第1ターン オレっちは純!
格ゲーの始祖、日乃本 尊。その息子・純が格闘ゲームのプロを目指して立ち上がる。涙と感動の格ゲー小説。
「・・・それで伝説の聖剣、エクスカリバーが突然空から舞い降りてくるの!」
太刀光秀子こと、デコの熱弁が止まらない。どうやら流行りのライトノベルのハナシをしているようだ。
放課後のあんみつタイム。駅前のカジュアルなデパートでの顧問不在の部活動。最近はデコの文学論?が姦しい。
「あれはメタファーだね、ゼッタイ。」
この手の若者向け小説のモチーフにはしばしば西洋の伝承が引用される。文学少女の力説にクー子とミッチはチンプンカンプンだ。
そもそも文字と数字が大嫌いなクー子。あたかも文明を拒絶した未開人、いわば下町のミッシングリンク。メタファー?さっぱり判らんノダ!
そんな仲間達との他愛ない晩秋の日々。人生最大のホリデー、高校二年生を堪能しているクー子。
しかしクー子が気掛かりなのは我らが熱血格ゲーマー・日乃本 純のゲーム熱が一向に上がってこないことだ。すっかりダラケきっている。
「純、シッカリするのら〜」
先日、堪らずクー子が純を嗜めると、
「ウッセイぞ、クー子!」
と純がクー子に取り合わない。
神獣倶楽部との決戦で明らかとなった純の出生の真実。そして目指すと宣言したプロゲーマーの道。それは茨の道、父への道だ。
が、横浜の関帝廟決戦から一ヶ月が過ぎたにも関わらず、純の練習のピッチが中々上がってこない。
「だいたい、新しいロードバトラーがムズ過ぎるンだよ!やる事が多くて面倒クサいのじやあ〜」
どうやら純はバトツーの後継作、バトサンの仕様が不満なようだ。
年末商戦に向け新発売となったプレイステーションスリー、PS3と同時発売となった格闘ゲームの代表作、ロードバトラー3。
通称バトサンにはガード技や高度な攻撃法が新たに実装され、格ゲーファンの間では話題沸騰となっている。が、闘う単細胞、純には中々ハードル高いようだ。
つづく
人物紹介
・日乃本 純 ひのもと じゅん
本作の主人公。高校二年生。事故で障がいを負い格ゲーでリハビリする中、自分が格ゲーのサラブレッドと知りプロを目指すことに。空手家リョウの遣い手。一人称は俺っち。
・クー子 くーこ
純の真ダチ。児童クラブ時代からの付き合い。ハイカラな東京言葉を使うが、実は関西出身。女子プロレスラー、セイント・リカの遣い手。
・日乃本尊 ひのもと たける
純と姉、音々の父。格ゲー黎明期の知る人ぞ知る英雄。
・デコ、ミッチ
クー子の友達で純のクラスメート。