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第127ターン　待ちゲイル！オレっちの叫びとアンの決断

格ゲーマーの始祖、日乃本尊《たける》。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾！

　待ちゲイル。あの悪名高きカウンター殺法が日本代表Ｊｒ選考会で披露され、来賓席の理(・)由(・)を(・)知(・)っ(・)た(・)者からは驚きの声が上がる。

　佐久間さんが最後に見せた忌むべき戦術はチーム夢原にとっても因縁浅からぬ、否、チーム夢原の成立に根深く関わっている重大事だった。

「夢さん（レジェンドゲーマー夢原省吾）がやさぐれていた時、待ちゲイルを使ってゲーセンで狩りまくっていたンだっけ。」　

「そう、それを窘《たしな》めるかのように夢さんに圧勝して目を覚まさせたのがオレっちの親父。」

「その日乃本尊《たける》氏を探す旅に出る為に純坊はチーム夢原のエースになってプロゲーマーを目指すことになったんやね、、、」

　クー子、純、makoのそれぞれが待ちゲイルがもたらした人間模様に思いを馳せる。そして純の好敵手《マイメン》、比留多恭介が純との激闘を通じて待ちゲイルを乗り越えたことも忘れてはいけない。

　「クッ、、まさか、この大会で、お歴々の前で待ちゲイルをやるなんて、、正気の沙汰とは思えない！」

　格ゲー常任理事国の総監督にして怜悧なビジネスマンであるビッグバットが悔しさに臍《ほぞ》を噛む。彼とてもまさか待ちゲイル程の勝負に徹するリアリズムを追求出来てはいなかった。

「バーカ、佐久間はなんでアクマって呼ばれているか、分かってんの？福島のゲーセンで待ちゲイル使って狩りまくってたんだよ、無慈悲に、冷酷に。」

　病名は中学２年生、いまや国民病となった流行り病に冒されたひろき君が自慢げに佐久間さんの過去をさらりと一《ひと》くさり。その横で「先生」もニッコリして佐久間さんをじっと見つめている。

　アクマをスカウトしたのは「先生」なんだぜ、凄いだろ？団体戦の優勝を確信したのか、饒舌になるドロップアウト中学生、ひろき。一方で画面端から微動だにしない佐久間・ゲイル。

「あ、アタシの想像力では相手は確実なカウンター狙いなのね、アタシだって待ちゲイルくらいもちろん知ってるワ。でもね、そんな姑息な手を使う人って底が知れてると思うの。だって格ゲーは訓練されて洗練された技を」

「煩《うる》せえ奴ら！アンぱんマン、おめえ余計なこと言ってないで、攻めんだよ、それしかねえ！」

　カウンターを恐れて意味のない長広舌を垂れ流すややパニック状態のアンを一喝する熱血格ゲーマー純。アン・コールズに残された時間はあとわずかだ。

つづく

人物紹介

・日乃本純　ひのもと　じゅん

　本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。

・クー子　くーこ

　純の親友《マブダチ》。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。

・花崎蘭子　はなさき　らんこ

　高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病《やまい》のレベル。

・源五先輩　げんご　せんぱい

　純のクラスメートの留年生で３年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。

・比留多恭介　ひるた　きょうすけ

元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。

・日乃本尊　ひのもと　たける

　純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。

・ヨウヨウ　ようよう

医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。

・花崎誇　はなさき　ほこる

　格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。

・デコ、ミッチ

　クー子の友達で純のクラスメート。