第124ターン アン、興行相撲で墓穴を掘る?
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
透明のカリスマ、佐久間さんと乙女チックゲーマー、赤毛のゴスロリことアン・コールズによる団体戦の最終決戦。厳かに暇でしょ?先生が両者をコールすると沸き立つように会場から声援が広がる。
「まずは様子を見ていけ、相手の力量を測るんだ!」
アンはビッグバットの指示どおり慎重な入りをすると佐久間・ゲイルが飛び道具のソウルビームで弾打ち連発、空間支配を企てる。
「アタシには分かるの、あの娘がとても臆病でキャリーと距離をとって闘いたいのね、でもムダよ。アタシは弾と弾のすき間を見つけれるの、その隙に差し込むごとも出来るワ!」
アンが十八番の長台詞をまくし立てながらキャリーが回転式のドロップキック、スパイアローで弾を除けながらゲイルとの間合いを詰める。
「アンちゃんは流石やね。キャリーの運用をよう心得てるわ、画面端の争奪戦になるわ、この対戦は。」
我らが純の選任コーチ、makoが思わずアンの実力に唸り声を上げるとこれに深く肯くヘッドコーチのむ〜ど。彼はこの時点で名勝負の誕生を予感している。
さらにドライブダッシュで距離を詰めるキャリー。ゲイルは下がり画面端が間近に迫る。
「ほうらアナタはもう画面端よ、少し老けたパンクお兄さん。そんなカリフラワーみたいな髪型、今どき誰もしてないわよ!」
攻勢を強めるアン・キャリーに後手にまわる佐久間・ゲイル。満足げなビッグバットがアンにらしい指示を出す。
「アン!ご来賓の皆様に派手なやつを見てもらえ!」
その声を待たずしてか、格ゲーマーのガールズユニットとしてデビューに余念のないアンは見栄えのする技を選択する、新たに実装された本作の目玉とも言うべきクリティカルヒット、略称クリティカだ。
あらやだ、気の利く小娘ね。誰かが小声で囁くが、そのアンのショーマンシップが仇となる。
「オイッ、クー子!ありゃ何だ?アンのヤツ仕返しされてやがるぜ!」
「純、あれなのダ、おヌシがアンにやられたパープリンだよ!!」
「なんだとぉ!オレっちのどこがパープリンなんだお!おめえだって頗る数字に弱いじやあねえか!」
「クー子ちゃん、純くん!パープリンじゃない、パーフェクトパリィ、パーパリィだよ〜」
と、クー子と純のパープリン論争の仲裁に入るむ〜ど。佐久間さんはアンちゃんの戦法を予測していたのさ。ショーマンが許される程は甘くない対戦だよ、これは。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




