63話「救出に向けて4」
「真面目に他人に暴力をお願いするなんて、あんたイカれてるな」
「そうですね。俺自身もかなり変なお願いをしていることは自覚していますよ。ただ、友達がやられている時に寝てたっていうのがやるせないんです」
もし火事の時に目が覚めていたら、少しはエリスの説得をロイスと協力して出来たかもしれない。
もし目が覚めていたら、ロイスと研究員との交戦にも参加できていたかもしれない。
どちらも仮定の話ではあるが、目が覚めているだけで色々な手助けができていたことだけは事実である。
ロイスは大きく深呼吸して、下半身に力を込める。
「はぁ……じゃあ、思いっきり、やるからなっ!」
彼の深呼吸に合わせて協力者の男性は拳を振り上げ、勢いよく振り下ろした。
男性の拳はロイスの頬に直撃すると、痺れるような衝撃と共に殴られた衝撃を耐えることが出来なかった体が後ろへ二回転しながら飛ばされる。顔面から芝生に不時着をすると、痛みを訴える右頬に手を当て立ち上がる。口の中には血の味が広がり、口内が切れていることを物語っていた。
構えていたとはいえ予想以上の衝撃に目を丸くしながら男性の方を見る。
「なんだよ。要望通りのことをしただろ」
点になった視線をロイスから浴び、何か要望とは違うことをしてしまったのかと心配した表情で首を傾げる。
「いえ、完璧です。どんどんいきましょう」
触れても痺れて感覚がなくなっている右頬をさすりながら、キリッとした表情へと切り替え、再び男性の拳を受ける体勢になる。
二発目は横腹に、三発目は左頬に、四発目は右腕に、五発目は下腹に、六発目は右足に、七発目は背中に――――
その後数十発ほど受け、全身に打撲痕がくっきりと現れるようになってようやく、ロイスの要求は達成された。
構えていたとはいえど正面からノーガードでのぶん殴りは、威力を殺すような動作をしていない分、衝撃は凄まじかった。




