第10ターン 源五先輩、愛のめざめ〜
格ゲーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して歩み出す。涙と感動の格ゲー青春小説第二弾!
夢原ブートキャンプ、それはレジェンド格ゲーマー夢原 省吾がその若き弟子達を鍛える為に開設した格ゲーの練習場。実態は医療法人花崎会の事務室の一角だ。
「あらら、債務者の娘。とんだドブネズミがアタクシのお家に潜り込んでいるじやぁありませんかあ!汚らわしいッ!」
プチブルと痛い所を突かれた花崎 蘭子が反射的にクー子を罵倒する。反撃のレスポンスは神がかり的な速度だ。
「オイッ、ランラン!グタグタ言ってんじやあねえ!今は男同士の闘いの真っ最中だ、黙ってろ!」
蘭子の金切り声に純が手を止めて反応すると、蘭子の十八番・倍返しが降り注ぐ。
「はあ!この部屋はアタクシのものざましょ!?アタクシが叫ぼうが喚こうが勝手なのよ!!」
「じゃあ、証拠見せるノダ!登記を見せろ、所有権を明らかにするノダ!」
と、クー子が世慣れた一面を見せる。大方、テレビかVシネマの闇金もので聞いた台詞の類だろう。下町の太陽のアンテナは全方角に向いているのだ。
「所有権だかアパッチけんだか知りませんが、いいこと、ここは、アタクシの家なのですのよ、ア〜ハッハッハ!!お黙りなさい、多重債務者!」
なんとも高2のJK同士とは思えない罵詈雑言の雨あられ。ラップバトルの何某も真っ青のbeef 合戦だ。が、蘭子の登場があの男の心に火をつけた。ライド・オン・タイムだ。
「愛のめざめ〜!」
慣れない格闘ゲームと純のかわいがりに辟易していた源五先輩がにわかに活気づき、激しくコントローラーを乱打し始めた。どうやら蘭子にいいところを見せたいようだ。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称はオレっち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・日乃本 尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・花崎 蘭子 はなさき らんこ
高慢ちきな美少女JK。純の元相棒、花崎 誇の妹。前作では純らに敵対していた。口の悪さは病やまいのレベル。
・源五先輩 げんご せんぱい
純のクラスメートの留年生で高校二年生の3年目を満喫中。どうやら女性に目がないようだ。プレイキャラは新世代の主役、ローク。
・花崎 誇 はなさき ほこる
格ゲーにおける純の元相棒。あだ名はオタク族。只今、医科大学を目指して受験勉強中。アメリカンの空手家、ゲンの遣い手。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。




