第117ターン フリースクールの癒し系先生
格ゲーマーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
ReG、リスタートゲーミングは盛岡市にあるフリースクールの子ども達の格ゲーチーム。年齢構成はどうやら中学生も混じっているように見受けられる。
チームを率いるミステリアスな女性は「先生」と呼ばれるおよそ40歳前後の女性。穏やかな表情とナチュラル系のファッションがあれ系か、と明瞭ではないが何となく合点がいくタイプ。
そういえばプレイヤーと思しき子ども達もお揃いとまではいかないものの、皆が似たテイストのニットのパーカーを着ていてユニフォームのように統一感がある。
「まぁ、いやらしい!アタクシはあの手の毒にも薬にもならないファッションに虫酸が走りますわぁ!」
とどのつまり地道な女子の駆け込み寺みたいなものざましょ?見え透いていますわ、ア〜ハッハッハ!と、過剰に敵愾心を露わにするスクールカーストの捕食者、花崎 蘭子。女性はもっと華やかでなければならないと、持論を展開する。
この暴言に黙っていられない二人のJKがいる。そう、我らが下町の太陽クー子と赤毛のゴスロリことアン・コールズだ。
「何をトンチキなこといってるノダ!服なんて好きなものを着ればいいノダ。え、女性はもっと華やかに?今くるよ師匠じゃあるまいし、どやさ!」
とクー子が小気味よい口撃を加えると言葉数なら負けてない、妄想乙女こと赤毛のゴスロリ、アン・コールズが例の独特な言い回しで蘭子を揶揄する。
「アタシの想像力では、あなたの世界観はとても単純で、容姿の優れた見栄えのする子だけが人気者になればいいと思っているのね。でもね、きっと世界はもっと複雑なのよ、地味な子に癒し系とか言われる役回りもあるのが人生なのよ!」
と、これはこれで辛辣なことを言う。
「あーうるせぇ!何を癒し系とか、訳の分からないこと言ってんだよ、オレっちは、いやらしい系だぜッ!」
と、三人のやり取りに苦情を申し立てる純。ユーモアを忘れない彼の言うとおり、ジッサイ三人の女性格ゲーマー達のつばぜり合いは不毛というべき種のものだろう。
とりわけクー子以外の二人は純を前にして過剰なところがある。どこかしらアッピール的な感がしないでもない。
とまれ、格ゲー日本代表Jrの選考会を兼ねた団体戦はいよいよ大詰めを迎えた。決勝戦に勝利するのは格ゲー常任理事国か、ReGか。固唾をのんで純が見守るなか、ラスト・バトルの火ぶたが切って落とされた。
つづく
【緊急告知】
来週は本作のスピンオフ作品「陰キャとヤンキー、50円の恋」を連載します。
純の良きライバルでチーム夢原の本格派、比留多 恭介の一夏の物語です。乞うご期待!
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の親友。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。本作では他ゲームからのゲストキャラ、舞妓を使う。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病のレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で3年目の高校二年生を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・比留多 恭介 ひるた きょうすけ
元蘭子の親衛隊長。ニヒリストを気取り文学をこよなく愛する格ゲーマー。一人称は小生。変な髪型の米兵、ゲイルの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純とその姉の音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・ヨウヨウ ようよう
医療法人花崎会の新事務長。丸眼鏡の美人。格闘ゲーム、ザ・ナックルのプレイ経験がある、あざといアラサー。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンな空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




