を求める。コクリと肯く柚葉、そのしおらしい態度は元ヤンとは思い難く、ナチュラル系が本当の姿かも、と思わせる。
「柚葉は体調悪うしたオヤッサンの手伝いをな、家業の手伝いしててな、そんで清水辺りのゲーセンで憂さ晴らししてたんや。そこでたまたまワシと対戦してな、で、何回か対戦するうちにワシに弟子入りするて言い出して、」
未だ50円で出来る筐体もあってな、、、マジくんが語る柚葉の静岡時代の話、そして突然の柚葉との別れ。
「去年の夏頃やったかな、もう1年半程前か。急におまえはゲーセン来んようになったな。どないしたんじゃ柚葉?」
マジくんがそう投げかけると柚葉は静岡を離れてからの暮しと盛岡に行き着いた経過をポツリ、ポツリと語り出した。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




