第150ターン 砂漠の貴公子アシッドの攻勢
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
地下迷宮第二の関所は"胆力の門"、門番はゲーセンヤンキー風のプレイヤーマジくん。このマジくんを先輩と呼ぶReGのナチュラル・不思議系の佐久間 柚葉。二人は一体どういう関係なのか。
とまれ、二人の対戦は始まろうとしている。柚葉のプレイキャラは大会最終戦でも物議を醸したあの"待ちゲイル"だ。
純や万吉少年、クー子と蘭子が見守る中、師弟による対戦というべきか特訓というべきか、乱取り稽古が開始された。レディー・ファイ!!
柚葉・ゲイルは飛び道具、ソウルビームを連発してマジくん・アシッドを牽制する。その手堅さは定石どおりだが、アシッドは軽快に飛躍して空手でいう三角跳び、風のような軽やかさで移動する。
「オイッ、ゆず!積極的に行け、そのアラビアンナイトは簡単に捕まらないぜ!」
大会ではアングリーバットが操るアシッドの動きを目の当たりにした純だが、そのスピードと意外性のある動きには舌を巻いた。そんなキャラをプロ級のプレイヤーが使うのだ、ちよっとやそっとでは勝てない相手だろう。
柚葉・ゲイルは距離を取って牽制を続けるがガードやパリィで対処しながら攻撃距離まで詰めてくるマジくん・アシッド。
そしてアシッドが大胆に回転技で突っ込んで来るとこれをなんとかガードで堪える柚葉・ゲイル。
「柚葉、前に出んかったら勝ち筋は見えて来ンけん。カウンター殺法は何処までい行っても相手に依存する戦法じゃ!」
マジくん・アシッドが柚葉・ゲイルに中小のキック、パンチで攻め立て隙を穿つ。ゲイルがガードで固まるとゲイルの上半身を両足で挟んで地面に投げつける。所謂ジャンケンで柚葉を完全に凌駕するマジくん。
「なんや、先輩の手の中で踊っとるみたいな展開やな、、」
一方的な展開に言葉が繋げない万吉。柚葉は大会のファイナリストで格ゲーU20屈指の実力者。その柚葉がまるで相手にならない。
「パイセンはケタ違いに強い、、攻撃を見透かされてジャンケンに一勝も出来ない。スパルタ式の稽古なのダ!」
クー子が絶句するも、マジくん先輩による柚葉への可愛がりはなおも続く。
「柚葉、守りに執着して固まってたら風に呑まれるだけじゃ。腹の肝を大きく持ってリスクを冒すんじゃ!」
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




