第146ターン makoの疑念、真冬の陰謀論
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
格ゲーU20日本代表候補の面々、すなわち熱血格ゲーマー純や格ゲースパイスガールズのアン・コールズら七人のフレッシュゲーマー達は二手に別れて都心の地下迷宮に潜り込んだ。
目的はちょっとしたトレーニングとされているがおそらくは候補生らの実力を試して査定し、序列を作るところにあるのだろう。
若き代表候補らはあくまでも"候補"であって未だ正式に日本代表Jrに選ばれた訳ではない。何かと謎の多い今回のイベントには何か他に目的があるのかも知れない。
純が属する格ゲーBAND、チーム夢原はかのレジェンドゲーマー夢原 省吾の弟子たちという触れ込みで、U20代表候補を選考する競技会では注目の的だった。が、目立ったのは純たちばかりではない。
純たちを破った格ゲー常任理事国は著名なゲーマーであるビックバットが総監督として君臨し、その弟のアングリーバットや芸能界デビューを目論む格ゲースパイスガールズを擁するある種のスター軍団だ。
また、東北は盛岡のフリースクールからの刺客、柚葉とひろきクンはドロップアウトした子ども達が格ゲーを通じて立ち直るある意味、今風のキャラクターだ。チーム夢原の女コーチ、makoの思考はある方向に収斂されつつあるが、行き先案内は未だハッキリとは見えてはいない。
今、makoは真冬の元帥記念公園で待っている。主催側が用意したパイプ椅子に座って赤外線ヒーターのオレンジ色した熱源をじっと見つめながら純たちの帰りを待っている。遠くからジングルベルのカラオケが聞こえてくる。
小一時間もすれば戻ってきますよと主催スタッフから説明があり、さすがに高校生をそれ以上は拘束することも無かろうと安心してはいるが、どこかしら純たち、愛弟子たちが遠くに行って二度と戻ってこないような気もする。
そう、考えてみれば純だ。何よりも純だ。一回戦さえ勝ち抜け無かったチームにも関わらずJr代表候補として選ばれた幸運。それは純があの格ゲーマーの始祖、日乃本 尊の息子だからか?それとも、、
先輩、今日一日の出来事、流れってどこか胸騒ぎのする。何か引っかかるんやわ、そう思わへん?makoがチーム夢原のヘッドコーチ、む〜どに率直なところを訴えると、む〜どからは気のない返事が返ってくるだけだった。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




